表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロートル冒険者の俺が聖女の養育者でいいのかよ? ――のちに辺境の英雄と呼ばれる男の話――  作者: 月見里 嘉助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/57

第38話 小さい女の子に癒やしてほしいって願望の強い男性のことだよ

「あ、チャールズさん、お疲れ様です」


ドルフェミレスタの街、門での検査を受ける。

荷物を簡単に確認して、街に入る人が犯罪者ではないかどうかをチェックする。


俺とドミニクも、門番のおっさんに冒険者証を見せる。


「ドミニクさんも、フェルドさんも……ああ、久しぶりですねえ」


「そうですね。ランクがBになったからね。あまり護衛の依頼は受けないんだよ」


「で、イーナちゃん。どうして子供を?」


「この子にドルフェミレスタを見せてあげたくてね。いい経験になると思うんだ」


「ああ、なるほど。それはいいですね。子供は色々なものを見たほうがいい」


彼は頷いた。

腰を落として、イーナの目線に合わせる。


「イーナちゃん、この街を楽しんでね。ウェストフェルトと比べるとちょっと大きい街だから、楽しいものがあるよ。でも、ちょっと悪い人もいるから気を付けてね。悪い人に捕まったらおっちゃんに言うんだよ」


「うん。気を付けるよ。それにフェルとジリとドミニクがいるから大丈夫だよ!」


ジリがミャアと鳴く。

『私がしっかり警護します。ご心配なく』と言ってもおっちゃんには聞こえねえだろうがな。



さて、荷物検査も無事に終わり、門をくぐり、街の中へと入る。


「おー! これがドルフェミレスタか。大きいねえ! 人が多いね!」


イーナが声を上げる。

門から石畳の道がまっすぐに伸びている。

道の左右には三階建ての建物がびっしりと並んでいる。

茶色のレンガ造りの家だ。

統一感があるが、少しそれが圧迫感にもなっているか。


道の真ん中は馬車が忙しげに走っている。

左右に遊歩道が設けられていて、人々はそこを歩いている。

色々な人が行き交っている。

男性、女性、子供、老人。

元気な人もいるが、疲れている人もいる。

少し目つきの悪いやつもいるな。

ありゃあ冒険者かもしれねえや。


「イーナ、こっちの冒険者には気を付けるんだぞ。荒っぽいのが多いからな」


ウェストフェルトのほうは荒っぽいが気が良い奴らだ。

こっちには荒っぽくて、粗暴な奴もいる。

ごく一部だがな。

その一部が目立つんだよ。

冒険者ってのはレベルが上がる。

一般人とステータスが違うんだ。

そうなると力で押し通そうとするヤツも出てくる。

それじゃあいけねえんだ。

力だけじゃあ生きていけねえ。

魔物と戦うだけじゃあ、生きていけねえんだ。


野菜を作る人がいて、パンを作る人もいる。

洋服を作る人だって必要だし、家を作る人ももちろん必要だ。

そういう人たちがすべて合わさって街になってんだ。

誰が偉いってわけじゃねえんだ。

だが、それを忘れる冒険者がいる。

それじゃあダメなんだよな。


「そうなのか? 冒険者のおっちゃんたちはみんないい人だよ。おっちゃんたちだけじゃなくて、シャノンちゃんたちとかも」


「まあ、そうだな。向こうはみんなイーナを知っているからな。でも、こっちはイーナを知らねえ。そうなると問題が起きるかもしれねえんだ。俺たちゃあ、ここの住人じゃねえ。外の人だ。それは認識して気を付けねえといけねえんだ」


