表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放されたおっさん、異世界トウキョウで冒険者スローライフを始める  作者: 犬斗
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/16

第12話 初の遠征

 クエストのサポート依頼をもらった俺は、打ち合わせのために冒険者ギルドに顔を出した。

 それがまさかシャルロットたちだとは思わなかった。

 世間は狭いものだ。


 挨拶を交わして着席すると、テオドールが驚いた表情を浮かべていた。


「『酒と白百合』は、ヴィニーさんの知り合いでしたか」

「ま、まあね。シャルロットには以前怪我を治療してもらったし、ラズリートには鍛冶師を紹介してもらったんだ」


 俺にサポートの依頼をしてくれたのは『暁の連星』のテオドール。

 デュオで連星なんて、なかなか洒落ている。


 テオドールがテーブルを見渡した。

 どうやら、この自主企画(インディークエスト)はテオドール仕切りのようだ。


「それでは改めまして、今回の自主企画(インディークエスト)はシンジュクダンジョン探索です」


 そう、俺はシンジュクダンジョンと聞いて、このサポート依頼を受けることにした。

 まさかこちらの世界にも、前世と同じあの複雑怪奇な『新宿ダンジョン』があるとは……。

 もちろん前世はただの駅なのだが、上京したての頃は必ず迷っていた。

 いや、上京して二十年経っても、油断すれば迷っていたほどだ。


「ヴィニーさんは、シンジュクダンジョンをご存知ですか?」

「な、名前だけね。ははは」


 サポート依頼を受けてから、俺はギルドの図書室で調べた。

 こちらのシンジュクダンジョンは、発見されてから百年経つにもかかわらず、まだ全てが解明されていないそうだ。


 実は数十年前まで、シンジュクダンジョンの探索に規制はなかったという。

 だが、ろくな装備も持たずに侵入する者が後を絶たず、ついに冒険者カードの所有者のみに限定された。

 それでも、あまりにも広く深いダンジョンは毎年死者を出す。


「現在は、カテゴリーによって探索範囲が決められています。我々インディーズは、地下二十階層まで侵入が許可されています」


 そう言いながら、テオドールが地図を指差した。


「今回は十階層の北部を目指します。期間は移動含めて最長で二週間です。出発は明後日の早朝。費用は各バンド二十万エン。合計四十万エンです」

「はい。こちらが私たちの分の費用です」


 シャルロットが封筒を取り出した。

 金が入っているのだろう。

 ラズリートが物欲しそうな目で追っている。

 きっと武器を買いたいと思っているはずだ。


 なお、サポートの俺は費用を出す必要がない上に、あらかじめ決められたギャラを受け取ることになっている。


 一通りの打ち合わせが終わり、解散となった。


 ***


「まさかメンバーが君たちだとは思わなかったよ。はは」


 俺は『酒と白百合』の二人と、ギルド近くのカフェに来た。

 二人とも今日はもう予定がないという。


「こちらも驚きました。ヴィニーさんがサポートだなんて」


 俺とシャルロットはコーヒーを、ラズリートはワインを飲んでいる。

 まだ昼間だというのに。

 一昔前のダメなバンドマンのようだ。


「ところで、『暁の連星』のテオドール君はその……、信用できるのかい?」

「え? それはどうしてですか?」

「大金を渡しただろう。あまりこういうことは言いたくないが、持ち逃げの可能性もある。金は人を狂わせるからな」


 バンドをやっていると金のトラブルは特に多かった。

 ギャラの取り分で揉めることもあったし、グッズの売り上げを持ち逃げされたなんて話も聞くほどだ。


「もし持ち逃げしたら、あの野郎ぶっ殺すから大丈夫」


 ラズリートが物騒なことを言い出した。


「そういうこと言わないの。お兄さんでしょ?」

「え? お、お兄さん?」

「はい、そうです。テオドールさんはラズリートの実兄です」

「な、なんだって!」


 思わず声を上げてしまった。

 ラズリートには兄がいたのか。

 まあでも、そう言われると確かに顔が似ていた。

 それに、ラズリートは妹属性だ。


 それにしても、テオドールは社交性があり愛想もいい。


「うーむ、お兄さんとは正反対だな」

「う、うっせーな! ぶっ殺すぞ!」

「すまんすまん。お詫びにワインをもう一杯飲んでいいから。ほら、機嫌直してくれよ。はは」


 俺は五百エンをラズリートに手渡した。


「え? ほんと! ラッキー!」


 ラズリートがカウンターに走った。


「ヴィニーさん。ラズリートの扱いが上手くなってますね……」


 苦笑いを浮かべるシャルロットだった。


「今回のお話は、テオドールさんがラズリートを心配して企画したんです」

「なるほどね。いいお兄さんだな」

「はい。妹思いの優しいお兄さんです」

「ん? そういえば、ラズリートはどこに住んでいるんだ? テオドール君もシモキタ所属の冒険者なんだろ?」

「元々は兄妹で住んでいましたが、昨年からラズリートは一人で暮らしています」

「もしかして、ここが地元ではないのか?」

「二人は西トウキョウ生まれです」

「そうだったのか」


 あまり個人情報を聞くのも悪いからこの辺にしておくが、この世界でいう西トウキョウは相当遠いだろう。

 シモキタで冒険者活動をするなら、引っ越すのは当然か。


「家か。そういえば、俺も家を探さなきゃな……」

「そうでしたね。まだ宿住まいですよね?」

「ああ、そろそろシモキタに来てひと月経つし、家を探さなきゃな」


 家のことをすっかり忘れていた。


「シンジュクから戻ったら、部屋を借りるよ」

「一緒にお部屋探しをお手伝いしますね」

「いいのかい?」

「はい。お付き合いします。うふふ」


 その瞬間、気配を感じたのでテーブル脇に視線を向けると、ワイングラス片手に呆然と立ちすくむラズリートの姿があった。


「つ、付き合うだと……」

「ち、違う違う!」

「なんだよ! やっぱり付き合うのかよ!」


 ラズリートがワインを一気に飲み干す。

 瞳は涙で潤んでいた。


 それとは対照的に、シャルロットは呆れ返っている。


「そんなわけないでしょう」

「シャルロット! こんなおっさんのどこがいいんだよ!」

「あのねえ……」


 その後、しばらくの間、ラズリートに説明するのが大変だった。

 どこをどうやったら勘違いするのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