表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたおっさん、異世界トウキョウで冒険者スローライフを始める  作者: 犬斗
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/15

第8話 シモキタの何でも屋

 サファーシアとシモキタの繁華街を歩く。

 飲食店が多く、今度行ってみようと思う店がいくつかあった。

 なかなか楽しい。


「こっちだよ」


 サファーシアが街道から逸れて路地に入った。


「このエリアは中古屋が多いんだよ」

「中古か。防具の中古って問題ないのか?」

「うん。ちゃんとした店を選べば問題ないよ。しっかり手入れしてるし、場合によっては新品よりもいいものがあるしね。探すのも楽しみの一つだよ。ふふ」

「へえ、そりゃ楽しみだ」


 そういえば、下北は古着屋が多かった。

 古着屋巡りの若者をよく見かけたものだ。


 サファーシアが一軒の店の前で立ち止まった。

 雑貨屋というか、例えようのない独特の店だ。


「着いたよ」

「ロドリー商店?」

「うん、何でも屋なんだけど、防具も売ってるよ。ロドリーは腕の良いリペア職人でもあるんだ」


 店の前で話していると、店内から男が姿を見せた。

 全身にタトゥーが入った若い男だ。

 髪型はピンクのモヒカンで、めっちゃ気合が入っている。


「サファーシアじゃねーか。どうした?」

「ロドリー、紹介するね。この人はヴィニー。冒険者だよ。今日はヴィニーの防具を見に来たの」


 ロドリーと呼ばれた男が、眉間にシワを寄せながら俺を睨んでいる。

 威嚇しているような目つきだ。


「ロドリーだ。おっさん、サファーシアとデートなんてラッキーだな」

「ああ、楽しいよ」

「ちっ、羨ましいぜ。はっはっ」


 特に悪意はないようだ。

 顔は怖いが、元々そういう顔つきなんだろう。


「で、防具だっけ? 適当に見ていいぞ」

「助かるよ」


 店内はなかなか広く、異国情緒溢れる品物で溢れていた。

 お香を炊いており、オリエンタルな雰囲気を感じる。

 まさに前世の古き良き下北の店という感じだ。


「私が発掘した物も売ってるんだよ。あと、お土産で買ってきたものも勝手に売ってるし」

「サファーシアのセンスは最高だからな。全部売り物になるんだよ。はっはっ」

「だから私は買い付けみたいなこともやってるの。私が各地で見つけたお土産や物産品をロドリーが買い取るの」

「お前の小遣い稼ぎになるだろ。稼げ稼げ。はっはっ」


 仲が良さそうで何よりだ。

 そもそもサファーシアも赤髪で派手だし、お似合いのカップルに見える。


 店内を見て回ると、防具コーナーを見つけた。

 鎧立てには防具一式が飾られ、棚には部位ごとの防具が並んでいる。


 その中で、俺はダークブラウンの鎧が気になった。

 革製の全身タイプだ。

 各パーツの縁には、繊細な彫刻が施されている。

 西洋の鎧なのに、どことなくオリエンタルな香りがする。

 ロドリーの趣味なのだろうか。


「そのレザーアーマーいいだろ? 直しついでに俺が彫刻したんだよ」

「ちょっと合わせてみてもいいか?」

「もちろんだ。鎧は着なきゃ分からんぜ?」


 俺はサファーシアに手伝ってもらいながら、レザーアーマーを装着した。

 サイズは驚くほどフィットしている。

 胸板部分をノックするように叩いてみると、木の板と同じ感触だった。

 硬くて、何より驚くほど軽い。


「これはいいな」

「似合ってるぜ。それなら直しは必要なさそうだな。フルセット、四万でいいぞ」

「うーん、中古だしな。三万ってところだろう?」

「おいおい、修復に手間がかかってんだよ。三万八千だ。これ以上はまからん」

「三万七千なら今すぐ買うよ」

「ちっ! うめーな、おっさん! 持ってけ!」


 レザーアーマーを三万七千エンで購入できた。

 前世でも中古屋でよく値切ったものだ。

 だが、値切るだけでは印象もよくないし、今後の付き合いもある。


 俺は先ほど見つけた細長い革製のバッグを手に取った。

 ベルトに括り付けて、腰に吊るすタイプのバッグだ。


「こっちの革のバッグも買うよ。武器を入れるのにちょうどいい」

「武器?」

「ああ、俺の武器はこれなんだよ」


 俺はスティックを見せた。


「なんだそれ? 鉄の棒?」

「ああ、さっき買ったばかりの武器さ」

「そんな武器初めて見たぞ。おもしれーな。じゃあ、そのバッグは三千エンでいい」


 結局、俺は四万エンを支払った。

 武器と防具で合計十万エンだ。

 当初予定していた予算通りに収めることができた。


「世話になったな、ロドリー」

「まいどー」


 鎧を脱ぐのも面倒だから、そのまま着て帰ることにした。

 シモキタの街は冒険者が多く、鎧を着ている連中も多い。

 俺が鎧を着ていても違和感はないはずだ。


 サファーシアと肩を並べて街道を歩く。

 防具を着ていると不思議と意識が変わる。

 武器も持ったし、なんだか強くなったような気分だ。

 この感覚はカンフー映画を見た後に、自分が強くなったと錯覚して街を歩く時の気分と一緒だった。


「ねえ、ヴィニー。今度私のクエストで、サポートの相談をしてもいい?」

「もちろんさ。いつでも声をかけてくれ」

「ありがとう。私の夢はね、古代文明を発掘して、ウエノの博物館に飾ることなんだ。そうすれば考古学者として名前が残るんだよ」


 そういえば、前世の上野には国内最大の博物館があった。

 こういう部分もリンクしているようだ。


「サファーシアならできるさ。手伝えることがあったら何でも言ってくれよ」

「本気にしちゃうぞ?」

「構わないって」

「やったね!」


 サファーシアが大きくジャンプして、俺の正面に着地した。


「ヴィニー。私バイトに戻るね」

「おー、頑張れよ」

「うん! 今日はありがとう!」

「何言ってんだ。俺のセリフだよ」

「じゃあね!」

「俺もまた牛丼食いに行くよ」

「あはは、毎日来てるじゃん。待ってるねー」


 サファーシアが街道を軽やかに走り去る。

 まるで爽やかな春風のような娘だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