戦おうとするほど壊れていく
街の外。
気づけば、また似たような状況になっていた。
目の前には黒ローブの男。
後ろにはヒロインたち。
そして、その間に立たされている俺。
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「今度こそ終わりだ」
黒ローブが低く言う。
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「それ前も聞いた!!」
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「今回は違う」
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「毎回言ってる!!」
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空気が張り詰める。
風が止まる。
これはもう完全に戦闘の流れだった。
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――いい加減、ちゃんと戦う。
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「全員、準備しろ」
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振り返る。
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アリスは微笑んでいる。
ユイは無表情。
ミナは楽しそう。
エリナは真剣。
ミルフィーナはキラキラしている。
シオンは静かに立っている。
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頼む。
今回は普通にいこう。
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「いくぞ!!」
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その瞬間。
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「ちょっといいですか♡」
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「やっぱり来た!!」
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アリスだった。
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「戦う前に確認したいことがあります♡」
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「今やるな!!」
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「この戦い、何のためですか♡」
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黒ローブが止まる。
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「……何?」
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「目的が曖昧だと、良い結果になりません♡」
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「会議始めるな!!」
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しかし。
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「……確かに」
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「乗るな!!」
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黒ローブが考え始めた。
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「俺は……何のために……」
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「知らんのか!!」
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ミナが手を上げる。
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「はいはい!」
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「なんだ!!」
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「とりあえず名前教えて?」
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「なんでだ!!」
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「呼びにくいし」
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黒ローブは少し迷ってから言った。
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「……ゼルグ」
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「名乗った!!」
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「よろしく!」
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「友達じゃねぇ!!」
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ユイが言う。
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「情報は必要」
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「それっぽく言うな!!」
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エリナが前に出る。
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「では確認します」
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「やめろ!!」
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「あなたは本当に敵ですか?」
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沈黙。
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「……分からない」
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「どういうことだ!!」
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「命令された……だが……」
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「誰に?」
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「……分からない」
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「またそれか!!」
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ミルフィーナが言う。
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「じゃあ悪い人じゃないかも!」
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「判断が軽い!!」
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シオンが静かに言う。
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「この世界では、理由はあとからついてくる」
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「怖いこと言うな!!」
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悠斗は頭を押さえた。
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「もういい!!」
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全員が見る。
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「一回落ち着け!!」
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「賛成です♡」
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「いいね」
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「休憩!」
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「戦闘中だぞ!!」
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結果。
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全員座った。
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敵も含めて。
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「なんでだよ!!」
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円になって座る。
完全に会議だった。
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「議題を決めましょう♡」
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「いらない!!」
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「戦うかどうか」
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「それ今決めるのかよ!!」
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ゼルグが小さく言う。
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「……戦いたくはない」
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「終わりじゃねぇか!!」
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ミナが立ち上がる。
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「じゃあ解散!」
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「軽い!!」
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エリナが頷く。
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「争いがなくなるのは良いことです」
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「結果だけな!!」
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ミルフィーナが手を上げる。
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「仲間?」
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「違う!!」
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ユイが言う。
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「流れ的にはそう」
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「流れで決めるな!!」
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シオンが静かに呟く。
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「こうやって、境界が曖昧になる」
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その言葉だけ、妙に重かった。
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悠斗は空を見上げる。
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青い。
何も変わらない。
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「……戦うって、なんだっけ」
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誰も答えなかった。
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ただ。
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ゼルグは、その場に残っていた。
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敵なのか、味方なのかも分からないまま。
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――この世界では、“決着”すらまともに成立しない。
第9話を読んでいただきありがとうございます。
今回は「戦おうとするほど戦いが成立しない」という、この世界らしさを強めた回でした。
結果として、戦闘のはずが会議になり、そのまま終わるという形になっています。
また、敵であるはずの存在も曖昧になっていくなど、
この世界の“境界のゆるさ”も少しずつ見えてきました。
とはいえ、基本はこれまで通りコメディ全開で進んでいきます。
ここからさらにカオスと違和感が広がっていくので、気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。
引き続き読んでいただけると嬉しいです。




