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ロートル冒険者の俺が聖女の養育者でいいのかよ? ――のちに辺境の英雄と呼ばれる男の話――  作者: 月見里 嘉助


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第29話 満足しねえから、来年も見たくなる

さて花見の準備だ。

エルマさんに料理してもらうにしても、材料は俺が買わねえといけねえだろう。

商店で鶏肉と、豚肉を買う。

豚肉はイーナが食べたいと言ったからだ。

おっさんどもが食べるから、少し野菜も入れとかねえとな。

ナスとかしし唐とかな。

ジャガイモも買っておこう。

厚揚げとか、さつま揚げも買っておく。

よっしゃ、こんなもんだろう。



宿に帰る。


「ただいま。帰りました。エルマさん」


「あれ? どうしてんですか、フェルドさん」


エルマさんが不思議そうだ。

そりゃそうだよな。

仕事に行く格好で出て行って、すぐ帰って来たんだから。


「エルマ、花見するんだ!」


「あら、イーナちゃん。お花見、いいわね」


「エルマの唐揚げ食べるの!」


「あら、あら、そうなの。 私、唐揚げ作るの?」


エルマさんにじいっと見られる。


「すみません。そういう話になっちまって。材料は買ってきたので、俺も手伝うんで作ってもらえませんか?」


もちろん、拝み倒すよ。

情けねえとか言ってられねえよ。


『まあ、フェルドらしいですね。安定の女性優位でしょう』


しょうがねえだろうが。

今回は全面的に俺が弱い。

エルマさんにすがるしかないじゃないか。


エルマさんがため息をつく。


「しょうがないわね。何時からです?」


「に、二時間後で、お願いします」


「……時間がないわね。フェルドさん、急すぎますよ」


「すみません。お願いします」


エルマさんはニコリと笑い、すぐに真剣な表情になる。


「ティムー、ティムー! 手伝って!」


「なにー、仕事ー?」


ティムにも手伝ってもらうことになった。

すまねえな、ティム。

頼りにしてるよ。



ということで、料理を開始する。

イーナは残念ながらまだ戦力外。

料理は教えてきてねえんだよな。

ジリももちろん戦力外だ。


『心外ですね。やろうと思えばできますよ、私』


猫の手を借りたってなあ。


『もちろん、私も食べますので、よろしくお願いしますね』


「なあ、働かざる者食うべからず、て言葉知らねえか?」


『世間一般では、猫は働かない、ただ可愛いだけで価値があるってのもありますよね』


……そりゃあ、自分が猫って認めてねえか?


