表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロートル冒険者の俺が聖女の養育者でいいのかよ? ――のちに辺境の英雄と呼ばれる男の話――  作者: 月見里 嘉助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/17

第6話 黒猫がいた

レベルを上げるには依頼をこなすのが一番だ。

その中でも魔物を倒すのが一番効率がいい。

ということで、森に来ている。

前回失敗している薬草の採取、および、ゴブリン討伐だな。

森の浅いところでゴブリン・ソルジャーやゴブリン・アーチャーがいるのは危険だ。

若い奴らだと殺される可能性がある。

討伐しておいたほうが良いだろう。

まあ、俺も死にかけたがな。


で、俺たちだけだと危険だということで、Bランク冒険者と一緒だ。

そりゃ、いきなり聖女に死なれても困るよな。

で、顔見知りのおっさん、ドミニク・ビットマン。

俺より四歳年下の冒険者だ。

『清廉なる赤い薔薇』と一緒にという案もあったが、俺が却下した。

俺の貞操の危機……

さすがにそれはないか?

いやいや、ありそうな気がする……

俺はどノーマルだからな!

ちと、シャノンたちは可愛いと思うが、それとこれとは話が別だ。


ちなみにドミニクはなかなかのイケメンおじさんだ。

少し長めの髪に、丁寧に手入れされたアゴヒゲ、低く落ち着いた声と、優し気な笑み。

それなんで、アシュリーあたりは年齢を残念がっている。

現在でもアピールしまくっているのだが、更に歳を取って、渋みが増したら、もっといいらしい。

渋さって、なんだよ?

男が歳を取ったって、子供と変わりゃしねえだろうがよ。


「フェー、フェー」


イーナの成長が速え。

俺の名前を覚えたようだ。

少し意思疎通ができるような、できないような。

相変わらずおんぶしているが、排泄は教えてくれるようになったし、だいぶ楽になった。


それまでは排泄後に泣いて知らせるだけだったからな。

自分で気持ち悪くなるんだったら、最初から教えてくれりゃあいいのによ。

だが、大人が簡単だと思うことを、赤ん坊がすぐにできるわきゃねえんだ。

一つずつ、一つずつ、成長しているってこった。


で、イーナは、今、俺の頭を叩いている。

考えてないで、進めということだろうよ。

ずいぶん、偉くなったもんだな、おい。


「お嬢ちゃん、元気だねえ。誰も、この子が聖女とは思わないだろうなあ」


「おう、ドミニク。聖女がお淑やかじゃないといけねえってこたあねえだろうが」


「まあ、そうだがねえ……。物語に出てくる聖女のイメージと差がねえ……」


「現実ってのは、こんなもんさ。物語ってのは美化されているからな」


「そりゃ、そうだよねえ……。なんだか、寂しい気持ちになっちまうよねえ」


ドミニクは聖女に憧れがあったんだろうか?

俺としては、この子が元気に育ってくれればいいと思っている。

子供なんて元気が一番だ。

そもそも『聖女』ってのは何だ?

神様の声を聞ける人か?

高い回復魔法を使える人か?

なんで勇者と一緒に魔王を退治しなきゃならねえんだ?

