領地と王都を結ぶ街道にて2
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前作「ボーっとしている王太子殿下と婚約した侯爵令嬢は苦労する」も公開中です。
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是非ご覧ください。
得体のしれない老人の登場。
しかも人を縦に真っ二つってなによ?!こわっ。
しかし迷っている時間はない。
「我らはジェスター侯爵家の者、ご助力いただけるならありがたい!」
おじい様が大声で応えた。
「ほう、侯爵家の方々であったか。某は塚原卜伝。日ノ本の武芸者じゃ」
そう言った老人は片刃の剣を軽く振り盗賊へ駆け出した。
そこからの光景は今も夢に見てうなされるほど。
老人が剣を振る度に盗賊が縦横問わず真っ二つになっていくのだ。
「なんじゃあれは?」
戦場に慣れているはずのおじい様の声が、体が震えている。
それは良く言えば剣技の理想形、控えめに言って作業のような惨殺劇。
剣技の理想とは一言で言えば「相手を倒せる威力の一撃を敵よりも早く叩きこむ」ことに尽きる。
我が家の騎士団長に言わせれば「やられる前にやってしまえ」ということだ。
言葉にすればそれだけのことだが、実際に出来るわけがないのはお分かりの通り。
相手だって防具を身にまとい、防御し、攻撃してくるのだ。
そんな相手を一撃など無理なのだ。
だからこちらも防御を学び、フェイントや技を駆使して相手を崩し攻撃を加えるのだ。
だが、あの老人はすべて一撃で盗賊を屠っている。
あんなこと、人間が出来ることなの?
「フローリア、あの御仁がやっておることが分かるか?」
「おじい様ほどではありませんが」
体の震えが止まり、今度は興奮気味におじい様が私に声をかけてきた。
おじい様も若いころは騎士団を率いて魔獣狩りや国境争いの紛争に参戦している。
そんなおじい様が若いころから夢見た剣技の理想形がそこにある。
おじい様はツカハラ・ボクデンと名乗った剣士を、まるであこがれのように見つめていた。
盗賊は既に半数が死亡、残りの半数はボクデン様から距離を取っている。
恐怖だ。逃げたくて仕方ないのだろう。
その時ふとボクデン様が視線を反らした。
あれほどの剣士にあり得ない行動。
だがその瞬間それを見逃さなかった一人が振り返って走り出した。
すると他の者も慌てて逃走に移る。
「追わずともよい」
おじい様は罠の可能性も考え追撃を止めるように指示した。
「ふむ、逃げる盗賊ごときを後ろから切っては名が廃るからのぅ」
そんなことを言いながらボクデン様は魔法で剣についた血を浄化していた。
あれだけの盗賊を鎧ごと切っておきながら刃こぼれ一つしない見事な剣。
「お助けいただきありがとうございます。私はゲオルグ・ジェスター、今は家督を息子に譲っておりますが侯爵の位にあった者です」
おじい様が丁寧にあいさつする。
「これは前侯爵様でございましたか。改めて、某は塚原卜伝と申す日ノ本の武芸者にございます」
身長は170cmをわずかに切るくらいか?大柄な当家の人間に比べると小柄に見える。
しかし、小柄に見えるこの老人が先ほどの惨殺劇を、この真っ二つの死体だらけの地獄のような光景を作り出したのだ。
私は緊張しながらご挨拶する。
「私からもお礼を申し上げます、ボクデン様。私はフローリア・ジェスター、ゲオルグの孫で現侯爵ミハエル・ジェスターの娘です」
そういってお辞儀をすると
「おお、日本人形のような可愛らしいお嬢さんじゃ。ご無事で何より」
今しがた大量に盗賊を切り殺した人とは思えぬ、優しい顔。
しかしこの後、この恐ろしい老人が笑顔で私を恐怖のどん底に突き落とす。
「わしの孫娘にようにておるのぉ。どうじゃ、わしのこともおじいちゃんと呼んでくれぬか?」
え?何言い出してんですか。嫌ですけど?
私は心底恐怖した。
これが私と自称祖父ボクデン・ツカハラとの出会いだった。
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また次のお話しでお会いしましょう。




