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望月は最初から馴れ馴れしかった。挨拶の後、なんだかあまり話す気分になれなかったので黙ってゲームを再開したのだが、望月は話しかけてきた。
「佐畑さん、うまいっすね。そこ、昔詰まってたところっすよ」
「あ、佐畑さん、そこの上、隠しスターありますよ。そこです。土管の上です」
「佐畑さん、火の玉は下をくぐってよけるんですよ。そう、そうです。それです」
僕はゲームをしていながらだんだんめんどくさくなってきた。それに、どうして僕を「さん」付けで呼ぶのかわからなかった。それも少し不思議だった。
しびれを切らして僕はコントローラーを置いた。話しかけられるのが嫌だという態度も示したつもりだったが、望月の顔を見た時、こちらの態度に全く注意を払っていないのがわかった。僕はリモコンを取って、チャンネルを変えテレビ番組をつけた。昼間のバラエティ番組がやっていた。「ギャハハハ」 テレビの中の笑い声がうるさかったので、音量を下げた。
「望月さん(相手にならって「さん」付けをした)は…あれですよね。あんまりうちのサークル来てないですよね? …何か理由でもあったんですか?」と僕は尋ねた。
もっとラフな口調でもいいかと思ったが、思ったよりも丁寧な言葉遣いになってしまったと感じた。望月は何も気にしていないようだった。
「いや…理由というか…。まあ、忙しかったんで。忙しいじゃないすか、色々。俺、色々やってるんすよ。佐畑さんは知ってると思うけど、俺の親父、大きなグループの会長で、その手伝いとか、色々任されたり、一人でやってみろって言われたり、結構大変なんすよね。色々あるんすよ。肩書き的には実はもう社長だったりするんですけど。で、大学なんかに来てる暇があんまないんすよ」
その口ぶりには「普通の大学生」に対する軽蔑が感じられた。僕は相手の軽蔑を感じながら話を継いだ。
「へえー。忙しくて、大変なんですね。僕なんて普通の大学生なんで、暇で。ここでマリオしてるぐらいなもんですよ」
「あ? そうっすか? 佐畑さんのうちは、うちみたいじゃないんだ? …意外だなあ。でも、楽でいいですね。俺、色々やる事があって。今日も、まあ、一応、サークルに所属しているって事だから、いっぺん部室にでも行ってみるかって。それで来たんです。近くに寄ったついでにね。ただそれだけなんすけどね。それにしても汚い部室だなあ…。汚いっすよね。これとか」
望月はそう言うと、座っているソファをバンバン叩いた。埃が宙を待ったが彼は平気らしかった。僕は相手の挙動を見て(あまり関わり合いにならない方がいいタイプだな)とだけ思い、早いところ、部室を出ようと考えた。しかし部室を出る前に、望月と長々話す事になってしまった。