まあ、わからねえことだらけだ。

なら、固定概念は必要ねえんじゃねえかと思うわけだ。

極論だがな。

それを盾に、いいように解釈しているだけだ。


「というわけで、元気にいくぞ、イーナ」


「おー!」


おうよ、イーナは元気だ。


「おい、ドミニク、行くぞ」


「おー、行きますよお……」


若干、元気のないドミニクと森へ入った。



「おらあー、久しぶりに薬草採取だよお」


「ドミニクも、たまには受けろよ。薬草が不足してるだろうが」


「だがなあー……。俺が受注すると、フェルドさんの仕事がなくなるだろうしねえ」


俺のことを考えてかよ。

まあ、いい奴だよなあ。


「俺は左手が生えたから、もう薬草採取だけじゃねえぞ。魔物の討伐も受ける」


「だがなあ……まだ、不安だよ。レベル30は超えねえとな」


すまねえな、弱くて。

まあ、こうやって依頼をこなしてレベルアップするしかねえ。

バルドゥルの話だと、『聖女の養育者』ってのは成長速度にボーナスがあるらしい。

通常の冒険者よりレベルアップしやすくなっている。

聖女の親がすぐに死なないようにするためらしいぜ。

まあ、勇者とかよりは効果は薄いらしいがな。


「フェー、あー!」


イーナが暴れている。

降りて、俺たちがやっているように、薬草を採取したいのだろう。

真似をしたいんだ。

魔物が出る森で危ねえが、まあ、いいか。

降ろしてみる。


「おー」


まだ、歩くのもやっとなイーナ。

数歩歩いて、ペタリと地面に座る。

そして手の届く草を掴む。

まあ、力がないので引き抜くことはできねえやな。

そして、それはただの雑草だ、薬草じゃねえ。

まあ、いいがな。

楽しそうだから。


「あー」


イーナが手を見せる。

泥で汚れている。

なんでドヤ顔だよ。

汚れるのがそんなに嬉しいかね?

謎だよ。

……まあ、俺もガキの頃は、汚れてナンボって感じはあったっけな。

文句は言えねえか。


「はい、はい。綺麗にしろってことね」


と、勝手に解釈して、クリーンの魔法をかける。

俺の手の平に小さい魔法陣が発生する。

それでイーナの手をなぞる。

すると汚れがきれいに落ちる。


「お、フェルドさん。クリーンを覚えたんだねえー」


そうなんだ。

バルドゥルから覚えろと言われていた。

子育てをするなら衛生環境が大事。

《クリーン》の魔法があれば便利だ。

《クリーン》の魔法は水属性Dランク以上が必要だ。

生活系の魔法なのだが、意外に必要素質が高い。

女神様の加護のおかげで、俺も水Dになった。

それでなんとか使用できるようになった。

しかし、魔法は値段が張る。

ギルドからの資金は、剣と魔法、それと日々の生活費で消える。

まあ、俺が贅沢する必要もねえしな。

だが、報酬として、もう少し出してくれてもいいんじゃねえかとも思う。

まあ、ただで貰っているもんだ。

感謝だな。



さて、薬草の採取は順調。

あとはゴブリンだ。

ここに来るまでには、通常のゴブリンだけで、上位種はいなかった。

俺が襲われた場所あたりを探索する。


ギギギ……


ゴブリンの声がする。

おう、こりゃ、数が多いな……

ドミニクに手で合図する。

が、イーナが……


「おー!」


この馬鹿たれ!

騒ぐんじゃないよ。

ゴブリンに気付かれたじゃねえかよ!


