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第6話 不穏な夜
夜、レオンハルトは書類を手に、執務室の扉を叩いた。
「入れ。」
低く落ち着いた声が返る。
扉を開けると、室内は静まり返っていた。
机に向かうアルベルトは、積み上げられた書類から目を上げる。
「やあ、レオン。今日の入学式は大変だったね。」
穏やかな微笑み。
「兄上……何を考えている?」
レオンの視線は、机の上に広げられた書類へと落ちる。
そこには、妃候補たちの名が並んでいた。
「私の妃は誰になるのか――それを見ていただけだよ。」
アルベルトは指先で一枚の書類をなぞる。
「ヴィオレッタ嬢か?」
「さあ? 本人たち次第だ。」
淡々とした声。
アルベルトは立ち上がり、窓の外を眺める。
今宵の月は、静かに王宮を照らしていた。
「シンシア嬢と、ずいぶん仲がいいようだね。」
背を向けたままの問い。
「元護衛だったからな。」
短く、揺るぎない声。
「レオンが気に入っているなら……私の妃にしてもいいかもしれないね。」
その言葉に、レオンハルトの視線が鋭くなる。
「兄上。」
低く、警戒と怒りを含んだ声。
「冗談だよ。そんな顔をするな。」
振り返った蒼い瞳は、穏やかに細められている。
けれど――
その瞳の奥までは、読み取れなかった。




