本来なるはずだった者
イースト国王引き渡し……当日。
一歩一歩がブレることなく歩く音が揃っている。一名が先頭を歩きその後ろに十二名の人達が列を作って
行進していた。そして、その列は一切崩れない。
セントラル、央国監査署。
先頭を歩く男、央国監査署署長ケビシタ・ダーキ。
王による勇者無断召喚という最上級の違反行為、グレード・ファイブにより早朝、イーストの地に足を踏み入れる。その眼光は鋭くただひたすらに王のいる城を睨みつけていた。
「あのー話って何ですか?」
昨日、明日の早朝に王の間に来いと言われたので王のもとを訪れていた。そこにはリンの姿もあった。
「早速始めようか。アイツらは行動が早いと有名だからな。」
そうして王は口を開いた。
「本来、二十六代目東の勇者はシオンではなく別の男になるはずだった。」
「え、それに俺等がどう関係して…。」
「そうですよ、父上いったいどうして……。」
俺もリンも疑問が浮かんだ。
「それを今から話すんだ。落ち着いて聞きなさい。」
王はやれやれみたいな感じを出しながら言った。
「本来なるはずだった者。そいつは私の相棒であり、当時戦争を終わらせるほどの力を持っていた。そして、アズマ君。君と同じく召喚された。」
それって…もしや、
「日本に帰れるのか…?」
「すまないが私はその方法は分からない……。アイツなら分かるかもしれないが……。」
王は話始めたくせに少し渋っていた。
「その人の名前は?今どこにいるんだ?」
俺は質問攻めしていった。今まで何も情報がなかった帰宅方法についてヒントが得られるかもしれない。
「アズマ。」
「え、それ俺…。名前は…?」
「君と同じで、名はアズマ。アイツはそう名乗っていたよ。」
一瞬、時が止まった。あれ、シオンさんが東の勇者になったのって何年前だっけ…。
「俺と一緒か……。ま、偶然かもだけどな。で、場所は…?」
俺は王の回答をせかす。
「アズマはダンジョン攻略中に失踪した…!」
王は顔を下に向け悔しそうに拳を握っていた。
「私の眼の前で……」
空気が重たくなってきた中、外で話し声が聞こえた。
「セントラル、央国監査署署長ケビシタ・ダーキである!グレード・ファイブ事項によりイースト国王の拘束に馳せ参じた!」
「イースト護衛騎士団団長、ワルパフ・カイゴウだ。陛下はただいま、ご子息との最後かもしれない時間を味わっています。どうか、後五分だけでも時間をいただきたい!」
セントラル、もう来たのか…。外ではワルパフさんが時間を稼いでくれているらしい。俺とリンと王が話すための時間を。
「分かった。五分だけだ。それ以降はセントラルへの反逆行為とみなしイーストへの攻撃を開始する。」
「ご猶予いただき感謝する…!」
「で、今さら何でこんな話をしたんだ。」
もういないかもしれないのにこんな話をしたのかが俺には訳がわからなかった。でも、もしかしたら■なのか…?
「以前、二人が言ったという神層もしかしたら、そこにいたのがアイツなのかもしれない。アイツは剣の才能も魔法の才能もあり、私を常に上回っていた。それにオリジナルの剣技を作り出していた。」
「アズマ様。だから、私達は魔法が上達したってことになりませんか…?」
「確かにそれもあるな…。やっぱり、行ってみないとだめなのかもしれないな…。」
「それは君達に任せる。私にできるのはこれまでだ。イーストを民を守ってくれ。何をするのも自由だ。君達には未来がある。そう言ってはなんだがこの戦争も君達にかかっている。どうかこの戦争を終わらせてほしい…。」
王が最後に話しているとドアが開く音がした。
「時間のようだね。アズマ君。召喚を促したのは私だが故郷に帰れることを切実に願っている。リン、コウの手伝いをしてほしい。協力して頑張りなさい。」
「ヒラト・イースト。グレード・ファイブによる条約違反で連行する。」
「父上!父上ぇ!」
リンは叫ぶが無情にもセントラルの人達は足を止めずに部屋を後にする。王は優しい笑みを浮かべ静かに連行されていった。
神層にあるかもしれないのか、手掛かりが…でもどうやって行けばいいんだ…?
俺はその夜部屋で考えていた。王の相棒のことを。
いや、もしかしたらそんな事は後になってしまうかもしれない…。
国王連行、蒼炎の乱によりノースの軍事侵攻が一気に進んだらしい。蒼炎の乱による物資、戦力不足で押されているらしい。
「北の勇者…!お前は殺してやるからな…。でもそれなら、やっぱり神層を見つけたほうがいいかもな…。」
蒼炎の乱による被害。
負傷者、数名。死者。一人。
物資の不足、街の損壊。
イースト王の連行。
これにて蒼炎の乱編が終了です。予定より少し長くなってしまいましたが書きたいことも書けたのでよしです。次回より北の勇者編に入ります。アズマの選択、復讐の行方がどうなっていくのかお楽しみに。




