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ロートル冒険者の俺が聖女の養育者でいいのかよ? ――のちに辺境の英雄と呼ばれる男の話――  作者: 月見里 嘉助


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第21話 自分が未熟だって理解することは、いいことだ

今日は街を出て、草原の方へと来ている。

こちら側の魔物討伐の依頼は少ねえ。

スライムの大量繁殖とか、そういう場合しかねえな。


だが、新人のレベルアップには森よりも、こっち側の方がいい。

最近の森は浅い階層でもゴブリンの上位種が出没する。

今のこいつらじゃあ、やられちまう可能性もあるからな。


つーことで、大した金にはならねえが、魔物の討伐だ。

スライム相手に戦っている。


「うおりゃあ、袈裟懸け!」


「袈裟懸け」


「フレイムショット!」


まあ、そうなるだろうが。

で、結果は。


「っ! 核を外した!」


「倒した」


「くっ、魔力が……」


二匹のスライムを倒し、一匹外した。

つーことで、残りがまた三匹だ。


「ぐほ! なんでよ!」


で、攻撃失敗のクリスタが反撃を受けている。

スライムの突撃を腹に食らった。

アクティブ・スキル発生直後は少しの硬直があるからな。

隙ができちまう。


「クリスタ、大丈夫?! 袈裟懸け!」


グレーテが助けに入る。


「くそ、まだ二匹。魔力の回復まで!」


少しスライムの数が多いとこうなるのかよ。

まだまだだな。



「おーし! 行けえ、フェル!」


肩車のイーナだ。

俺に行かせるんかい。

あと二匹だから、何とかなりそうじゃねえか。

ま、いいや。

そろそろ助けに入るか。


で、終わり。

さくっとスライムを切り裂いた。



「じゃ、反省会な」


三人は疲れて地面に座っている。

俺の《ウォーター》をコップに受けて、飲んでいる。


「おー! はんせいかいな! まぐ、まぐ」


イーナはお腹が減ったので、おやつタイムだ。

エルマさんが作ってくれた、サンドイッチ。

ハムとチーズが挟んである。

美味しそうに食っている。

元気なのはイーナだけか。

ジリは飽きたのか寝てるしな。


「はい! 敵が多すぎでした」


「焦って、攻撃を失敗した」


「魔力量が足りない」


クリスタ、グレーテ、ディーターだ。


「まあ、間違っちゃいねえ。が、だ。スライムだぞ。Eランク冒険者でも楽勝な奴だぞ」


「だって、一気に六匹は多いって」


ちょっとクリスタは不貞腐れてるな。


「だってじゃねえ。なんで、アクティブ・スキルを使ったよ?」


「だって、強いじゃん。スキル」


「使わねえと勝てねえんかよ。スライムだぞ」


「……勝てるわよ! スキル使わなくたって楽勝よ!」


「なら、使うなよ」


「どうしてよ!」


おい、この流れでその解答かよ。

頭を使え、頭を!


「グレーテ。アクティブ・スキルの弱点は?」


「発動後の硬直」


「よし! 優秀!」


「じゃ、なんでスキル使わないで勝てる相手に、スキルを使ったんだ?」


「スキルに頼り切った戦い方になっていた……」


下を向く。

こっちは反省しているようだな。


「そうだ、そのとおり! 今回のように、核を外したら、硬直を襲われちまうだろうが。リスクが高え! 今回はスライムで攻撃力が高くねえから、なんとかなったがな。死に直結するぞ! スキルは確実に当てろ! もしくは硬直が問題ないときに使え!」


「だって、せっかくスキルを覚えたのにー!」


「クリスタ、だってじゃねえんだよ。スライムごときに苦戦しやがって」


「ぐぬうぅ」


とりあえず、クリスタを黙らせた。


「お前ら二人がしっかりしてりゃあ、ディーターが魔法の馬鹿撃ちしねえでも楽勝だったのによ」


「俺の魔力がないのが悪いんだ」


リーダーらしく、自分に責任があるってか。

ちげえよ。

パーティの責任は全員に平等だ。


「そうじゃねえよ。お前はそのレベルにしちゃあ、優秀なんだ。運用が悪いんだよ。魔法使いってのは、最悪の場合を想定して、魔力を温存しておくもんだぜ。パーティの最大の火力なんだからな」