『私は、ただ、一般的な猫のことを言っているだけですよ』


ああ、そうですね。

そういうことにしておきます。


「私、唐揚げの下処理に入るので、フェルドさんはポテトサラダお願いします」


エルマさんは鶏肉を切り始める。


「承知した」


まずは湯を作らなきゃな。

窯に鍋をかけて『ウォーター』で水を張る。

ジャガイモを茹でるのが一番時間がかかるので、それから始める。


「ティムとイーナちゃんはお野菜を切ってね。ティム、ちゃんとイーナちゃんに教えるのよ」


「了解、母さん」


「らじゃー、エルマ!」


イーナも料理をしたいと言い出した。

十歳にして料理に目覚めたか。

まあ、料理ができるようになるのはいいことだ。

男も女も関係ねえよ。

自分の食べるものくれえ、最低でも自分で作れるようになっておくにこしたこたあねえ。

一度自分でやってみると、いつもやってくれる人のありがたみがわかるしな。


ティムとイーナはキュウリを切る。


「イーナちゃん、手は猫の手にしてね」


「猫の手?」


イーナはジリを見る。

なぜか、ジリは視線を逸らす。

イーナ、それは借りられない手だぞ。


「こんな感じだよ」


ティムが見本を見せる。


「あー、ジリの手みたいだ!」


嬉しそうに真似をする。

イーナは初めての包丁だったが、何とかなりそうだ。

剣は持ったことがあるんだがな。

うん、そのアンバランスさよ。

やっぱり、冒険者たあ、ガサツな生活だよな。

ちと、反省する。



唐揚げは下味をつけて、衣は小麦粉と片栗粉半分半分でいく。

下味のタレが少し残っている状態で粉を入れる。

これで、衣も味がして美味いんだ。


ナスは煮びたしだな。

子供の頃は、見た目からちょっと敬遠していたが、大人になって食ったら、美味えんだよな、これ。

ナスは四等分、皮目に切り込みを入れる。

ちょっと焼き色を付けて、だし汁、醤油、みりん、砂糖で煮込む。

ショウガと、少しだけのニンニクを入れるのが好みだ。

最後にスダチを少し。

これで、ぐっと上品に。

まあ、おっさんが食うから、上品にする必要もないかもしれんがな。


さつま揚げは素直に焼く。

一味マヨネーズで食うと、シンプルに美味い。

ちょっとだけ、鰹節を振りかけても丸だ。


ジャガイモと玉ねぎでポテトサラダだな。

基本のポテトサラダに少しだけ砂糖を隠し味に。

ちと旨味が増すんだよ。

胡椒を多めに入れるのがいい。

胡椒は麦酒とも合うからな。


豚肉は串にさして焼く。

鶏肉も焼き鳥を作る。

シンプルに塩胡椒だ。

酒にはこれでいいという話もある。


あとはもつ煮とか、牛すじの煮込みとかもいいが、今回は時間がないからパスだ。



二時間後、何とか料理が完成する。


「何とかなりましたね」


エルマさんが調理器具を洗いながら微笑む。


「本当に助かりました」


「おー、美味しそう」


イーナはできたての料理が気になるようだ。


「ダメだぞ、テオたちと花見だからな。そのときまで待ちな」


「おー……」


唐揚げを恨みがましく見ている。

こいつ、分かりやすく凹むよなあ。


「フェルドさん、いいじゃないですか、一つくらい。イーナちゃんも育ち盛りだし」


「そうは言いますが、イーナはいつも育ちざかりで……」


おい、ジリよ、何とか言えよ。

イーナにお行儀を教えるんだろう?


……なんで、焼き鳥を見ているかな、コイツ。

わざわざ椅子に登って凝視してやがる。

確か、コイツの好物。

お前が食い気でどうするよ?


