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異世界転生したら、ヒロインが全員ボケだった件  作者: 関澤諭


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10/14

世界が、少しだけズレて見えた

 街に戻ってきた。


 はずだった。


---


「……あれ?」


---


 佐藤悠斗は立ち止まる。


---


 違和感があった。


 いつも通りの石畳。

 いつも通りの建物。

 いつも通りの人の流れ。


---


 なのに。


---


「なんか……変だ」


---


 ミナが首を傾げる。


「普通じゃない?」


---


「いや」


---


 悠斗は目を細める。


---


 人が歩いている。


 笑っている。


 話している。


---


 だが。


---


「……同じだ」


---


「何が?」


---


「会話」


---


 耳を澄ます。


---


「今日はいい天気ですね」


「今日はいい天気ですね」


「今日はいい天気ですね」


---


「全部一緒だ」


---


 同じ言葉。


 同じタイミング。


 同じ表情。


---


「怖っ!!」


---


 ミルフィーナが叫ぶ。


---


「コピペみたい!」


---


「言い方!!」


---


 ユイが小さく言う。


---


「ズレてる」


---


「レベルが違うだろ!!」


---


 アリスはにこにこしている。


---


「心が揃ってますね♡」


---


「違う!!」


---


 エリナが真剣な顔で言う。


---


「これは異常です」


---


「やっとまとも!!」


---


 シオンが静かに呟く。


---


「いよいよ来た」


---


「何がだよ」


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「“均一化”」


---


「単語が怖い!!」


---


 その時だった。


---


「いらっしゃいませ」


---


 目の前に店主が立っていた。


---


 ……さっきと同じ顔だった。


---


「いらっしゃいませ」


---


 もう一人。


---


「いらっしゃいませ」


---


 さらにもう一人。


---


「増えてる!!」


---


 同じ顔の人間が、同じ動きで、同じ言葉を繰り返している。


---


「バグってるだろ!!」


---


 悠斗は後ずさる。


---


「この世界、ここまで来たか……」


---


 シオンが静かに言う。


---


「ここまで来ると、もう戻れない」


---


「何が!?」


---


「普通の感覚」


---


 その言葉が刺さる。


---


「……」


---


 悠斗は、少しだけ黙った。


---


 確かに。


---


 最初はおかしいと思っていた。


 ツッコミを入れていた。


 否定していた。


---


 だが今は。


---


 少しだけ、慣れている。


---


「……やばいな」


---


 その時だった。


---


「見つけたぞ」


---


 あの声。


---


 黒ローブ――ゼルグ。


---


 だが。


---


 その後ろにもいた。


---


「見つけたぞ」


「見つけたぞ」


「見つけたぞ」


---


「増えてる!!」


---


 ゼルグが三人になっていた。


---


「なんでだよ!!」


---


「……増殖?」


 ミナが言う。


---


「嬉しくない増え方!!」


---


 ゼルグたちが同時に言う。


---


「今度こそ終わりだ」


---


「もう聞き飽きた!!」


---


 だが。


---


 悠斗は、少しだけ違う反応をした。


---


「……なるほど」


---


 全員が見る。


---


「悠斗?」


---


「そういうことか」


---


「何が?」


---


 悠斗は一歩前に出た。


---


「この世界、“揃えようとしてる”」


---


 シオンが小さく頷く。


---


「気づいたんだ」


---


「怖い言い方やめろ」


---


「違うものを、同じにする」


---


「だからボケも、敵も、街も」


---


「全部ズレる」


---


 その瞬間。


---


 ゼルグたちが動いた。


---


「排除する」


---


「やっぱ敵だろ!!」


---


 だが。


---


 悠斗は、逃げなかった。


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「……じゃあ」


---


 一呼吸。


---


「逆にやる」


---


「何を!?」


---


 悠斗は振り返る。


---


「全員、バラバラに動け」


---


「え?」


---


「統一するからおかしくなる」


---


「なら、逆だ」


---


「揃えなければいい」


---


 全員が一瞬止まる。


---


 そして。


---


「面白そう!」


 ミナが走り出す。


---


「では好きに動きます♡」


 アリスが別方向へ。


---


「了解」


 ユイが静かに消える。


---


「私は浄化します」


 エリナが光る。


---


「変身します!」


「今じゃない!!」


---


「静かに観察します」


 シオンが離れる。


---


 完全にバラバラになった。


---


「よし」


---


 その瞬間。


---


 ゼルグたちが止まった。


---


「……認識、不能」


---


「効いてる!!」


---


「対象、特定不能」


---


 動きが鈍る。


---


 崩れた。


---


「いける……!」


---


 悠斗は、初めて確信した。


---


「この世界、攻略できる」


---


 その瞬間。


---


 空気が歪んだ。


---


「……」


---


 何かが見えた気がした。


---


 この世界の、奥。


---


 ほんの一瞬だけ。


---


「……今の」


---


 だがすぐに消えた。


---


 ゼルグたちは、その場で動かなくなっていた。


---


「終わった……?」


---


「多分」


---


 ミナが戻ってくる。


---


「やったね!」


---


「いや、たまたまだろ……」


---


 だが。


---


 悠斗は空を見上げる。


---


 青い。


 だが。


---


 少しだけ、歪んで見えた。


---


 ――この世界は、壊せるかもしれない。

第10話を読んでいただきありがとうございます。

今回は「街」という日常の中で起きる異常を描きつつ、

この世界の仕組みが少しだけ見えてくる回になりました。

これまでのカオスな出来事も、実は一つの流れに繋がっている可能性があります。

そして悠斗自身も、ただ振り回されるだけではなく、少しずつ変化し始めています。

とはいえ、基本はこれまで通りコメディ全開で進んでいきますので、

気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。

ここからさらに物語は広がっていきます。

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