「連携が悪いって言うんですか」


「ああ、そう言っている。剣士二人がいるんだから、魔法使いをうまく守って、効率的に魔法を運用しろ」


まあ、実戦はそれほどやってねえんだろう。

冒険者になる前に、剣の訓練、魔法の訓練はしてただろうがな。

実戦を知って、連携を良くしていく。

それが大事だ。

パーティだからな。


「じゃあ、剣の振り方を教えなさいよ! スキル使うなって言うならさ!」


おう、クリスタが復活したか。

ま、元気でいいと思うぞ。

馬鹿だがな。


「スキル覚える前は、普通に振っていただろうが」


「だけど! ……それであってんの?」


「じゃあ、スキルと同じ動きをやってみろよ」


「え、スキルと……。どういうこと?」


「よく考えてみろよ。スキルってのは一つの基本の動きだ。なら、それを先生にして、真似ればいいだろう」


「スキルがあるのに?」


「馬鹿か! 硬直があるって言ってんじゃねえか。で、基本の動きだって言ってんだよ。スキルの動きを、スキルなしでやっちゃいけねえってこたあねえんだよ!」


「あっ!」


「んでな。そうするとスキルに対する理解が深まるんだよ。スキルの威力が、速度が上がるんだ」


「そんなこと、冒険者の教科書に載ってなかった!」


「ああ、エビデンスなんてないからな。冒険者の体感。それだけだ。だが、その感覚ってのが重要なんだ。体にしみ込んだ経験。それが違いを感じるんだ。それほどに体に動きをなじませろよ。剣を振り続けろよ」


「……感覚かよ」


「感覚だよ。ベテランに聞いてみろよ。ドミニクでも、シャノンでもいいぜ。それで納得するならな」


「……」


ま、今日のところはこのへんだろうな。

あとはこいつら自身がどう思うかだ。

俺が言ったところで、結局、こいつらがやらなきゃいけねえんだ。

俺がいくら頑張ったって、こいつらの実力にはならねえ。

こいつら自身が頑張んなきゃいけねえ。

死なねえためにな。

若えやつが死ぬところなんて、見たくねえぞ、俺は。



でだ。

運が悪いことにチャージ・スパロウの群れに襲われたりする……

コイツは、まあちとでかいスズメだ。

一匹一匹は弱い。

が、問題は、群れで襲ってきて、ツッコんでくるところだ。

攻撃が成功して、こっちにぶち当たると、自身も死んじまうっていう、体の弱いヤツ。

だが、その覚悟の特攻が面倒だ。

コイツの相手は盾持ちがいい。

盾で防ぐのが一番効率よく倒せるんだ。

だが、俺たちの誰一人盾持ちがいねえ。


そして、こいつら、美味いんだよな。

丸焼きか、素揚げ。

スパイスをかけてなあ。

麦酒とよく合うんだよ。


「どうするんですか、フェルドさん!」


ディーターが叫ぶ。

魔法使いの装備だと、当たったら痛いだろうなあ。

俺のレベルだと、ぶち当たっても、死ぬこたねえ。

ちと痛い程度だ。


「よけろ! よけろ! そうすりゃ、地面に激突して全滅だ!」


「んな、無茶な! 魔法使いの回避力を舐めないでください!」


なんで、そこで偉そうなんだよ?