「ふーん……。そういうことなんだね。了解だ! 気を付ける」


「おう。ま、そんなに気を張るなよ。いつも通りいい子ならいいだけだ」


「了解!」



さて、宿を取り、一泊する。

で、翌日、チャールズは商人の仕事だ。

それにはドミニクさんが同行する。


俺たちはフリーにしてもらった。

イーナに街を見せてやろうって気遣いだ。

ありがたくその提案を受ける。

今日一日は自由行動。

そして、明日、ドルフェミレスタを出立し、ウェストフェルトへ向かう。



「おー、これは好きだよ。美味しいねー」


ということで、イーナと食べ歩きをしている。

今食べているのは五平餅ってやつだ。

ご飯を半殺しに潰し、甘い味噌をつけて、焼き目を付けたものだ。

甘辛い味噌だれってのが美味いんだよな。

まあ、おしゃれじゃあねえ。

だが、茶色い食べ物ってのは裏切らねえ。

それを選ぶあたりがイーナだな。


『あなたの方、おっさん冒険者の影響だと思いますが』


そう言うジリは肉串を食べている。

お前、肉ばっか食っているな。

もう少しバリエーション増やしてもいいんじゃねえか。


『黒豹ですから、それが当たり前でしょう』


今は黒猫じゃねえか。

その姿で言われてもなあ。


「フェル、あれはー?」


「おう、ありゃあ餅だな。三種類のタレで食べるやつだ。あんこ、きなこ、大根おろし醤油だ」


「このお餅と違うの?」


「ああ、五平餅は半殺しで、餅は皆殺しだからな。食感が違うまったく別の食べ物だ」


「皆殺し? それは美味しそうだねー。食べたい!」


物騒な、皆殺しと美味しいを結び付けるなよ!

いや、餅を皆殺しって言っている時点で物騒なんだよな。

だが、そのセンスは好きだぜ。


しかし、お前、食べ物ばっかだな。

しかも、その選択がおしゃれじゃねえ。

が、ナイスチョイスだ。

確実に美味いものを選んでいる。

いいじゃねえか。


『あなたのその基準がおかしいと言っているのです。炭水化物に偏りますよ』


おう、ジリよ。

そこじゃあねえだろう、ツッコむところはよお。

俺は炭水化物が問題じゃねえと思うんだがなあ……


「つーか、イーナよ。あの可愛いアクセサリーとか、あのフリフリな服とかはいいのか?」


イーナが俺が指す方を見る。

少し見て、そして首を傾げる。


「んとね。あのアクセサリーは森で木の枝に引っかかりそう。あの服は動きにくそうだよ。魔物と戦うのに邪魔かも」


おう、ちゃんと冒険者として育ってやがる。

聖女も冒険者ってことでいいんだよな?


『まあ、いいでしょう。イーナ様が聖女様であられることはお変わりありません。ならば元気に育っていただけるだけで、それだけでいいのです』


意外と聖女ってのも定義がゆるい。

俺としては気楽でいいけどな。


「ま、おらあ、イーナが幸せに育ってくれりゃあ、それでいいんだがな」


「うん。イーナ、毎日楽しいよ!」


イーナは屈託なく笑った。

それが聞けりゃあ、俺は十分だよ。

ちと目頭が熱くなるけど、内緒な。



武器屋を外から覗く。

別に買う気はねえ。

ブルーノは腕がいいから、その必要はねえんだ。

ここの街のはどの程度かなって感じだ。

まあ、店側からしたら感じのいい客じゃねえ。

つーか、入りさえしてねえんだから、客でもねえな。

実際、こんなもんだよなって感じだし。


あれ、イーナは?


