第12話 冒険者に笑われる
翌朝。
俺は木箱の中で、ミミルに抱えられてギルドへ向かっていた。
昨日、ロイムが工房まで来た。
ヴァルム商会の買付責任者。
顔は見ていない。
目も見ていない。
扉越しに、声だけを聞いた。
丁寧で、穏やかで、礼儀正しい声。
なのに、どこか引っかかる声だった。
研究支援。
設備補助。
販路の確保。
安全な管理。
言葉だけなら、親切にも聞こえる。
だが、俺にはわかる。
あの声は、俺を一個の生き物として見ている声ではなかった。
価値ある素材。
管理すべき希少品。
そういうものを逃したくない人間の声だった。
ロイムは、簡単に引くつもりはない。
俺は木箱の中で、小さく震えた。
「大丈夫、エッグ」
ミミルが木箱のふちに手を添える。
「今日はまず、受付嬢さんに昨日のことをもう一度確認してもらおう」
右。
それがいい。
昨日も記録してもらった。
だが、改めて登録内容を見直した方がいい。
俺の殻片は、ただの落とし物ではない。
俺の体の一部だ。
自然に剥がれたものでも、勝手に売られたり、勝手に使われたりしたら困る。
そのへんを、ちゃんと記録に残してもらう必要がある。
ギルドに着くと、朝の広間はすでに騒がしかった。
冒険者たちが依頼票を見たり、受付に並んだり、酒場側で朝から何か食べたりしている。
相変わらず視線が刺さる。
「あ、例の卵だ」
「まだ割れてねえのか」
「荷物から補助役になったんだっけ?」
聞こえているぞ。
卵だけど聞こえているぞ。
ミミルは少し肩を縮めたが、俺の木箱をしっかり抱えて受付へ向かった。
受付嬢は俺たちを見ると、すぐに表情を引き締めた。
「ミミルさん、エッグさん。昨日の件ですね」
「はい。ロイムさんのことと、エッグの殻片の扱いについて、もう一度確認したくて」
「わかりました。奥の席へどうぞ」
受付嬢は、広間の端にある相談用の席へ案内してくれた。
机の上に登録書類が置かれる。
そこには、俺の名前が書かれていた。
================
従魔名:エッグ
種別:ひび割れ卵
所有者:ミミル
役割:補助従魔
危険度:なし
備考:食用不可。廃棄推奨。経過観察中。
意思表示あり。本人同意あり。
================
……廃棄推奨、まだ残っている。
毎回ちょっと傷つく。
いや、事実として最初の鑑定がそうだったのはわかる。
わかるけど、そろそろ消してくれてもいいのでは。
俺は小さく震えた。
受付嬢が俺を見た。
「エッグさん、何か気になるところがありますか?」
俺は少し迷って、書類の備考欄の方へ体を傾けた。
「備考ですか?」
右。
「廃棄推奨の記録が気になりますか?」
右。
受付嬢は少し申し訳なさそうに眉を下げた。
「最初の鑑定記録として残っているものなので、完全には消せません。ただ、現在の扱いは補助従魔です。廃棄対象として扱うことはありません」
ならよし。
完全に納得したわけではないが、記録上の過去なら仕方ない。
前世の黒歴史みたいなものだ。
消せない。
つらい。
受付嬢は新しい紙を出した。
「昨日のロイム氏の訪問については、すでに記録しています。追加で、身体由来素材の扱いを明確にしましょう」
身体由来素材。
つまり、俺の殻片。
言い方が少し事務的だが、大事な話だ。
ミミルが真剣な顔で頷く。
「お願いします。エッグの殻片は、勝手に売ったり使ったりしたくありません」
受付嬢は俺を見る。
「エッグさんも同じ考えですか?」
右。
当然。
俺の殻だ。
勝手に売られてたまるか。
受付嬢は丁寧に書き込んでいく。
================
登録従魔:エッグ