『い、いや。私は問題ない。何も問題ないでしょう』


しょうがねえな。


「すみません、エルマさん。イーナに唐揚げ一つと、あとジリに焼き鳥一本いいですか?」


「はい。いいですよ」


エルマさんとティムに笑われるじゃねえか。

イーナはハフハフと美味そうに、ジリはガツガツと牙をむきだして食べている。

なんだかなあ。

色々と間違えている気がするぜ。

ただ、唐揚げは揚げ立てが一番美味いということは正しいんだよな。


「エルマさんとティムも一緒に行きますか?」


「え、いいの、フェルドさん!」


ティムが行きたそうな顔をしていたからな。


「でも、ご迷惑ですよね。せっかくのお友達との飲み会ですのに」


「いいんですよ。どうせ、テオとルッツですよ。ありゃあ、いつでも飲める奴らだ。気にすることはありません」


「ふふ、仲良しなんですね。はい、ではお邪魔します」


ということで、エルマさんとティムも加わって、みんなでできた料理を持って会場へ移動する。



街の中、小さめの川が流れている。

その川沿いに桜の木が並んで植えてあるんだ。

春になると薄ピンク色の花を一斉に咲かせる。

川沿いのほうには菜の花が群生している。

黄色い花を咲かせて、これもまた綺麗だ。

青い空に、薄ピンクの桜、そして黄色い菜の花。

いいじゃねえか、酒が進みそうな景色じゃねえか。


「フェルー! お花が咲いてる。並んでる!」


「ああ、桜ってんだぞ。すぐ散っちまうから、ありがたく堪能するんだぞ」


「おー! 桜な!」


イーナとティムは楽しそうに走って、先頭だ。

イーナはテンション上がって、クルクル回っている。

あ、こけた。

静かに体の状態を確認。

膝を擦りむいたらしい。

自分で回復魔法をかける。

立ち上がり、また走り出す。

うん、あれだ、冒険者の娘だ、冷静だな。

……ちと、十歳の聖女って感じじゃねえがな。


「ああ、桜が綺麗ですね。ほんと、可愛い」


エルマさんが目を細める。

大人はゆっくり余裕を見せてだな。


「花が散って、川がピンクになるのも綺麗ですよね」


「そうですね。でも、少し寂しいです。もう少し綺麗な姿を見せていてくれてもいいんじゃないでしょうか」


エルマさんが低い枝に手を伸ばす。

顔に近づけて、匂って、「香りはないんですよね」と笑った。

なんかいいねえ……


「そうですね、確かに、短いですね」


足りない感じがする。

それが、またいいのかもしれねえ。

満足しねえから、来年も見たくなる。

不足があるから、心待ちにする。

毎年、続いて、文化になる。

そんなもんかな。


なんとなく、高尚なことを考えてみるが、おらあ、きっと酒が飲める口実になりゃいいのさ。

月を眺めて、酒を飲み。

虫の声に耳を傾け、酒を飲み。

紅葉を見ては、酒を飲み。

雪を肴に、酒を飲む。

季節、季節で酒を飲んでいる。

おっさんてのはそんなもんだよな。

それが正しいおっさんだ。

こないだは、冬で寒いからって理由で、ドミニクと熱燗を飲んでいた。

宿でやっていたら、エルマさんに見つかって、「昼間から何です! いい大人が!」て取り上げられた。

それも正しいおっさん像かもな。


ティムがこっちを見て、ニヤついている。


「なんか、家族って感じだよね!」


家族?

パパ、ママ、姉と、僕か?


「何言ってんのよ、この子は!」


「だって、そう思ったんだからね!」


「もう!」


エルマさんが顔を赤らめて怒る。

エルマさんがママで、俺がパパって感じか?

まあ、俺じゃあ分不相応だろう。


「すみません、ティムが。フェルドさんに失礼でしたよね」


「いや、俺は光栄ですよ。ティムに父さんと思われるなんてね」


「そうですか?」


「エルマさんの旦那さんに見られるってのも、嬉しいですよ」


「そう、ですか……」


エルマさんは少し俯き、黙ってしまった。

なんか微妙な雰囲気になったじゃねえか。

ティム、後で剣の訓練増やしてやるからな。



「おーい、フェルド、遅っせえぞー」


テオだ……

手にコップ。

反対側に徳利が置かれている。

米酒だろう。

顔は赤くなっている。

もうでき上がってんじゃねえか、こいつ。


「先に始めてんじゃねえよ! このすっとこどっこい!」


「やーい、父さん、フェルドさんに甲斐性なしって言われやんの!」


「てめ、トレヴァー、甲斐性なしとは言われてねえ! それ言うのはメアリーだろうがよ!」


おう、トレヴァーも来ていたか。

テオの息子で、確か、八歳だな。

で、メアリーさんはテオの奥さんだ。

で、奥さんに甲斐性なしって言われてんだな、テオ。

まあ、売り言葉に買い言葉だろう。

本気じゃねえよな、な?


「やあ、フェルド。すまねえな。先に始めさせてもらっているよ」


ルッツは優雅にブドウ酒をやっている。

こちらは娘のモニカちゃんは来てねえようだ。


「ふふ。相変わらずですね、テオさん、ルッツさん」


「こりゃあ、エルマさんじゃねえですか。すみません、みっともねえ、姿見せて」


「こんにちは、エルマさん。今日もお綺麗ですね」


おい、ルッツ。

未亡人を口説いてんじゃねえ。

コイツも表情に出てねえだけで、すでに酔っているじゃねえか!


