第60弾
題名「ラビア-天秤のゆらぎ1」
この坂道を下って、最初の曲がり角を曲がったら扉にぶつかる。その扉の先には、別世界があるはず。
ゆらりゆらり 静かなる夕べ
ふわりふわり 落ち行く水面
どこからか歌が聞こえてくる。あの森の中からだろうか。
ゆらりゆらり 静かなる夕べ
ふわりふわり 落ち行く水面
何度も同じ歌を歌っている。本当にあの森の中からだ。あの死にいく森の中から。
あの森が死にいく。そう知ったのは、‘音’がなくなっていくからだ。生きていくための‘音’が少しずつなくなっていったから。どんなに新たな命を吹き込もうとしても、それらさえ、‘音’を絶つ。なぜだかわからなかった。突然のようだったから。原因がわかるまで多くの時間をかけた。しかし、原因がわかった時には‘音’が絶えるしかなく、数少ない救う方法のためには、人手が必要だった。それもとてもたくさん。でも、あの森を知っているのは、私とあの不思議な人だけ・・・。人数を集めるにも、その時間さえ残されていない。まっとうでない方法は、あの不思議な人しか知らない。それなのにあの人はどこにいるのだろう。
穴に落ちることは、今の自分を捨てることだ。と、思うのだが。・・・しかし、落ちなければならない。どうしても必要なことなのだから。・・・だが、どぉうにも気が乗らない。こんなことを言っている時間など、全くないのだが・・・。こればかりは仕方ない。と、言い訳してみる。・・・さて、どうしたものか。落ちなければならない。どうしてもだ。しかし、今の自分を捨てたくはない。・・・いや、今の自分を捨てるなどとは、勝手な想像にすぎない。恐れているだけだ。・・・ああそうさ。恐れているだけだ。・・・どうも気が乗らない。いや、落ちてしまえば、なんてことはないだろう。だが・・・。ええい。ままよ。こんなに長く悩んでいたら、あちこち後が面倒だ。・・・しかし、今の自分でなくなったら、そんな心配はいらないか。・・・あぁ、いやいや、だめだ。いち、にの、さん、で、落ちてしまえばいい。・・・はぁぁ・・・さあ行くぞ。もう、迷ってはいられん。・・・いち・・・にの・・・さん。
有りもしない影を追って、自分を潰すことは、許せることか。・・・答えはNO.だ。潰れるまで他人に関わる必要もなけりゃ、他人の影なんざ、追いたくもねぇ。誰も見向きはしない影のように生きろ。それが俺に任された仕事だ。なのに、有りもしない影を追って、大道芸人の真似をしなきゃならねぇなんてな。最悪だぜ。とっとと‘クロトア’って奴、出てきてくんねぇかなぁ。
・・・結果なんてこんなものだ。うん。・・・さて、と。あれ。あれぇ・・・。まいったなぁ。ないぞ。・・・うん。ここにも入ってないしな。・・・仕方ない、迷わないことを願おう。出発だ。
ゆらりゆらり 静かなる夕べ
ふわりふわり 落ち行く水面
‘音’がない。あの歌声だけだ。どうしよう。
女だ。あれが‘クロトア’か。ちげぇよなぁ。男のはずだしよ。あぁ、早く出てこいよなぁ。
うん。歌。・・・ちょうど目的地の方みたいだけど・・・。あれ。もしかして、‘ユット’かな。‘トトイ’が送ってくれたのかな。・・・あぁ、そうみたいだ。‘ユット’だ。・・・あれ、でも、彼って僕のこと知らないはずじゃ・・・。‘トトイ’ぃ。恨むよ。
‘クロトア’ってあれか。走ってるし。・・・‘トトイ’さんの‘石’身に付けてるし。やっと終わるぜ。
「君が、その、‘ユット’君。」
「当たり。あんたが‘クロトア’。」
「うん。さっきの歌が‘トトイ’からの。」
「おぅ。もう一度、歌えってか。」
「確認しただけだよ。ありがとう。」
「仕事だから。じゃ、な。」
‘音’が戻ってきた。やっぱり、あの人は不思議な人だ。
1・・・です。何弾か後に2が出てきます。2以降あるかどうか、覚えてないとか・・・。
なかったら、ごめんなさい。でも、続きものではないですので、ご安心を。