「フェルドさん、戦闘開始だよ! 囲まれないように注意だよ」


「わかった。指示を頼む!」


冒険者としてはドミニクの方がランクが上。

素直に指示に従う。

それが生き残る確率を上げるんだぜ。

賢い冒険者ってもんだな。


イーナを急いで背負い、剣をマジックバッグから取り出す。


ギギギ……

ギギ……


ゴブリンが茂みから現れる。

ノーマルゴブリン2。

ゴブリン・ソルジャー2。

恐らく、後方にもまだいるな。


実はノーマルとソルジャーの違いってのは明確にあるわけじゃねえんだ。

なんとなく体が大きくて、ちょっと立派な武器を持っているのがソルジャー、貧相で痩せているのがノーマル。

アーチャーは弓を打つ奴で、マジシャンは魔法を使う奴。

もっと上位種なら体の色が変わったりするんだが、この辺はそんなもんだ。


「フェルドさん、左側を!」


まずはゴブリンを一匹。

袈裟懸けに斬る。


ドミニクもゴブリンをやっている。

彼の戦闘スタイルはオーソドックス。

片手剣と盾だ。


ちなみに俺も冒険者になりたてのときは、そのスタイルだった。

が、左手がなくなり、盾を使えなくなった。

そんで、20年ほど、片手剣のみで戦っていた。

その間、盾系のスキルを忘れていき、今ではもう使えない。

だから、左腕が復活した今でも盾を使う気はならねえ。

剣だけでやってきた年月の方が長いからな。

ブルーノから買った剣は、バスターソード。

少し大きめの剣で、片手・両手で使えるもの。

まあ、少し値が張ったがね。


続けてゴブリン・ソルジャーへと向かう。

ドミニクはBランク冒険者だ。

ゴブリン・ソルジャー程度、楽勝だろう。

俺だって、単体なら問題ない。

前回とはステータスも違う。

囲まれない限り問題ねえ。


ゴブリン・ソルジャーは粗末な剣を持っている。

錆びた剣だ。

だが、これが問題だ。

切れ味は悪いんだが、もし斬られた場合、傷が悪化する可能性が高い。

それも、クリーンの魔法で清潔にすればその確率は減るんだがね。


ゴブリンの剣は短い。

ゴブリンの攻撃レンジ外から、剣を振り下ろす。

ゴブリンは剣で受けようとする。

が、剣の質が違う。

ゴブリンの剣をへし折り、そのまま斬る。

傷は浅いか……

もう一度。

それでゴブリンの首を斬り落とした。


ドミニクもゴブリン・ソルジャーを倒していた。

さすが。


ギギギ……

ギギギギ……


やはり、まだいる。


「フェルドさん!」


「おう、まだいける!」


奥のゴブリンへと向かう。


『未熟。前回の反省を活かしていないでしょう』


頭に声が響く。

これは……ギルドの庭で、バルドゥルと手合わせしたときに聞こえた声か?


『木の上、アーチャーです』


なに!

立ち止まり、木を見上げる。

2匹のアーチャーを確認する。

くそっ!

上手く気配を消しやがって。

……いや、俺たちが認識できなかったのが悪いんだ。


「ドミニク、上、アーチャーだ!」


「くそっ、面倒くせえやねえ! 上はやり辛えよ!」


俺たちには遠距離攻撃がない。

下にいるゴブリンを片付けてから、アーチャーを倒すしかねえ。

その間、アーチャーに矢を撃たれる。

警戒しながらの戦いになる。


『仕方ありませんね』


ギギャアアァァ……


上からアーチャーが落ちてくる。

首を斬られて、絶命している。

アーチャーがいた木に、黒豹がいた。

あのとき、この森から出るのを助けてくれた黒豹か……?


「フェルドさん、ありゃあ……」


「ドミニク、声が聞こえねえのか?」


「声?」


聞こえているのは俺だけか?


