桐生のプランとヴァイスの狙い
島田や深沢たちにUWの仕事の詳細を話しても理解されないことは桐生たちも承知している。一応秘密裏に動く自分たちの活動に支障があっても困るので、何のことを話しているのかと聞かれても、やはりその辺りは上手くはぐらかして要点だけを述べる。つまり、ヴァイス一人ならこの世界から出られなくもないという説明をして、自分たちの作戦の一端の理解を得る。島田も、ではそれはどういう方法なのだと問うが、桐生たちもそれは知らない。その問いをそっくりヴァイスに投げて寄こすと、
「まずは君らの次の行動を聞いてからだね」
桐生たちが考える方法は、ゴールとされている塔まで生徒たち全員を一度に護衛しながら大移動、もしくは数班に分けて、ピストン方式で順々に移動、「穴」を通ってこの世界からの脱出を図る、というものである。どちらにしてもそのためにその塔までの道のり、距離、道中の敵のレベル、罠の有無、本当に「穴」があるのかどうかの確認が必要で、先に桐生単独で塔へと向うことも提案される。島田たちもそれくらいは理解する。
「ヴァイスが言っている単独脱出の方法も単独で塔に向うことか?」
「まあ、それも一つだね」
「俺たちだけならそれでゲームクリアになるんだが、今回の一番の問題は一般人を大人数抱えているというところだな。先生の話だと生徒だけでこの世界に四百人近くいるって話じゃない。この数の護衛はさすがに難題だよ」
「理想としては、佐久間滋の結界がその四百人を一度に包めるくらいであればいいんだがね」
期待を込めて滋を見るも、本人は当惑しているので望みは薄い。
「うん、君らの作戦も良くわかった。だけど、俺は塔へは向わない。もう一つ別の方法を試してからかな」とヴァイスは続けて言う。
「別の方法って?」
「送電線かな」
「送電線?」
「うん、この学校って、別の世界に飛ばされたくせして電気が生きているだろう。何故だろうかと不思議に思っていてね。どういう方法で供給しているのか考えたんだ。それで一つ、送電線が小さな『穴』で君らが住む世界と繋がっているんじゃないかという仮定が生まれてね。もしそうだとしたら、その小さな『穴』を俺の能力でこじ開けて脱出できる可能性があるんだ」
「お前、それが本当なら、全員、その穴で脱出できるんじゃいのか?」
「それができれば理想だが、お前も知っていると思うけど、強引に広げた『穴』は不安定でね、すぐに閉まってしまう。四百人も通れるほど持つとも考えにくい」
「お前がこじ開け続ける、っていうのはどうだ?」
「無茶苦茶言ってくれるねぇ。どれだけ大変か。それに、敵側に知られて、途端に『穴』そのものを消去されたらどうするんだ? 電気もなくなって、冷蔵庫とか、動かなくなるぞ」
「でも、できないわけじゃないんだろ? まさか、自分一人だけ脱出して、あとは知らんぷりとか、そういうつもりじゃないよな?」
「失敬な奴だな。もしそうするつもりなら、すでにシレッと勝手に脱出しているさ。こうやって説明することもないよ」
「それなら見つかって電気が使えなくなることを覚悟で、その広げた『穴』からできる限り多くの生徒を脱出させたほうがいいんじゃないのか? 数が少なくなればなるほど俺たちには有利だ」
ヴァイスは何が嬉しいのか微笑しながら、
「確かに」と言う。
続きます




