第4話 向けられる視線
「どういうことですの!?」
入学式終了後、ヴィオレッタの高い声が廊下に響き渡る。
「王太子妃候補の私が、Bクラスなんて!」
さきほどまでの明るさが、一瞬で凍りついた。
ゆっくりと、その視線がシンシアへ向けられる。
「……元聖女様は、ずいぶんと優遇されていらっしゃいますのね。」
胸が、ぎゅっと縮む。
周囲の視線が痛い。
(また、その呼び方……)
「言葉を選べ、ヴィオレッタ嬢。」
レオンハルトが一歩前に出る。
「事実を申し上げただけですわ、レオンハルト殿下。ほかの皆様も、そう思っていらっしゃるのではなくて?」
周囲の視線が一斉にシンシアに向いた。
その時――
「十分です。」
低く、静かな声が割って入る。
アルベルトが現れた。
「クラス分けは、私が最終的に決定しました。
ヴィオレッタ嬢には、Bクラスを任せたいと考えただけです。」
「……アルベルト王太子殿下が、直々に……」
ヴィオレッタの頬が赤く染まる。
「期待しています。」
微笑みは柔らかい。
だが、蒼い瞳の奥は読めない。
まるで、何かを見透かしているようだった。
「光栄ですわ! 必ずご期待に応えてみせます!」
ヴィオレッタは深く一礼し、足早に去って行った。
張り詰めていた廊下の空気が、ようやく解ける。
その時。
アルベルトの視線が、ほんの一瞬だけシンシアを捉えた。
何かを探るような瞳。
だが、シンシアはその視線に気づくことはなかった。