「あら、お上手ね、ルッツさん。たくさん料理作って来たから食べてくださいね。作りすぎたかしら?」


まあ、エルマさんも慣れたもんだ。

宿で冒険者を相手にしているから、こんな軽口は日常茶飯事か。


テオたちは桜の木の下に、布を敷いて、その上に座っている。

そのシートの上に持ってきた料理を広げる。

布が料理で占領される。

壮観だな。


「大丈夫じゃねえか? これくらいすぐに食っちまうよ。イーナちゃんもいるしな」


「へへ、イーナ、たくさん食べるよ!」


「それに、他も呼んだからな」


「呼んだあ? 誰だよ、そりゃ」


「もう来ると思うぜ」


勝手に増やすんじゃねえよ。

参加人数によって、料理の量も違うんだよ。

これだから料理をしねえ奴は。


辺りを見渡す。

ところどころ、シートを敷いて、花見をしている奴らがいる。

その向こう、ギルドの方向、巨大なシルエット……


「がははは、いい天気じゃねえか。昼間っから酒が飲めるたあ、いいイベントだな、花見たあ!」


おい、バルドゥルじゃねえか。

なんで、呼ぶんだよ!


「酒を持ってきてやったんだ。そんな顔するんじゃねえよ!」


「うっせ。料理の量が足りないんだよ。圧倒的にな! おめえは食うな! ただ飲んでろよ!」


「もちろん食べるぜ。エルマさんの料理だろが。久しぶりだからな!」


ダメだな。

自分の分……いや、イーナの分だけは確保しておかなきゃいけねえな。


「すみません。私が誘われたんですが、どこで聞いたのか、付いてきちゃって」


マリアンネさんも一緒だ。

申し訳なさそうにしている。


「いや、マリアンネさんのせいじゃねえよ。そいつが、こういうイベントごとに耳ざといだけだ」


しかし、マリアンネさんがいねえとなるとギルドの方はどうなってるんだ?

ちなみに、バルドゥルはいてもいなくても冒険者にとってはどうでもいい。

マリアンネさんにとっては、バルドゥルがいる、いないは重要だがな。


「冒険者ギルドのほうはディーターさんたちに任せてきたんですよ。ちょうど良いタイミングでいらっしゃいました」


ああ、あいつら、なんてタイミングの悪い。

まあ、たまにゃあ、ギルドの仕事ってものいいだろう。

その大変さがわかりゃあ、冒険者ギルドのありがたみってのがわかるってもんだよな。


「あ、マリアンネさん、久しぶりです。お料理ありますから、食べてくださいね。私が腕によりをかけました。いつもフェルドさんが美味しいって褒めてくれるんですよ」


「ええ、エルマさん、お久しぶりです。お料理ありがとうございます。デザートを買って来たのでよろしかったら、一緒に頂きましょう。フェルドさんとイーナちゃんも大好きなお店のものです。いつも一緒に行っているんですよ。今度、エルマさんも一緒に行きましょうよ」


笑い合っている。

まあ、仲がいいってことでいいんだよな……?


『どうでしょうか? 表面に見えることと内面ではまったく別のことを考えているのは普通のことでしょうから。内面では怖いことを考えている可能性はありましょう。まあ、それはそれとして、私の分の料理は確保しておいてくださいね」