魔法使いなら、逆に回避を練習しておけよ。


「なら、女の子に守ってもらえよ! パーティなんだろうが!」


「わかってるわよ。ディーター、こっちに来なさい。全部、私が撃ち落としてやるんだから!」


ディーターを守るように、クリスタとグレーテが立つ。


「ごめん」


「そこは謝るところじゃないわ。パーティなんだから」


「そう。感謝」


「ああ、ありがとう。クリスタ、グレーテ」


「それでいいのよ」


「うん」


彼らをスズメが襲う。

何匹かは剣で撃ち落とすが、何匹かはクリスタ、グレーテの体に当たる。


ちなみにイーナは俺の足元。

俺は左右の拳で、突撃してくるスズメを殴り落としている。

まあ、レベル差がありすぎるんだよ。


ジリは簡単に避けてるな。


「きゃあ」


「大丈夫か、クリスタ!」


……スズメの数が多い。

さすがに無茶か。


マジックバッグからバックラー(小盾)を二つ取り出す。


「これを使え!」


それぞれ、クリスタ、グレーテに投げる。


「ちょっと、危ないわね!」


「ありがとう」


さすが、冒険者。

何とか受け取ったな。


彼女たちはなんとか盾でスズメの特攻を受けていく。

ま、これで死にゃしねえだろう。

本当はラウンドシールド(丸盾)くらいの大きさがありゃいいんだがな。

俺も持っていないからな。

しょうがねえ。


スズメたちは俺とジリには分が悪いと思ったようで、新人に集中する。

んー、援護しておくか。


『まあ、魔法の練習にいいでしょうね』


ジリの提案もあり、《ウォーターガン》で撃ち落としていく。

所詮、俺の魔法だ。

スズメは柔らかいので、当たりゃあ落ちるが、なかなか当たらん。

二匹落としただけ……


「フェルー、手伝う?」


イーナは余裕だな。

……素直に手伝ってもらおう。


「お願いします」


「おう! いいぞ!」


イーナを抱き上げる。

イーナが俺に魔力を注ぐ。

おお、いいね。

力があふれてくる。

これ、依存しちゃダメなやつだな。

俺の力じゃねえ。

イーナの力だ。


「おらあ、スズメっこよ。落ちやがれ!」


あ、こりゃあ、俺の《ウォーターガン》じゃねえなあ。

五倍くらいのヤツが飛んでいく。

回避しようとしたスズメが、失敗し落ちる。

イーナの力だとしても気持ちがいいや、連射していこうか!


そんなんで、スズメは全滅した。

地面に激突して、首の骨を折って、死んでいる。

なんでこいつら、こんな必死にこっちを攻撃してくるんだろう?

もう少し、楽しく生きりゃいいのにな。


新人を見る。

クリスタ、グレーテがボロボロだ。

だが、ディーターは守り切った。

いいじゃねえか。


「フェルドさん、盾持ってるんだったら、もっと早く出してよね」


「貸してもらったんなら、素直に感謝しろよ」


「ありがとうございました。助かりました」


「グレーテのように素直によう」


「……ありがと」


クリスタはフイと、向こうを向く。

きっと顔が赤くなっているんだろうなあ。

指摘はしねえが。


「あー、痛そう。回復!」


そうだよな。

イーナは回復するよな。

こんな子供が回復魔法、それも上等なのを使う。

目立つがしょうがねえ。

それがイーナだからな。


「回復、終わり!」


「え、イーナちゃん、すごい……」


「回復……した。ありがと。イーナちゃん」


「フェルドさん、これって……」


「あー、ディーター。これは秘密な。イーナは、ちと優秀な回復魔法使いなんだよ」


「ちょっとじゃないですよ! 優秀すぎます」


「ま、優秀すぎるよなあ。だが、子供だ。あまり騒ぐなよ」


「はい。わかってます。僕らは助けてもらった側。フェルドさんの言葉に従います」


なんか、ずいぶん素直になってきたじゃねえか。

自分の実力を理解してきたかな?

自分が未熟だって理解することは、いいことだ。

だが、縮こまっちゃあいけねえ。

できねえことが、できねえだけなんだ。

できることはあるんだ。


「ま、よくやったよ。クリスタ、グレーテ。上々だ。ディーターは守り切った。すげえじゃねえか」


「なによ、急に。優しいこと言っても、嬉しくないんだから」


「……うん……」


クリスタは向こうを向いたまま。

グレーテは少し口角が上がっている。

ま、こんなもんだろう。


「じゃ、スズメ、拾って帰ろうや。スズメパーティだ。麦酒が美味いぞ」


「俺たちまだ飲めません」


「おう、そうか。なら、炭酸水を飲んでおけや。仕事終わりの麦酒は至福なんだがな。そりゃあ、もう少しお預けだな」


まだ人生の半分を楽しめてねえよなあ。

ま、まだまだ子供だ。

麦酒の苦みの良さは、わかんねえだろう。

脂っこい、味の濃いヤツに、麦酒がよく合うんだよ。

……なんか体に悪そうな響きだな。

ま、いいさ。

人生楽しもうや!


ディーターたちが不満そうな顔してやがる。

しょうがねえじゃねえか。

ま、これもまた人生だ。

もう少しすりゃ、こっちに来れるんだ。

焦る必要はねえよ。

ゆっくり行こうや。



<<ステータス>>

クリスタ・オイゲン

 冒険者:Dランク(Up!)

 LV:10(Up!)

  生命力:41

  筋力 :34

  魔力 :16

  素早さ:32


グレーテ・クラネルト

 冒険者:Dランク(Up!)

 LV:10(Up!)

  生命力:43

  筋力 :38

  魔力 :15

  素早さ:23


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