特記事項:意思表示あり。本人同意あり。
殻片・身体由来素材の売買には、所有者ミミルおよび従魔エッグ双方の同意を必要とする。
ヴァルム商会との直接取引を拒否。
今後の連絡はギルド経由を希望。
================
よし。
かなり良い。
本人同意。
双方の同意。
直接取引拒否。
ギルド経由。
これだけ書いてあれば、少なくとも表向きは勝手に話を進めにくくなる。
受付嬢は書類を確認しながら言った。
「こちらの内容でよろしいですか?」
右。
「ミミルさんも?」
「はい。お願いします」
受付嬢は登録印を押した。
ぽん、という軽い音。
その音が、少しだけ頼もしく聞こえた。
「ギルドからヴァルム商会へも、直接交渉を控えるよう連絡しています。ただし、現時点では強制力が強いものではありません。もし再び工房へ来た場合は、すぐにギルドへ知らせてください」
「はい」
ミミルの声は少し硬かった。
不安なのだろう。
俺も不安だ。
ロイムが、連絡を受けただけで素直に引くとは思えない。
だが、何もないよりはずっといい。
記録がある。
味方がいる。
それだけで、少しは違う。
その時、背後から聞き慣れた声がした。
「おーおー、卵様は今日も大事に記録されてんな」
ガルドだ。
来た。
嫌なタイミングで来た。
ガルドは依頼票を片手に、にやにやしながら近づいてきた。
「荷物上がりの卵が、今度は商会様に狙われるほどの高級品か?」
ミミルがむっとする。
「エッグは高級品じゃありません」
「じゃあ何だよ」
「相棒です」
ミミルは即答した。
俺は木箱の中で、少しだけ震えた。
相棒。
やっぱり、その言葉は嬉しい。
ガルドはわざとらしく肩をすくめた。
「へえへえ、相棒ね。そりゃ失礼しました、卵様」
こいつ。
俺は左へ揺れた。
不満です。
受付嬢が少し強めの声で言う。
「ガルドさん。相談中です」
「わかってるって。邪魔はしねえよ」
もうしている。
だが、ガルドは机の上の書類をちらりと見て、少しだけ表情を変えた。
「ヴァルム商会、直接取引拒否か」
ミミルが警戒する。
「見ないでください」
「見えただけだ」
ガルドは軽く言ったあと、俺の木箱を見た。
「ま、悪くねえ判断だな」
意外。
煽るかと思った。
ミミルも少し驚いた顔をした。
「そう、ですか?」
「ああいう商会に中途半端に尻尾振ると、だいたい飲まれる。弱い奴が一人で抱え込むと、だいたい食われる」
言い方は悪い。
だが、内容は正しい。
受付嬢も否定しなかった。
ガルドは俺の木箱を指差した。
「そいつが本当に値打ちもんになってきてるなら、なおさらだ。守るなら、ギルドを噛ませとけ」
値打ちもの。
その言い方は気に入らないが、ギルドを噛ませるのはその通りだ。
俺はしぶしぶ右へ揺れた。
ガルドがにやりと笑う。
「お、珍しく同意したな」
しまった。
反応してしまった。
悔しい。
ガルドはさらに続ける。
「それと、卵」
俺か。
「硬いからって調子に乗るなよ」
硬い。
それは、最近の補強剤と訓練のことだろう。
ガルドはスキル名なんて知らない。
ただ、俺の殻が前より耐えるようになっているのを見ているだけだ。
「転がってぶつかるなら、先に自分が割れねえようにしろ。あと、ただ突っ込むだけじゃ駄目だ」
俺は動きを止めた。
ガルドは依頼票を丸めて、床の上で軽く転がしてみせる。
「まっすぐ転がるだけなら、相手からしたら読みやすい。避けるか、流すか、逃げるかも覚えろ」
避ける。
流す。
逃げる。
戦うことばかり考えていた俺には、少し耳が痛い。
前回の依頼で、俺は坂道から転がって体当たりした。
