校舎の外に現れたロボット(前編)
深沢の案内で保健室に到着、引き戸を開けると、さほど広くない室内に生徒が数人、教師が一人、研究所の宮下たちの姿がある。自分たちも入ると随分と窮屈になるので滋は敷居の上で用件を述べて、体育館へと向うように頼んだ。教頭先生は宮下たちの処置の甲斐あってか、もしくは荒療治を施したのか、先ほど一瞬だけ目を覚まして、また眠りについたそうである。一緒に運ぶべきか運ばないで置くべきかと生徒の一人が聞いてくる、滋は意見を宮下に求め、ベッドごと運んでしまえばよいと判断される。宮下たちの、教頭先生への尋問は一つも済んでいないらしい。滋がヴァイスによるこの世界からの脱出の可能性の話をすると、彼らはこちらにすぐに食いついてくる。犯人捜しよりも自身の脱出を優先させて、さっさと保健室を後にし、生徒たちよりも先に体育館へと向うのであった。これを追うようにキャスターの付いた教頭先生のベッドを押し運びながら教師や生徒たちも体育館へと向かった。それらを見届け、中に誰もいないことを確認したところで、滋たちも戻ろうとするが、誰もいないことが深沢の胸に一つ引っ掛かる。
「あれ、宗田君がいない」
と、姿が見えない同級生に気が付く。先を歩く女子を呼びとめてその居所を訊ねると、
「そういえばさっきトイレに行くって出て行った」と、いま思い出したように言われた。
「どのトイレかわかります?」
年下だろうと女子だろうと滋は敬語を使って聞く。
「ごめん、そこまでは…」
「そうですか。まあ、たぶん近くだと思うから、僕らだけで探しにいきます。皆さんはそのまま体育館へと先に向かってください」
女子たちを行かせて深沢へと振り返ると、彼は何事か考え込んでその視線にも気が付かない。声を掛けてようやく顔を上げる。眉間に皺をよせて難しそうな面をしている。気に病むものでもあるのかと問うと、
「宗田君、本当にトイレに行ったのかなって思って… さっきも一人だけはぐれるような行動をとっていたものだから、ちょっと引っ掛かるんですよね。先生は同級生を疑うなっていうけど、自分の勘が、何かこう、不穏なものを感じるんですよね」
「不穏? う~ん」
二人は一番近くのトイレの中を探すが、人の気配はない。
さて、そこで地震でも起きたのか急に校舎が激しく揺れ出す。しばらく続いて、収まったところで二人は顔を見合せた。大きな目をさらに広げて何が起きたか事態を飲み込めない滋とは対照的に、深沢は唇をきゅっと噛み締め、すぐに何事か気が付いて背筋を伸ばすと、そのまま玄関まで走って、靴も変えずに外へと出た。出て一歩、しかしそこで足は止まる。突飛な行動に訳もわからず後を追いかけてきた滋も同じように外に出てみると、目の前には白色の高さ十メートルを超す巨大な人型のロボットがいる。近くには戦闘態勢の桐生とヴァイスの姿もある。経緯はわからないが事態はすぐに理解できた。ロボットは敵である。そして、その大きさに堪らず顔を引き攣らせてしまう。形も大きければ攻撃のスケールも大きい。ミサイルまで飛び出し、大地で派手に爆発して爆風が砂埃を巻き上げる。桐生たちは無事なようだが、洒落にならない。ただ、それでも百戦錬磨の二人である。得物を抜いて動き回ると、その速さについていけないロボットは、攻撃の拍子にバランスを崩して仰向けに倒れてしまうのであった。
続きます




