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第5話 残るぬくもり
目が覚める。
涙が、頬を伝っていた。
(……アルト。)
まだ、温もりが残っている。
優しく見つめる眼差しが、離れない。
あの人は――
「……シア」
浮かんだのは、アルベルトの声だった。
その瞬間。
(……違う。)
小さく、首を振る。
手に残っていた温もりは、姉のものだった。
あの人とは、違う。
わかっている。
それでも――
胸の奥が、静かに痛む。
午後。
クラリスに誘われ、二人きりのお茶会が始まった。
「シンシア、大丈夫だった?」
「……クラリス、大丈夫です。」
微笑む。
「それなら良かったわ。エリシア様も心配していたの。」
カップを持つ手が、止まる。
「……エリシア様が?」
「そうよ。ご自身も体調が優れないのに、周りへの気遣いも完璧で……」
話は止まらない。
「お優しいからか、アルお兄様も度々お見舞いにいっているのよ。」
カップが、わずかに揺れた。
言葉には出せない。
胸の奥が、何かを訴えようとしている。
「シンシアは、エリシア様のことどう思う?」
無邪気な笑顔。
「……とても、お優しくて素敵な方だと思います。」
答えられた。
けれど――
言葉と心は、重ならない。
(……本当は。)
心が、冷えていく。