あれはたまたま上手くいった。
でも、毎回それで勝てるとは限らない。
むしろ、相手が俺の動きを読めば、踏まれて終わる。
卵として最悪の結末である。
ミミルが少し考える。
「転がる練習……した方がいいかな」
右。
した方がいい。
俺は足がない。
自分で動けるようになることは、かなり重要だ。
逃げるためにも。
守るためにも。
受付嬢が言った。
「ギルド裏の訓練場なら、空いている時間に少し使えますよ。ただし、危険な訓練は避けてください」
ミミルは俺を見る。
「エッグ、やってみる?」
右。
やる。
少し怖いが、必要だ。
ガルドは鼻で笑った。
「卵が訓練場デビューか。見ものだな」
見なくていい。
絶対見るな。
俺は左へ揺れた。
ガルドは笑った。
「嫌がってやがる」
当たり前だ。
お前に見られたら絶対笑うだろう。
受付嬢は書類を片づけながら言った。
「では、登録にも追記しておきます。危険行為ではなく、短距離の自力移動訓練として扱います」
そして、別紙に書き込んだ。
================
従魔名:エッグ
役割:補助従魔
追記:短距離の自力移動訓練中。
薬草・素材への反応による補助実績あり。
================
よし。
変なことは書かれていない。
俺に見えているスキル名は、俺だけのものだ。
ギルドの記録では、あくまで外から見える範囲。
短距離の自力移動。
薬草・素材への反応。
それなら自然だ。
俺は右へ揺れた。
受付嬢が微笑む。
「確認ありがとうございます」
こうして、俺たちはギルド裏の訓練場へ向かうことになった。
訓練場といっても、冒険者たちが剣を振ったり、弓を撃ったり、木人形相手に攻撃練習をしたりする場所だ。
正直、卵が来る場所ではない。
俺は木箱の中で、すでに帰りたくなっていた。
だが、逃げるためにも、自分で動ける必要がある。
ミミルが小声で言う。
「怖かったら、すぐやめるからね」
右。
お願いします。
訓練場の端には、柔らかい布を張った簡易の壁が用意された。
受付嬢が気を利かせてくれたらしい。
さらに、床には少し厚めの布。
これなら、多少転がっても割れにくい。
たぶん。
絶対ではない。
俺は慎重に木箱から出された。
床に置かれる。
低い。
広い。
周囲に人がいる。
視線が痛い。
「おい、卵が訓練してるぞ」
「何すんだよ」
「目玉焼きになる練習か?」
食用不可だ。
何度言えばわかる。
いや、言えないけど。
ミミルが少し赤くなりながらも、俺の前にしゃがむ。
「まずは、まっすぐ転がって、布の壁で止まる練習ね」
右。
わかった。
俺は殻の内側に意識を向けた。
《転殻》。
ステータス上ではそう表示されている。
だが、外から見れば、ただ俺が自力で転がろうとしているだけだ。
重心を前へ。
ころ。
ころころ。
思ったより進む。
まずい。
止まれ。
止まれ。
止まれ。
ぽふ。
布の壁に当たった。
痛くはない。
だが、かなり情けない。
後ろから笑い声が上がる。
「本当に転がった!」
「遅っ」
「いや、卵にしては速いだろ」
卵基準で評価しないでほしい。
いや、卵なのだが。
ミミルが駆け寄ってくる。
「大丈夫?」
右。
大丈夫。
「痛くない?」
左。
痛くはない。
「もう一回いける?」
右。
やる。
今度は、途中で少し右へ傾けてみる。
ころ。
ころころ。
右に曲がる。
曲がりすぎる。
布の壁ではなく、横の木箱に向かっている。
まずい。
そっちは固そうだ。
俺は慌てて左へ重心を戻す。
ぎりぎりで軌道が変わる。
ぽふ。
また布の壁に当たった。
よし。
危なかった。
ミミルが手を叩く。
「今、少し曲がった!」
