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出立の決断(前編)

 四十人くらいを一度に結界で被うにも滋の全力では一教室の半分を賄うのがせいぜいであった。それでも詰めれば不可能ではないとの桐生の押しで、予定通り休憩後にはまとめて全員で出立と決める。


「男だけならねぇ。女の子たちもいるんだから、そういうことも考えたら、ちょっと厳しいわよ」と弥生は苦言を口にする。


「こういう一大事のときに男だとか女だとか考えていても仕方ないだろうに。男女が密着すると気分でも悪くなるってか? それは意識しすぎだろう。それに、配置を考えて、男子は男子で、女子は女子で固まれば問題ないだろ?」


「要するに、どうしても一度で行きたいということよね。あんた、冷静に判断するときは冷静に判断するけど、基本的にどこか面倒臭がりよね。デリカシーもないし」


 その間、島田は一時間ほど後にここを出ることを他の先生方、そして集めた四十人近くの生徒に説明を施す。上手く聞き入れて納得して一致団結できるだろうとの彼女の思惑とは裏腹に、生徒の中、特に羽田たち勝手で勝気な男子の数人は、どういう根拠でそこまで己の力量を過信できるのかしらないが、自分たちの手で、足で、ゴールへと辿り着いてみせると言い張ってまとまらない。安全と確実性を考えてこの道のプロであるUWの面々の指示に従うことが最良だと説いても、どうやら突然現れた超人的な彼らの存在に嫉妬して、気に入らない信用ならないと撥ね退ける。外のロボットを使用する話でも、深沢が指名されたことが納得できないらしい。中でも羽田が一番不服そうである。当の深沢は何食わぬ顔をしているから羽田はますます苛々する。例えば羽田が、乗りたいと願って頼めば、譲れるくらいの度量は深沢にもある。醜い嫉妬を振り回し、文句のみで操縦席の座を奪うつもりなら、まず譲る気はない。極端を言えば、叶わずに癇癪を起こして勝手に自分たちで行動し、勝手に塔へと向って、それでモンスターにやられようが飢え死にしようが、自業自得と彼は考える。


 島田はといえば、それでも羽田たちの身勝手で甘い考えを正そうと、ずっと叱り続ける。勿論、聞き入れられない。むしろ火に油を注いで、若くて血気が盛んで負けず嫌いな頑固者は、武器を携えショルダーバッグに食料を詰め込むと、同じ考えの男子生徒を四人引き連れて、


「訳のわからないこの世界で、訳のわからない連中の指示に従って何の意味がある? これがゲームなら俺たちでクリアしてやる! 人の手を借りてクリアなんてつまらないんだよ!」


 との豪気を吐いて、ついに体育館を出て行ってしまう。彼らの後に、さらに五人ほど、意を同じくして出て行こうとする者がある。その中に二人、女子の姿もある。女子だからと言うのは差別となるが、それでも女子が何を馬鹿な、と島田は怒る。これには池田も他の先生も止めに入る。とはいえ羽田と意を同じにするくらいだから彼女らに教師の助言を聞く耳はない。一切の忠告も撥ね退け、制止も振り払って、羽田たちを追いかけていく。


 少し離れたところで滋の結界の実力の程を試していた桐生、弥生、滋のUWの三人は、羽田の捨て台詞を耳にしたところで騒動に気がつく。振り向いたときには羽田たちが勝手に出て行く姿を目にする。三人とも素っ頓狂な顔をしながら、後続の五人も出て行ったところで島田に駆け寄った。


「あれ? 先生、彼らはどこに行こうと言うんです?」


 島田は思い詰めた顔をして、まともに桐生たちを見ることもできない。怒りを耐えているのか、それとも自分自身が情けないのか、小さく首を振って、


「ごめんなさい、まとめ切れなかった…」


「あらまあ、それはまた面倒な彼らだ」



続きます

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