「ねえねえ、お嬢ちゃん、可愛いねえ。どこから来たの?」


「君、すごい可愛いよ。ねえ、お兄さんたちと一緒にご飯とかしない?」


イーナが男性二人に声を掛けられていた。

ありゃあ冒険者か。

二十代後半の兄ちゃんたちだ。

実力はギリギリCランク程度だな。


ま、ジリが傍観しているんだから、問題ないだろうよ。


「フェルとジリが一緒にいるから、行かないよ」


ちゃんと断っているな。

偉いぞイーナ。


「そんなこと言わないでよ。そんな人たちより俺たちの方がいいよ。きっと楽しいから」


「俺たちは冒険者なんだぜ。Cランクだ。強いんだよ」


Cランクってのはそれほど威張れるランクじゃねえぞ。

まあ、一般人からしたらずいぶんステータスが違うからな。

恐れられる存在ではあるかもしれねえがな。


「行かないって言ってるでしょ! しつこいよ!」


「なあ、お嬢ちゃん。俺たちゃ冒険者だって言ってんだろう」


「そんなこと言って大丈夫かな。大人しく一緒に行こうぜ」


冒険者Aがイーナの腕を掴む。

あー、イーナの表情な。

ありゃあ爆発寸前。

いや、いくな。


イーナは腰を少し落とし、腰の回転を効かせて。


「ぐはああ」


イーナの拳が冒険者Aの腹に突き刺さる。

で、キッと冒険者Bを睨みつける。


「ひっ」


冒険者Bは逃げ腰になる。

が、イーナは逃さない。

一瞬で踏み込んで、懐へ。


「ぐへえ」


アッパーが冒険者Bの顎を跳ね上げる。

冒険者Bは大の字に道に倒れた。


ま、そんなもんだよなあ。

イーナのステータスは見えねえが、きっと高いぜ。

直接戦闘もできる聖女。

もういっそ、それを目指そうや。


「大丈夫かい、イーナ」


「うん。弱っちい冒険者だった。女の子の腕を掴んだら、倒していいんだよね?」


「おう、オッケー、オッケー。イーナの言う通りだ。で、こいつらどうしようかね」


冒険者Aは腹の痛みから立ち直りそうだな。


「もうちょっと寝ておけよっと」


「くあ!」


ちょこっと顎を殴って、脳を揺らしておいた。

冒険者Aはぐらりと倒れた。

これでよし!


『よし、じゃあないでしょうね。衛兵が来ましたよ。どうしますか?』


「俺たちは悪いことをしてねえんだから、逃げる必要はねえと思うぞ。なあ、イーナ」


「おう! 悪を二つ退治した!」


悪が何かの定義が必要だな。

イーナとは少し話し合う必要があるかもしれねえ。

悪かは知らねえが、殴られてもしょうがない奴らだってのは確かだろう。


「どうしたんですか、これは!」


来たのは若い衛兵だ。

二十代中盤くらいで、結構なイケメン、金髪に碧眼ってやつだ。

モテるだろうな。

俺にはねえ要素だよ。


「おう、娘がこいつらに連れていかれそうになったんで殴った」


誰がとは言っていない。

俺とイーナなんだがな。


「そんな乱暴な。この人たちが悪いからって、殴るなんて物騒ですよ。……ん?」


衛兵は二人の冒険者の顔を確認する。


「あー、なるほど、この二人ですか。前科アリですね」


「ん、どういうこったい?」


「少女を連れ去って、いたずらしようとしたんですよ。運よく未遂で終わっていますが。いわゆるロリコンですねー」


「ロリコンか」


しかし……


「ロリコンってやつは基本ノータッチだろうがよ。それが奴らの誇りじゃあねえのかい?」


「まあ、基本的にロリコンは無害ですよ。ですが、どの組織にも過激派がいますからね。それはしょうがないことですよね」


「いや、それで済ますなよ。こいつら犯罪者じゃねえか。しっかり逮捕してくれよ」


衛兵はポリポリと頭をかく。


「いやあ、未遂だったので、二週間で出てきちゃったんですよね。今回も未遂ですのでどうだか。でも二回目ですからしっかりと矯正されると思います」


大丈夫かよ。

過激なロリコンなんて世に放っちゃあいけねえだろうが。


「あ、僕はコンラッド・オコンネルと言います。何かあったら連絡ください」


まあ、用事はねえと思うよ。

この一日で二回も世話になる予定はねえよ。


「おう。よろしくな。俺はウェストフェルトの冒険者でフェルドってもんだ」


が、そこは丁寧に。

それが大人ってもんだ。


彼とは会釈をして別れる。

ま、後は彼がどうにかしてくれるだろう。

冒険者AとBを殴ったのは少しやりすぎたかと思ったが、過激派ロリコンじゃあしょうがねえな。


「ねえ、フェル。ロリコンってなに?」


「おう、イーナ。ちと心に傷を負って、小さい女の子に癒やしてほしいって願望の強い男性のことだよ」


「じゃあ、あの人たち可哀想だったの?」


「いや、あれはあの対応で正解だぜ。ロリコンってのもこじらせると悪になるんだ。それは覚えておけよ」


「うん。わかった!」


わかったかなあ?

女性にはわからないかもしれねえよなあ。

男性の心はナイーブなんだよ。

ときに壊れてしまうことがある。

そして壊れてしまったやつがいる。

そういうことだ。

だが、他人に迷惑をかけるのは違う。

それも正しいことだ。

そして、ロリコンはノータッチ、これが絶対だ。


『フェルドはロリコンじゃありませんよね?』


なに疑問に思ってんだよ。

俺の普段の行動を見りゃあわかんだろうが。

俺はロリコンじゃねえよ。

大人の女性が好きだよ。

だらける俺のケツを、たまに蹴っ飛ばしてくれるような人がいい。

って、俺の好みはどうでもいいじゃねえか。


『まあ、そうですよね。さすがに女神様がロリコンを選ばないと思います』


悲しいかな、ロリコンの社会的地位よ……

まあしょうがねえかな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