神速
「ゲンくぅ〜ん。今まで君は戦果を挙げてはいるが誰かを殺すのは本当に最悪の事態の時のみ〜。そろそろ、本気でやってくれないかなぁ。ぼぉくたちは君等の偽善活動に構う暇なんてないんだよぉ。」
戦争肯定派、右翼。王の側近、ハナゲ・ウデール。
「ウデールさん。我々は一度、対話の時間を作ったほうがいいと思うんです。戦争なんて向いてなどいない。南の勇者の時だって!ちゃんと作戦を練り、戦えていれば…ローリエさんのイーストでの反乱も!そもそも、もう戦う理由なんて……」
「あ゙ー!うるさい!うるさいぞぉ!何なんだそうやって、人は殺せないと!気絶させるだけなんて!速いおかげでできるだけだぁ!勇者は所詮ッ兵器ぃ!ぼぉくたちに従っていればいいだけだぁ!」
「ハナゲ。言葉を慎め。」
ウデールさんが暴論を吐いていると、陛下がそれをとめる。
「これはとんだご無礼を。ゲン君もすまなかった…。イーストが勝ち続けていたこともあり、ぼぉくは焦ってしまった…。」
また心にもない言葉を…こんな会議の毎日でイーストとの戦争も微妙な感じになった。一体どうしたらいいんだ…。
「皆疲れているだろう。今日はこのぐらいにしておこう。」
陛下の言葉で意味のない会議が閉じられた。
「よぉーし、準備は整った。後は殺るだけ…。」
一人の青年は不穏な笑みを浮かべながらフードを被り路地を出た。
「ジャストッ!ガード!」
タイグはクシュに向かう攻撃を守る。
「行きますっ!」
エゴンは素早くボスの足元に向かい足を切断した。
クシュは拳が巨大化し闘気のようなものを纏う。そしてタイグの盾を思いっきり蹴り距離を詰める。
「トップスピード、トップアタック……。」
ナオはクシュへとバスをかけた。
「バーストクラッシュ!!」
クシュの渾身の一撃がボスにダメージを与えた。
「撃つ。コスモ・フレア。」
マドーは魔法を叩き込み、ボスを一気に削る。
「ゲン!行ってこぉぉぉい!!」
タイグは俺を高くに飛ばした。
「ギガ・ラッシュ!!」
俺はとてつもない速さで大量の斬撃を浴びせる。ボスはみるみるダメージを負い消滅する。
「よっし。みんなお疲れ様。今日はこのくらいにするか。」
「さっすが、ゲンさん!素晴らしい剣でしたッス!」
クシュはぴょんぴょん飛びながら俺を褒めた。
「正直俺のダメージはそこまでだよ。クシュの一撃があったからこそ倒せたんだ。ありがとう。」
「お前ら、謙遜しすぎだ!もっと自信をもつんだ!俺のようにな!ガハハハ!」
タイグは盾を背負いながら言った。
「今日もたんまり、報酬。」
地上に戻った後、ギルドで報酬を貰ったマドーはドヤ顔を決めながら言った。
「今日は久しぶりに飲みますか?」
エゴンは少し前を行ったあとに振り向き言った。
「それ…したい……かも。」
「ガハハハ!俺はいつも酒を飲んでるぞっー!ま、勿論参加だけどな!」
ナオやタイグは賛成した。
「じゃあ、久しぶりにみんなで飲むか!」
他のみんなも賛成し、飲みが決まった。
「じゃあ、夕暮れにいつもの所で。」
マドーは集合場所を指定した。
「そうですねッス。」
どうやらみんなは賛成らしい。
「うん。じゃあ、それでい……、って……」
あの瞬間は忘れられない横を歩く"彼女"が終わるその時、フードを被った者が突然現れ目の前を赤くした。
「…………は?」
グサッと人?が刺さる音がした。この音を俺が聞くのは戦場とダンジョンのはずだった。
………なのに、どうして………。
「マドー……?」
「ゴホッゥ゙!」
マドーの胸からは血が大量に流れ、吐血をしていた。こんな量の出血を目の前で見たのは初めてだった。
いつもは……戦場で……他の兵士が斬り倒した死骸を、見るだけだった。それに、なんで急に刺された…?どこから来た…?
「マドー!!ナ、ナオ!急いで回復を!!」
「は、はい!」
いつもオドオドしているナオはいつも以上に慌てていたが、治療はいつも通りだった。
「お、おい…ゲン。今、マドーを刺した奴……!お前のようだったぞ…!いつも見ているから分かる…!あれは間違いなく!お前の神速だった!」
北の勇者、ゲン・ダリア。絶加、神速。
「嘘だろ…?い、いや!ひとまずマドーだ!マドー!おい!マドー!返事してくれ!」
辺りがざわついていた。それに構わず俺はひたすら、大声でマドーの名を呼んだ。
「ゲン。好き…だった、私…。」
「マドー……!」
マドーの手がだんだんと冷たくなっていく、こんな身近な、大切な人の死を感じるのが堪らなく恐ろしかった……。
俺のように速かった……?そんなのどうやったんだ…。姿を消す絶加か……?でも、タイグが言うのだから間違いない……。
俺の絶加が真似された……?そんなのたった一人しかいない……!数年前に召喚された今、噂の東の勇者…!でも、あいつの絶加の条件は対象への身体的に接触……。
ーーあ、あの…僕、北の勇者様みたいに強くなりたくて憧れなんです!握手してもらえませんか!ーー
あの時の青年…?!あいつがっ……!
「ゲン君……。もうい、いいい息がぁ……!」
「ナオ、もういい。」
俺は肘をつき、目の前で起きた絶望を受け止めきれずにいた恐怖、辛み、怒り、悲しみ、情緒がぐちゃぐちゃでもう…………………
ーーーダメかもしれない。
一人の大切な者を失い、ゲン・ダリアはとてつもない喪失感と人生で感じたことのないような怒りの感情が込み上げていた。その手で何度も地を殴り続けており、手は震え、血にまみれているのが多くの人に目撃された。このような莫大な感情によりゲン・ダリアのリミッターが完全に壊れる。そこには戦場にて敵兵士を気絶させるだけという生温い考えは
ーーーーーーーもうない
後にこの事件は東の"神速"事件と呼ばれ、イーストとノースの戦争を、運命を大きく変えるものとなる。