「ジー!」


いや、イーナも聞こえているな。

イーナは黒豹を指差して、何か言っている。


「あれは味方だ。俺たちは地上のゴブリンをやるぞ」


「なんだかわからねえけど、了解さあ!」


俺たちは残りのゴブリンへと向かう。


ちらりと黒豹をみる。

あれは……風の魔法……《ウィンドカッター》か。

風の刃が、残ったアーチャーを切り裂いた。

あいつ、魔法まで使えるのか。

他にアーチャーがいても、あいつに任せておけば大丈夫そうだ。


俺とドミニクは残ったゴブリンに集中した。

結果、ゴブリン5匹、ゴブリン・ソルジャー4匹を倒した。

黒豹は、ゴブリン・アーチャー3匹を倒していた。


「ジー、ジー」


イーナが木の上の黒豹に手を振っている。

黒豹は一つ頷いて、去った。


「何だったんだろうねえー。あの黒豹はあ……」


ドミニクが首をひねっている。


「あれは女神様の使いさ。俺たち……じゃねえな。聖女イーナを助けたんだ」


「あー……女神様ねえー。まあ、俺には関係ないことかねえ」


いや、ドミニクがウェストフェルトの街で、俺たちと同じ冒険者を続ける限り、関わると思うがなあ……

きっとそうなると思うがね。


ゴブリンの討伐を証明する部位である耳を斬り落とす。

黒豹が倒したアーチャー。

あれも俺たちが討伐したってことでいいんだよな。

少しこすい気もするが、感謝をして、貰っておこう。


今日はこれで仕事は終わり。

あまり無茶をしても、怪我をするリスクが上がるだけだ。

余裕があるうちに引き上げる。

これもベテランということ。


ギルドで依頼報告をして、宿に帰る。

ベッドに座り、ステータスを確認する。

レベルが一つ上がっていた。

21になっていた。

この前、20になったばかり。

やはり『聖女の養育者』の効果が大きいようだ。


もしかしたらAランク冒険者になれるかもしれねえ。

そんな、淡い期待が胸に湧く。

が、『聖女の養育者』のおかげでってのも、情けねえな。

が、素直にレベルアップは喜んで受けよう。

が、それを自分の才能のように思うのは違う。

勘違いして、態度が大きくなるようなことにならないようにしないといけねえ。

一気に実力が付いた冒険者は、たまに態度が大きくなったりする。

それじゃあダメだ。

冒険者は一人じゃ、できねえ仕事だ。

冒険者の仲間、そして冒険者じゃなくても支えてくれる人たちもいる。

その人たちに感謝が必要だ。

そりゃあ、自分も頑張っただろうさ。

それは、自分の中で少しだけ誇りにすればいい。

誇りを持つことと、慢心することは違う。

まあ、あれだ。

冒険者じゃなくたって、周りの人に感謝する気持ちってのは大切だ。

人間一人なんて弱いもんだ。

支え合って生きていくしかねえのさ。



『まあ、悪くない心がけですね』


また、あの声だ。

どこから……?


「ジー、ジー」


イーナの視線を追う。

開けていた窓。

黒猫がいた。

まさか……


「……あんた、あの黒豹か?」


『やっと気付きました。察しが悪いことです』


窓から、ベッドに飛び降りた。

イーナは喜んでいる。


『私、ジリと申します。メルフェイーナ様からイーナ様の護衛を仰せつかりました』


ああ、イーナが「ジー」と言っていたのは、「ジリ」のことだったのか。


「あんた、黒豹なのか、黒猫なのか?」


『黒豹ですわ。豹が街中を歩くのは違和感がありますでしょう。黒猫に化けております。この状態では戦闘力が低減しますので、ご注意を』


なるほど、猫の状態では戦闘力が減るのか。

あと、確認したいことは……


「……あんた、メスか?」


痛て!

腕を引っかかれた。


『顔ではないだけ、ありがたく思いなさい! あまりにもデリカシーがない質問ですよ』


……そうか、やはりメスか。

黒豹のときのあの腰の色っぽさ。

メス、だよなあ。

ジリが俺を睨む。

何か、嫌な視線を感じたのだろう。

……俺は無表情を貫く。

俺も、この歳まで生きてきたんだ。

ごまかすことも上手くなっているはず……


『もう一度、ひっかきましょうか。今度は顔がよろしいでしょうか?』


「……いや、もう勘弁してください」


すばやく撤退を宣言する。

なるべくリスクを負わないこと。

それがベテランというものだ。



<<ステータス>>

フェルディナント・エアハルト

 年齢:40歳

 冒険者:Cランク

 LV:21(Up!)

  生命力:137

  筋力 : 94

  魔力 : 50

  素早さ: 73

 魔法:

  クリーン(New!)


ドミニク・ビットマン

 年齢:36歳

 冒険者:Bランク

 LV:31

  生命力:126

  筋力 :110

  魔力 : 59

  素早さ: 79

 魔法属性:土(D)


ジリ(黒豹)

 年齢:不明

 黒豹メス

 LV:41

  生命力:222

  筋力 :196

  魔力 :192

  素早さ:179

 魔法属性:木(A)


ジリ(黒猫)

 年齢:不明

 黒猫メス

 LV:41

  生命力: 94

  筋力 : 85

  魔力 :192

  素早さ:158

 魔法属性:木(A)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