6/28
第5話 強がりの裏側
「大丈夫か?」
レオンハルトが心配そうにシンシアを見る。
「大丈夫です。失礼します。」
シンシアはその場を離れた。
誰もいない中庭、桜の下でうずくまる。
(好きで聖女になったわけじゃないのに……)
桜と同じ色の髪、緑の瞳。
それだけで、初代聖女ルミナの生まれ変わりだと言われ続けた旧王国。
たまたま、その容姿で生まれただけなのに。
何の力も持たない、ただの少女なのに。
暖かな風が吹く。
顔を上げると、レオンハルトがいた。
「やっぱりな。」
「……どうして……」
「昔からそうだった。お前は嫌な感情を隠す。人前では絶対に見せない。」
どこか懐かしむような声だった。
「……レオン」
思わず、昔のように呼んでしまう。
(もう、あの時とは立場が違うのに)
聖女と護衛から、
貴族令嬢と王族へ。
「……俺の前では強がるな。」
一歩、距離が近づく。
「俺は――お前の騎士だ。」
シンシアの心が、ゆっくりとほどけていく。
「……ありがとう、レオン。」
胸の奥が、少しだけ軽くなった。




