正体
国王連行から数週間。イーストはノースの侵攻をなんとか食い止めることに成功した。
「現在の戦況はどちらかと言えば劣勢ですが、被害は最小限に留められています。が、蒼炎の乱での住宅の崩壊、物資援助などにより兵士への配給用の資源も余裕があるとは言えません。早急に終戦へと向かって行きたいです。」
コウさんは現状を語る。確かに今の状況ではいつまでもつかは分からないな……。実際、俺も戦地に出たがノースの兵士は出来上がっていた。一つ一つの技の精度が他の国とは桁が違う。
「誰かを送りたい所ではありますが…マーガレット様は…。」
ワルパフさんが口を開くと、少し空気が重くなる。蒼炎の乱にて絶加を無理矢理使い続けたマーガレットさんは途中で気を失い、今も目を覚ましていない。
「コウさん。一ついいですか。」
俺はこの空気を切るかのごとく手を挙げた。
「アズマ君。どうかした?」
「ダンジョンに行かせてください。」
周囲がざわめき始めた。国の見かけだけのお偉いさん方は特にだ。
「おい、アズマ……それは流石に…。」
「理由は?」
シオンさんも流石に文句を言おうとしたがそれをコウさんは遮る。
「"本来なるはずだった者"に、会いに行きます。」
「アズマと言われる人のことかな?」
コウさんはもう答えがが決まっているような柔らかい笑顔で尋ねた。
「はい。もしかしたら俺が知る人なのかもしれないので。」
ーーいや…"知ってる"よりももっと深い関係が…
「分かった。着いてきて欲しい人は?」
「リンとシンさんです。あの時と同じような物が再現できれば、もしかしたら…。」
俺はあの時を思い出しながら言う。
「ということでリン、シンさんお願いします。期限は今日、この時間から明日の日が沈む前までだ。こちらは何とかしてみせる。思う存分やってこい。」
「ありがとうございます!」
俺はリン、シンさんと共に部屋を後にした。
「アズマ、リン様行こうか。」
シンさんの先導でダンジョンへと歩みを進める。
【世界の■■をオ→イ※¿スカ?】
『東……!■こ¿にィ↓ィどこにどこにどこにどこにどこにどこにどこにどこにどこにどこにどこにどこにどこにどこにどこにどこに………タ#■イ、トッ……』
【■■■に置くことにセイコウ!■の勇者デス】
『■ー■ョ■■ッ■を開始します。』
「ここが四層…。あの時の異常事態があった場所…。」
俺はボス部屋の扉を開いていく。軋む音、金属が錆び少し立て付けが悪くなっている。
「何もなければ、フラワーペアレンツがいる…。」
シンさんは呼吸を整えながら剣を構える。
「グオォォォォ!」
「フラワーペアレンツですね……。」
リンは少しほっとしている様子もあったが残念そうな顔をしていた。
ーーあれは…?ーー
「絶加を使えますか?」
俺はシンさんに言う。
「あ、俺?」
「はい、お願いします。」
「反転…!」
シンさんが絶加を使った途端、辺りが揺れ始める。
「リン様大丈夫ですか?!」
シンさんはリンのもとに駆け寄った。
「ありがとうございます。」
リンは礼を言った後、辺りを見回す。
東の現在所持中の絶加。倍、無限魔力。倍により強化された視力と感覚が東に力を与えた。
「見える。」
「アズマ様何が見えるんですか…」
リンが何か言おうとした時、脳みそに何かが一気に流れ込んできた。流れてきた情報で脳内が整理されていく。
「神層は本当に神層なのか?否、日本と異世界の狭間…?それのゲートが…ダンジョン…。」
それなら前回、神層だと思っていたのは別の場所…?
【面白いこと言ってくれるね。東。】
「■?!お前!話をさせろ!」
【そうだね。じゃあ、おいで。】
足元にに魔法陣が現れ光始める。
「アズマ!離れないように!」
シンさんはこちらに来るよう促してくれた。
「アズマ様!」
「リン!」
俺はリンの手を握りそのまま転移した。
「シンさん、リン…?」
【大丈夫。安全な場所に飛ばした。】
背後から声が聞こえた。
「な、お前!」
俺は少し後ずさる。
【君はまだこれからやることがあるだろ。言いたいことがあるんだろ?手短に済ませたほうが良い。だろ?】
■はウインクをした。いや、もういいか。
「お前はいわゆる神なんだろ?」
【ふぅ〜ん】
ーーそして
「失踪した俺の父親でもある。間違ってるか?」
【そうだな。】
あっさり認めた…!コイツが俺の父さん…こんな所に…
「そりゃあ見つかんないよ…!」
【すんごい顔してるぜ。そんなに泣くなよ。】
話したいことがある筈なのに…言葉が一つも出てこなかった。涙は出るくせに意味がわからない…。
俺はなんとか涙をこらえながらようやく言葉を口にした。
「強くなりたい。この戦争を終わらせたいんだ。」
【俺がお前に言った絶加のこと覚えているか?】
「二回しかコピー出来ないけど、効果は十乗ってこと?」
【あれは俺の絶加。強化祝福だ。お前は俺の強くなりたいかという問いに対してなりたいと答えた。それによってギフトが発動しコピーは強化された。そのギフトは返すことも可能だ。】
父さんは自分の絶加や行動についての説明をした。
「ギフトを返したら、どうなるんだ?俺の絶加。」
【コピー数は無制限になり触れた者の絶加をほぼ完璧にコピーする。むしろ使いやすくなったかな…。】
「確かにそれは言えてる…。」
【当たり外れがあるんだよ!】
父さんは子供みたいに言った。
「じゃあ、そのギフトは返すよ。」
【分かった。】
父さんは手を出し、俺から何かを吸収していった。
「ありがとう。そして最後に日本には…帰れる?」
【帰れる可能性はある。一応、帰還魔法があるんだが莫大な魔力が必要でこの異空の狭間をとてつもない速さで抜けないといけない。そして使ったことがないから、安全は保証できない。ま、一応魔法とここの行き方だ。好きに使え。】
「父さんはどうするの…?」
【俺はここの前の部屋。俺が言っていた神層を守らなきゃいけないんだよ。だから帰るなんてしばらく無理だな。だからお前が存分に使え、そして自分の好きなように決めた道を、覚悟を、曲げないように突き進め!】
「父さん!」
父さんとの距離が遠ざかっていく。もっとあの人と話を…。
「アズマ様?!大丈夫ですか?」
リンは心配した様子でこちらを見つめていた。どうやら神層の安全圏で寝ていたらしい。そして二人は父さんとは出会っていないらしい。
コピー無制限…。良い物くれたな。
「大丈夫。それより、戻ろう。」
東の表情は雨上がりの空のように晴れ渡っている様だった。




