最後の舞台
「あれ、東の勇者とリン様がいると聞いたんだけど……。」
『チギリさん!すいません!アズマ君達がローリエを食い止めてくれて…漏れがないかのチェックだけお願いします…!』
「コウ様は気にすることないよ。それだけ優秀だなんて頼りがいがある。こっちは見とくから自分の使命をまっとーしな。」
『ありがとうございます!』
コウ様との一連のやり取りが終わり軽く伸びをする。
「あたしの出番はお預けかな。てか、もう夜明けが……夜明け…?!」
イースト国王引き渡しまで残り、一日……。
イースト第三、第四ブロック、ウト、サーストの四箇所以外は目立った強敵は見つからず、首謀者ホーノ・ローリエの戦闘不能により魔物達は消えていった。街には焼け跡や損壊が多く見られ、復興までにしばらくかかりそうだ。
「皆さん、今回起こった蒼炎の乱への素早い対処ありがとうございました。冒険者の方にもご協力頂いて、ありがとうございます。今回、市民の負傷者はゼロですが我々の中には数名の負傷者がおり……使者は一名…。イースト第一王子、モロ兄さんがっ……。皆さん、申し訳ないっ…。これは私の不手際ですっ……。」
コウさんは悔しそうに手を握りしめていた。全身が小刻みに震え、今にも泣き出してしまいそうな状況だった。
「コウ様、あなたの責任だけではありません。どうか、一人で抱え込まないでください。あなたは国のための最善策を行おうとしただけです。」
ワルパフさんがフォローに入る。確かにそうだ、コウさんの責任となるのはおかしい。
「みんな、申し訳ない…。ひとまず、今から一時間後に市民の前で陛下のお言葉を頂きます。ワルパフさんとシンさんにはその準備を皆さんは各自の役割につくようお願いします。」
「はい。」
皆の声が重なるが、とても静かで重たい雰囲気だった。
「はぁ、なんか疲れたというかまだ怪我治ってないし…。」
リンは王女の仕事的なのがあり、シオンさんは第一支部長になるしで、怪我をしている俺はできることがなく王宮を歩いていた。
「あ、アズマよ。少しいいかね。」
ぼっーっとしながら歩いているとすれ違った国王が話しかけてきた。民衆の前へと向かう途中なのだろう。
「どうかしました?」
「召喚したこと、申し訳ない。それと…明日の明け方すぐに王の間に来てくれ話がある。とても大事なことだ。頼むぞ。」
「えっ、ちょ…それだけ?!です…か?」
もっと大層なことを言われるのかと思ったら一方的に言われただけで困惑してしまった。
「あぁ、それだけだ。絶対に来てくれよ。」
「え…は、はい。」
王はそう言って、前へと進んだ。その顔には王としての多大なる覚悟が垣間見えていた。
私は廊下を進み、いつも演説をする場へと向かった。長い国王生活の終わりを迎えるために。
「陛下、よろしくお願いします。」
ワルパフは相変わらず礼儀よく頭を下げた。
「ありがとう。ワルパフ。」
「陛下。」
シンは私の名を呼び頭を下げた。シンも相変わらずの礼儀の良さだ。
「よろしく頼むぞ。」
私はシンの頭に手を乗っけ動かした。
「はい。」
シンは優しい笑みで応えた。私も微笑み返す。
「これが最後の仕事になるのだろうな。二人とも今までありがとう。本当は他の子たちにも言いたかったが、そこまで贅沢な時間は残されていなかったからね。ワルパフ。シン。今日もよろしく頼んだよ。」
「「お任せください。」」
二人は微笑んだ。
「ありがとう。」
私は愛する民の前へと立つ。いつも行っていることなのに今日は何故だが新鮮で、少しの不安と焦りの気持ちが浮かんでいた。でも、大丈夫だ。いつも通りの二人が後ろにいる。二人だけじゃない。みんな、温かくて心強い。
私は音声拡張魔法が機能しているかチェックし大きく息を吸って口を開く。
「我が国の民達よ!今日は集まってくれてありがとう!」
これが私の最後の舞台。晴れ舞台ではない、何を喋ったか、あまり記憶には残っていない。だが、今までで一番清々しいものだった気がする。
「どうか、これからもイーストに力を貸してほしい!どうか、どうかお願いします。そして最後に…イーストに!栄光あれ!」
どうだったかは明らか……だったのかな…。最後に聞こえたのは私自身の上がった息と皆の歓声だけだった。




