滋と深沢、保健室へ
一つ作戦が決まると行動も早く、島田に頼んで生徒たち全員を体育館に集めてもらう。
「出られるかもしれない」
廊下で桐生たちの会話を聞き拾った生徒たちは、この希望を生徒間で伝聞して、大半は素直に体育館に移動してくれる。中には素直ではない生徒もいる。怯えて動けない、という生徒もいる。怯えている生徒には、島田が優しく声をかけて説得をする。羽田のような素直でない生徒には怒鳴りつけている。
まだ保健室にも生徒が残っていることを思い出す。宮下たちもそこにいるなら、桐生の指示で滋に呼びに行かせる。道順の知らない滋に、島田の指示で深沢が案内することになった。
保健室へと向う途中、深沢は隣を歩く、見るからに女の子の如き自分より背の低い滋を何度も見て、男子か女子か性別の判別が難しいその顔をとても奇特に思う。体つきにしても、普段、独自で鍛えている深沢と比べて華奢なもので、どう見ても戦闘には向いていない。羽田たちを助けたあの光景と併せると、世の中、見た目では判断できないと思い知らされる。
「あの、俺より歳上なんですよね?」
「はい、一応、二十歳です」
「何かスポーツをやっています?」
「いえ、あまり運動は… 得意じゃないです」
深沢は一つ相槌を打つ。
「でも、どうしてあんな不思議な力を出せるんですか? あの透明な壁みたいな…」
「僕も、正直に言うと何でできるかわからないんです。遺伝というか生まれながらの才能だって話みたいなんだけど、あまり詳しくなくて。でも、どうして?」
「いえ、ちょっと興味があって。自分にはない才能ですからね。ちなみに努力もなしに、ですか?」
「出せるというのは才能みたいだけど、一応、僕も訓練はしていて。ただ、まだまだ全然使えこなせていなくて。僕たちの力を羨ましいって言う人もいるけど、僕なんかは同じ業界では下手もいいところだから」
「なるほど、才能はあっても人にはそれぞれ悩みがあるということですか。それでもクラスのやんちゃで我の強い奴らなら羨ましがるだろうなぁ」
興味があると言いながら、自身は特別に羨ましいわけでもないように振る舞う深沢を見て、滋はその性格に自分とどこか似た匂いを感じ取る。
「深沢さん、でしたっけ? は、クラスの委員長か何かですか?」
「いえいえ、まさか。そんな柄じゃないですよ。そんな風に見えます?」
「うん、先生の信頼を得ているみたいだったから、てっきり」
「あれは偶然、先生と一緒に行動することになったからです。自分には先頭に立ったり、みんなをまとめたりする、そんな才能はないですよ。むしろ後ろのほうでひっそりと動いて、それとなく支援しているといった立ち位置のほうが俺はいいです」
自身が望む地位と、他人が見抜いた才能とでは案外に差がある。深沢もその典型と見える。超能力を羨ましがるというクラスの我の強い面々とこの深沢は、希望する自身の姿のベクトルは違っても、抱くもどかしさは同じ質である。
続きます