怖いことねえ。

そんなこたねえと思うぞ、エルマさんと、マリアンネさんだからな。

で、ジリの食料確保もねえ。


とりあえず、焼き鳥の皿を、なるべく自然に自分のほうに寄せる。

バレなきゃいいが……


「おい、フェルド。麦酒を冷やしてくれや!」


バルドゥルが持ってきた樽を渡される。

冷えてはいねえ。

居酒屋じゃ、魔法使いがいて冷やして出してくれるんだ。

そのぶん金は取られるがな。


樽を持ち、《クール》の魔法を発動する。

これは手の平に触れていたものを冷やす魔法だ。

魔力を大量に使えば、キンキンに冷えた麦酒が飲めるって寸法だ。


「おい、フェルド、クールを覚えたのか? 居酒屋に雇ってもらえるじゃねえか」


テオにちゃちゃを入れられる。


「冒険者なんてやめて、そっちに就職したらいいじゃねえか。安定収入かもしれねえぜ」


「フェルドさんが冒険者を引退したら、ギルドで働いてもらいますからね。テオさん、そちらには行きませんよ!」


なぜか、マリアンネさんがキッパリと断る。

俺の人生なんだがな。

ま、今は引退は考えてない。

近い将来かもしれねえが、今はまだ、俺は強くなっていっている。

まだ、そのときじゃねえ。


「そうですね。宿を手伝ってもらうっていうのもいいかもしれないわね。お料理もお洗濯も上達していますからね」


おう、エルマさんの宿を手伝うねえ。

それもありか。

ゆったりとした日常を過ごせそうだ。


「せっかく冒険者ギルドの仕事を覚えていただいてるんですから、冒険者ギルドの方がいいと思います。それに、戦闘ができる職員というのはいつでも歓迎ですから」


「いえいえ、冒険者として頑張ってきたのなら、別のところでゆっくりしたほうがいいんじゃないかと思います」


『ああ、マリアンネとエルマは頑張っていますね。しかし、フェルドはイーナ様をちゃんと育てるまでは引退できませんからね。それは承知しておいてください』


なんだろうなあ。

俺のことを思ってなんだろうが、俺はまだ引退したくねえぞ。


「いいじゃねえか、フェルド、モテモテだな! 将来安泰だ!」


テオの酔っぱらいが、うるせえよ。


「おい、酒よこせや! 始めようや!」


バルドゥルがもう待てねえみたいだ。

みんなに飲み物を配る。

子供らはぶどうジュースだな。


「じゃあ、乾杯だ!」


「おい、フェルド、あっさりしすぎだ。この素晴らしき日、この素晴らしき仲間たちを祝って! くれえ言えねえか」


恥ずかしくねえのかよ、バルドゥル。

それができるからギルドマスターなんだろうがな。


「フェルー、食べていい? いいよね!」


「おう、食え、食え。今日は遠慮しねえで食え」


イーナが唐揚げに突撃する。


「おい、フェルド。麦酒には焼き鳥だろうが。よこせや!」


『フェルド、わかっているでしょうね。焼き鳥は死守しなさい。バルドゥルに渡したら、私の分が残らないでしょうからね!』


「ということで、バルドゥル。お前には二本やる」


「なにが、というわけでだ! もっとよこせや!」


「ほら、マスター、暴れないでください! 強制退場にしますよ」


「しかしマリアンネ。フェルドが焼き鳥くれねえんだよ!」


「子供みたいなこと言ってないで、唐揚げもお酒に合いますから。ほら、レモンをかけてあげますから」


「俺はレモンじゃなくて、マヨネーズ派だってんだ」


「レモンとマヨネーズ一緒でも美味しいですから」


場が混沌としてきた。

まあ、おっさんどもに酒がはいりゃあ、こんなもんさ。


「あー、フェルドさんじゃねえですかいー。花見ですかねえ。いいじゃないですかあ」


ドミニクが通りかかる。

でだ。


「あれー、花見しているの? 混ぜてよー」


ラーレ達だ。


「ね、ね! ドミニクさん、一緒に混ぜてもらおうよ♪」


「花見って風流ですよね」


アポロニアも、エラも乗り気だ。

回避は不可能だな……


てな、感じで、まさに会場はゴチャゴチャだ。

俺はというと、焼き鳥をジリに横流しすることに必死。


『まあ、よくやったと褒めてあげましょう。今度、しっかりと訓練を見てあげましょう』


それはいつものことだろうが!

もうちっとなんかねえのかよ、感謝は!


しょうがねえから、何故か不人気なナスの煮びたしに手を伸ばす。

ナスからじゅわりと出てくる出汁を口に残したまま、麦酒をあおる。

キンと冷えた麦酒が喉を通過する。

苦みが来て、麦の香りが鼻に抜ける。


かー、美味えな!

この一口目がたまらねえ!

生きてるって感じがする。


視線を上げると、空は青く澄んでいる。

桜の花が、ちらりと一片散って落ちてきた。

風に遊ばれて、ひらり、ひらりと。

川の土手には菜の花が咲いている。

菜の花の香りがする。

ちと、野生の草っぽい匂いかもしれねえな。


地上はゴチャゴチャしてるが、自然はのんびりと。

春だねえー。

ま、酒が美味けりゃ、どうでもいいことさ。


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