↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/14

4.配信外恋愛対策本部

 グループの名前は「絶対に漏らすな」だった。特に仲のよいVtuberだけが参加する、完全非公開の連絡場所だ。普段はコラボの日程調整や機材相談、炎上しそうな発言の事前確認などに使っている。


黒羽ネネ[身バレ?]


海月しずく[炎上しましたか?]


獄道める[妊娠?]


でじた るん[飛躍しすぎです。好きな人がVtuberアンチでした。]


黒羽ネネ[詰み。]


海月しずく[通話を立てます。]


姫宮みみか[詳細キボンヌ(`・ω・´)]


でじた るん[師匠はネット老人会から帰ってきてください。]


 ――姫宮みみか。活動歴十年を超える、Vtuber界の生ける伝説だ。永遠の十七歳を名乗る電脳妖精で、甘い声と古風な語尾が特徴。伸び悩んでいた私をコラボへ誘い、配信のイロハを教えてくれた師匠でもある。


 私たちは何度もコラボし、配信外でもよく通話する。しかし互いの本名も、素顔も、年齢も、住んでいる場所も知らない。それが、この世界の礼儀だった。ボイスチャットへ入ると、開口一番、獄道めるが言った。


『別れな』


「まだ付き合ってません」


『じゃあ別の男を探しな』


「好きなんです!」


『面倒くさ』


 海月しずくが咳払いした。配信では清楚なお嬢様だが、裏では会議の進行役である。


『この件は配信への持ち込み禁止、口外禁止、詮索禁止です。相手の特定も認めません』


 全員が了承した。ふざけてはいても、越えてはいけない線を知っている仲間たちだ。だから私は、学校名も彼の名前も伏せたまま、屋上で起きたことを話した。話し終えると、数秒の沈黙があった。


『ご愁傷さま』とネネ。


『開始五分でバッドエンドじゃな』とみみか師匠。


「終わらせないでください」


『しかし、なぜその男はVtuberを嫌っておる?』


「変な声を出して、ぶりっこしているのが気持ち悪いって」


『偏見じゃ!』

 師匠の配信声が一段高くなった。


『可愛い声を出すために、我々がどれほど鍛錬しておると思っておる!』


『みみかさん、今、何を食べながら話してます?』


『スルメじゃ』


『説得力が死にましたね』


「あと、ファンが同じグッズを三つ買うのも理解できないそうです」


『観賞用、保存用、予備用は常識じゃろう!』


「師匠もそう思いますよね!」


『うむ。妾の夫も毎回三つ買っておる』

 通話が静まり返った。


「師匠、結婚してたんですか?」


『……今のは忘れるのじゃ』

 私たちは互いの私生活を詮索しない。師匠に夫がいてもおかしくはない。


『と、ともかくじゃ』

 師匠は話を戻した。


『その男が嫌っておるのは、おぬし自身ではない。Vtuberという曖昧な像じゃ。少しずつ理解してもらえばよい』


「どうやって?」


 画面共有が始まった。しずくが、わずか二分で作った資料を表示する。


◆対Vtuberアンチ攻略計画

 ①嫌悪の原因を特定

 ②健全な配信者を紹介

 ③偏見を段階的に緩和

 ④正体を開示

 ⑤失恋した場合は朝まで慰める


「会社の会議みたいにしないでください」


『恋愛は長期案件ですから』


「案件ではありません」


『成功すれば専属契約じゃん』とネネ。


「恋人をスポンサーみたいに言わないで!」


 私の恋愛は、その日から人気Vtuberたちによる共同プロジェクトになった。もちろん、リスナーには完全非公開で。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。