↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/14

10.王子様の家

 高瀬家は、駅から十分ほど歩いた住宅街にあった。玄関を開けた高瀬くんは、家の中へ向かって声をかけた。


「ただいま。クラスの子を連れてきた」

 奥から男性の声が返った。


「おかえり。例の好きな子か?」


「父さん!」

 私は玄関で固まった。高瀬くんは耳まで赤くしている。


「違う。いや、違わないけど、今言うことじゃないだろ」

 違わない。


 その一言だけで、頭の中に花火が上がった。少女漫画なら、ここで見開き一ページを使うところだ。だが次の瞬間、リビングへ足を踏み入れた私は、恋の花火をすべて忘れた。


 棚一面に、姫宮みみかのグッズが並んでいた。初年度の限定アクリルスタンド。五周年記念プレート。イベント限定ぬいぐるみ。抽選で十名にしか当たらなかった直筆サイン。壁には等身大タペストリー。中央には、私と師匠のコラボアクリルスタンドまで飾られている。


「す、すごい……」


「引くよな」


「これ、初年度の限定品だよ! 現物、初めて見た!」

 高瀬くんが怪訝そうに私を見た。


「やけに詳しいね」


「あっ。友達が好きで」

 万能だな、架空の友達。


「全部、父さんの。本人が家にいるのに、毎回買うんだ」


「本人?」

 高瀬くんは、しまったという顔をした。そのとき、廊下の向こうから聞き覚えのある声が響いた。


『みんな~! 今日もみみかに会いに来てくれて、ありがとにゃん♡』


 私の思考が止まった。聞き間違えるはずがない。何度もコラボし、何時間も個人的な相談に乗ってもらった声だ。


「今の……」


 高瀬くんは両手で顔を覆った。


「母親」


「お母さん?」


「だから俺はVtuberが嫌いなんだよ!」

 壁の向こうでは、師匠が可愛い声でリスナーへ愛を振りまいている。目の前には、師匠を全力で推す父親の祭壇。そして隣には、師匠の息子。


 点と点がつながった。温感湿布。三個のアクリルスタンド。観賞用、保存用、予備用。


「高瀬くんのお母さんが……姫宮みみか先生?」


「どうして『先生』を付けるの?」


「あ」


「小野寺さん、さっきから詳しすぎない?」

 身バレRTA、最終ステージ突入。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。