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 望月健に関して、最初僕は名前だけを知っていた。同じ大学、同じサークルに入った所までは知っていたが、どういうわけか彼はサークルに姿を見せなかった。名前だけが在籍状態で、僕はサークルのメンバーから噂だけを聞かされていた。僕達はまだ大学一年生で、授業やサークルというものがどういうものか見極めようとしていた。

 

 「望月君って凄いお金持ちらしいよ」

 

 サークルの女子の一人がある時、僕にそう言った。たまたま二人で部室にいた時だった。彼女は噂好きな子だった。

 

 「へえ、そう。あの…名前だけ入っている人? でも顔を見た事がないなあ」

 

 僕が言うと彼女は「私は一度喋った事があるよ」と少し嬉しそうに言った。


 「食堂で会ったんだ。私、顔は知ってて。写真で見てたから。『あ、望月君だ』と思って話しかけたの。まわりに二人くらいいたかな。友達なのかなんなのか、よくわからない人が。望月君に自己紹介して、『どうしてサークルに来ないの?』って聞いたら『忙しくて』って答えたの。望月君はその時、物凄く高そうな服を着てたよ。ぱっと見た目にはそうでもないんだけど、近くで見るとすべすべして高そうな生地でさ…。なんていうの? 嫌味じゃないお金の使い方っていうか、生まれつきのお金持ちって感じだったなあ。それがすごく印象的でさ、改めて普通の大学生じゃないんだって思ったよ」

 

 「そうなんだ。よくわからないけど、忙しいんだろうね」

 

 「そうみたい。だからサークルにもあんまり来れないんだってさ。…じゃあなんでサークルに入ったのかって? ううん、そこまでは聞かなかったけど。でもあまり会う事はないみたい」

 

 「そっか」

 

 その時、別のメンバーが部室に入ってきて話は途切れた。僕はその時に、はじめてはっきりした望月の消息について聞いたのだった。僕はその時は、望月と顔を合わせる機会があるなんて思いもしなかった。

 

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