右。
曲がった。
ちょっと危なかったけど。
ガルドが訓練場の端で腕を組んで見ていた。
やっぱり見ている。
暇なのか。
「曲がれるなら、あとは止まり方だな」
ガルドが近くにあった小石を拾う。
いや、何をする気だ。
「おい卵。これ避けてみろ」
小石を俺の横に転がしてきた。
速くはない。
当たってもたぶん痛くない。
だが、急に来ると怖い。
俺は反射的に体を傾けた。
ころ。
避ける。
避けた先に布の壁。
ぽふ。
またぶつかった。
周囲から笑いが起きる。
「避けた!」
「最後ぶつかったけどな!」
「卵、忙しいな!」
うるさい。
卵も大変なんだ。
ミミルがガルドを睨む。
「急にやらないでください」
「急じゃなきゃ練習にならねえだろ」
「それでも、エッグに聞いてからにしてください」
ガルドは肩をすくめた。
「へいへい。卵様、次も転がしていいですか?」
言い方が腹立つ。
だが、練習にはなる。
俺は少し迷って、右へ揺れた。
ガルドはにやりと笑う。
「根性あるじゃねえか」
褒められているのか煽られているのかわからない。
たぶん両方だ。
何度か練習するうちに、少しだけ感覚がわかってきた。
まっすぐ進む時は、内側の重みを前へ。
曲がる時は、片側へずらす。
止まる時は、真横に近い角度へ逃がす。
ただし、勢いが強いと止まれない。
つまり、最初から全力で転がるな。
これが大事だ。
前世でもそうだった。
最初から全力で仕事を受けると、止まれなくなる。
卵になっても同じ教訓を得るとは思わなかった。
================
《転殻 Lv1》の制御精度がわずかに上昇しました。
《殻硬化 Lv1》の維持感覚が安定しました。
《微振動 Lv2》の熟練度が上昇しました。
ひび割れ率:32%
================
よし。
スキル表示は俺にだけ見えている。
外のミミルには見えない。
ミミルがわかるのは、俺が少し曲がれるようになったこと。
布壁に当たっても割れていないこと。
転がった後、震えが細かくなっていること。
それくらいだ。
ミミルは俺をそっと木箱に戻した。
「今日はここまでにしよう」
右。
賛成。
かなり疲れた。
ガルドが近づいてくる。
「もう終わりか?」
ミミルがはっきり言った。
「エッグはまだ小さいので、無理はさせません」
俺は右へ揺れた。
その通り。
無理はよくない。
ガルドは俺を見る。
「まあ、割れたら終わりだからな」
その言葉に、俺は少し動きを止めた。
割れたら終わり。
そうだ。
俺には、死んでも復活できるような都合のいい力はない。
少なくとも、今のステータスには表示されていない。
ひび割れ率が100%になれば、たぶん終わる。
割れたら終わり。
だからこそ、強くなりたい。
でも、強くなるために割れたら意味がない。
難しい。
卵の人生、難しすぎる。
ミミルは俺の木箱を抱えた。
「帰ろう、エッグ」
右。
帰ろう。
訓練場を出る時、さっき笑っていた冒険者の一人が言った。
「おい卵、次はもっと速く転がれよ」
誰がやるか。
いや、やるけど。
心の中でだけ反論した。
ギルドの広間に戻ると、受付嬢が声をかけてくれた。
「訓練はどうでしたか?」
ミミルは少し疲れた顔で、でも嬉しそうに答えた。
「少し曲がれるようになりました。あと、止まるのはまだ苦手です」
「なるほど。無理のない範囲で続けてください」
「はい」
受付嬢は俺の木箱を覗き込まず、少し距離を取って話してくれた。
勝手に近づかない。
それがありがたい。
「エッグさんも、お疲れさまでした」
右。
疲れました。
かなり。
受付嬢は微笑んだ。
「今日はゆっくり休んでください」
右。
そうします。
工房へ戻る道で、ミミルはぽつりと話し始めた。
「私も、昔からよく笑われてたんだ」
俺は木箱の中で、少しだけ震えた。
「魔力の流し方が下手で、薬液をよく泡立たせちゃって。先生にも、他の見習いにも、またミミルが失敗したって言われてた」
ミミルは苦笑する。
「今日のエッグを笑ってた人たちを見て、ちょっと思い出した」
俺は何も言えない。
ただ、木箱の中で静かに聞いた。
「でも、エッグはちゃんと転がってた。笑われても、もう一回やってた」
ミミルは俺の木箱をそっと抱え直した。
「私も、もう少し頑張ろうって思った」
右。
頑張ろう。
でも無理はしないで。
俺は少し強めに震えた。
ミミルは笑った。
「無理はしない。わかってる」
本当にわかっているだろうか。
少し怪しい。
だが、今日は信じることにする。
工房に戻ると、ミミルはまず俺を柔らかい布の上に置いた。
そして、水を飲み、椅子に座る。
机で寝そうになったら止めようと思っていたが、今日はちゃんと椅子に座っている。
成長している。
俺も卵として嬉しい。
ミミルは観察記録を開いた。
『ギルド裏訓練場』
『エッグ、自力で短距離転がり移動』
『直進はできる』
『曲がるのは少しできる』
『止まるのは苦手』
『勢いをつけすぎると危ない』
『布壁があると安全』
『笑われても続けた』
最後の一文。
俺は少し照れた。
卵だけど。
ミミルは筆を止め、俺を見る。
「エッグ、今日頑張ったね」
右。
頑張った。
「怖かった?」
右。
怖かった。
「笑われて嫌だった?」
右。
嫌だった。
「でも、また練習する?」
俺は少し迷った。
疲れた。
怖かった。
笑われた。
でも、必要だ。
自分で動けなければ、いざという時に何もできない。
俺は右へ揺れた。
またやる。
ミミルは嬉しそうに笑った。
「うん。一緒にやろう」
右。
一緒に。
その夜。
俺は木箱の中で、改めてステータスを確認した。
================
種族:竜血卵
種族ランク:F
レベル:4/5
ひび割れ率:32%
生命力:3/3
魔力:3/3
攻撃力:0
防御力:5
敏捷:0
知力:8
運:1
固有スキル:
《孵化未遂 Lv1》
《因子吸収 Lv1》
通常スキル:
《殻籠り Lv1》
《微振動 Lv2》
《威嚇振動 Lv1》
《竜血鼓動 Lv1》
《微弱竜威 Lv1》
《魔力吸収 Lv1》
《素材感知 Lv1》
《転殻 Lv1》
《殻硬化 Lv1》
称号:
《転生者》
《孵化不全》
《廃棄された卵》
《拾われた卵》
《役に立った卵》
《便利な卵》
================
ひび割れ率32%。
今日は上がっていない。
よかった。
本当に。
成長したい。
でも、割れたくない。
その両方を満たすには、慎重に練習するしかない。
ミミルは机の横で、うとうとしていた。
また机で寝そうになっている。
俺は小さく震えた。
ぶる。
「……寝てないよ」
嘘だ。
ほぼ寝ていた。
俺は左へ揺れた。
「はい。ちゃんと寝ます」
ミミルは苦笑しながら、記録を閉じた。
灯りが落ちる。
工房が静かになる。
外の気配はない。
ロイムのことは不安だ。
ヴァルム商会のことも不安だ。
でも、今日は少しだけ前へ進んだ。
転がって。
笑われて。
それでも、また転がると決めた。
廃棄推奨だった卵が、補助従魔になり、訓練場で笑われる。
それは情けないようで、少し誇らしい。
俺は木箱の中で、ゆっくり震えを止めた。
割れないように。
でも、止まらないように。
明日も、少しだけ転がってみよう。




