睨めっこ
「いやいやいやいや……ローリエが花っていう理由で裏切り者判定って……確かに蒼炎はそうかもだけどまだ、別の人の可能性だって……。」
俺はコウさんから来た通信に疑問を浮かべた。
『そうだけども…エヌさんからの情報からも考えるとこのかのうせいがいちばんたかいんだよ……。アズマ君。取り敢えず、ローリエさんがいれば拘束をお願いします。』
「分かりました。」
俺は通信魔法を切った後、目の前の仲間に目を向けた。
「ちー…。」
「アズマ様!何してるんですか!早く倒さないと……。」
リンはちーを倒すのを促す。
「アイツはさぁ……ナミと同じ時間を過ごした"仲間"なんだよ……。俺にはそんな事できない……。」
「フンギィィィイ!」
ちーは構わず攻撃をしてくる。
「ちー!頼むよ!戻って…こい!」
俺はちーから距離を取る。
「チャンスだ。殺れ。」
「グオォォォ!」
誰かの合図でちーが雄叫びをあげた。この声は……。
「ローリエ様……。」
リンは現実を認めたくないような絶望と失望が混じった表情で呟いた。
「ちー!」
突撃してきたちーの名を読んだ。するとちーは動きを止めた。
「ほんぎゃあ。」
「ちー。戻ったのか……?」
ちーはニコニコの笑顔で俺にゆっくり距離を詰めた。
「東の勇者を殺れぇぇぇ!」
先程まで余裕な表情をしていたローリエさんが狂ったように叫びだした。
「ギャァァァ!」
ちーはローリエに突進して遠くに突き飛ばした。
「ちー!サンキュー!」
俺はちーとグータッチした。
「ギャァァァ!」
グータッチをした直後、とても速い蒼い炎がとんでくきた。それに反応できなかった俺は反応できなかった。
「ちー!」
次の瞬間、ちーは俺にきた攻撃を庇っていた。
「は?」
目の前にいたのは先程までは信じていたホーノ・ローリエだった。
「いやぁ~零番がごめんね、アズマ君。まさか、庇うとは思っていなかった。」
ローリエは俺とちーを嘲笑うかのように話す。
「お前…何で……。」
俺はアイツを睨めけ剣を強く握った。
「アズマ様!ダメです!今、彼にかまってる暇は…!」
リンが声をかけるが俺の注意と殺意は今アイツにしか向いていなかった。
「ちょっと待ってよ、アズマ君。私は君を殺そうとしたんだ。これは零番が勝手に庇っただけで私に非はない!」
アイツはニコニコとムカつく面で言い訳をする。確かにちーは俺を庇ったけどそれを言い訳にするのは絶対に違う。それに……
「誰が零番だ。」
「そんなの君がちーとか言っている個体だ。私が一番最初に従えた個体だというのに裏切って…本当に困った……。」
ローリエは頭を抱えた様子だった。何で…アイツがそんな様子を取れるのかその意味が全く理解できなかった。
「ピギィィ……。」
ちーが立ち上がった。
「ちー?!ダメだ…!逃げろ!」
ちーはアイツに襲いかかる。
「君はもういらない。お疲れ様。」
炎の剣でアイツはちーを斬り捨てた。するとちーは消え始める。
「おい、辞めろよ……なんでいっつも……俺の、ここでできた仲間を殺す?!ふざけるなよ!こんな、世界でできた大切な人が死ぬ!おかしいだろ!ホーノ・ローリエ…!絶対に、殺す……。」
「ハハッ、いい顔すんじゃん。」
「アズマ様……。」
リンは東を心配した様子で伺いつつも、止めに入ることはできなかった。大切な人を失う苦しみを知っていたし、東が仲間をどれだけ大切に思ってきたかも知っていたから。
何より街にはびこる魔物の対処に追われていた。
「イラフ!まだ着かねぇのか?」
「もう少しです!何ならもう入っていますけど、避難状況確認があるので無闇に行ってはダメでしょう!」
イラフは俺の質問に少し呆れながら答えた。
「どこかで助けを求めてる奴がいるかもだろ!俺は先に行く!」
「行くって…ここは空ですよ?!」
「構わない!」
俺はドラゴンから飛び降りる。
「あ!ちょっと待っ……はぁ、もう行っちゃったし……。」
数分後、裏切り者がホーノ・ローリエであることが判明する。
「ローリエ……。」
私は目的地に着いた頃、コウ様からの伝達に衝撃を受けた。
「でも、ワルパフちゃん、コウちゃん?彼の目的って何なのかしら♡」
『それを今、考えているところなんですけど…。』
「では、コウ様。何か分かればお願いします。」
『はい。お二人ともお気をつけて。』
コウ様からの通信魔法が切れる。ローリエの裏切りというのは相当ショックだが一度忘れ、街の避難等に専念しようと決める。
「オカママ、分担していくぞ。」
「かしこまり♡」
私とオカママはそれぞれ別の道へと走っていった。
「今の王が代わるという状況から市民の不信を煽る…?都市機能の壊滅…?それもあり得る……。でも、目的が分かったところでな……クソッ、人が足りない……。」
『コウ?!聴こえてる?』
現在、旧サウスで仕事をしてもらっている姉。マーガレット・イーストから通信魔法がきた。
「姉さん、何かあったの?!」
『さっき言ってた変な魔物の特徴に似た魔物がいたって!目撃情報が!』
「あー、そうか……!クソッ!見落としてた……。あの人の狙いは……潤沢な資源が揃い近くに自然も多い。旧サウス……!通信魔法の弱点である近いところの通信を優先するのを使って都市での混乱による緊急会議、報告の通信により受信時間を遅らせた……!姉さん!今どうなってるんだ?!」
気づくのが遅かった……。俺は急いで通信を取る。
『今のところ……私の絶加で全員無理矢理動きを止めてるけど……そろそろ発動できる自信ないよ……。』
完全にやられた……。ここや戦力をどうにかするみたいなことだと思い込んで旧サウスについての考えが抜けていた……これ、もしかすると旧ウエストも……。いや、あそこには今兄さんがいるから大丈夫なはずだ……。それより今は姉ちゃんのところに助けを出さないと…。
「エヌさん。お願いできますか…?」
「勿論。彼の思い通りにさせませんよ。」
「ありがとうございます!こちらでも冒険者ギルドなどに人を集めてもらえないか聞いてみます。」
「お互い様頑張りましょう。」
エヌさんは親指を突き立てた。
「はい!」
俺も親指を突き立てエヌさんを見送った。
怒りと蒼炎そして疾風が飛び交う歴史的大反乱の本番がこれより始まろうとしていた。




