分かった気になった瞬間が一番危ない
夜。
街の外。
焚き火の前。
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静かだった。
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さっきの出来事が、頭にこびりついていた。
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同じ顔。
同じ言葉。
増えていく敵。
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「……」
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佐藤悠斗は火を見つめる。
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「考えてる顔してる」
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ユイが隣で言う。
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「してるよ」
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「珍しい」
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「一言余計だ」
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ミナが笑う。
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「でも分かるよ〜」
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「何がだ」
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「なんかさ、全部同じになりそうで怖いよね」
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「……」
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図星だった。
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アリスがやわらかく言う。
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「安心でもありますよ♡」
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「それが怖いんだよ!!」
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エリナが真面目な顔で言う。
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「争いは減ります」
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「でも全部同じになるんだぞ?」
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ミルフィーナが手を上げる。
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「じゃあ変身も統一される?」
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「それは絶対嫌だ!!」
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話が逸れる。
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「……説明する」
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シオンだった。
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全員の視線が集まる。
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「やっとか」
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悠斗が身を乗り出す。
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「この世界、なんなんだよ」
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シオンは焚き火を見たまま言った。
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「この世界は、揃えようとする」
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「それは聞いた」
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「でも、それだけじゃない」
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少しだけ間を置く。
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「ズレも、同時に生まれる」
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「は?」
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「完全に同じにはできないから」
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「無理やり揃えようとして、ズレる」
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静かな説明。
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「だから」
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「会話もズレる」
「戦闘も成立しない」
「人も変になる」
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全部、繋がっていた。
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「……」
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悠斗は黙る。
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「じゃあ俺は?」
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「揃ってない」
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「つまり?」
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「まだ壊れてない」
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「その言い方やめろ!!」
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ミナが首を傾げる。
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「でもさ」
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「うん」
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「ずっとここにいたら、どうなるの?」
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シオンは少しだけ考えた。
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「いずれ揃う」
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「やめろ!!」
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アリスが微笑む。
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「その時は、みんな一緒ですね♡」
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「怖いこと言うな!!」
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ユイが言う。
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「悠斗もボケになる」
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「ならない!!」
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「もう半分なってる」
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「なってない!!」
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ミルフィーナが言う。
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「試してみる?」
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「何を!?」
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「同じこと言ってみて!」
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「やらない!!」
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全員が見る。
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妙な圧。
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「……一回だけだぞ」
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負けた。
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「……今日はいい天気だな」
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言った。
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その瞬間。
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空気が、わずかに揺れた。
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「……!」
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シオンが反応する。
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「やっぱり」
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「何がだよ!!」
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「影響を受けてる」
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「やめろ!!」
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悠斗は立ち上がる。
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「俺は普通だ!!」
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「そう思ってる時点で危ない」
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「怖いこと言うな!!」
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焚き火が揺れる。
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一瞬だけ。
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世界が、静かに揃いかけた気がした。
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「……」
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悠斗は黙る。
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そして。
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「……やっぱこの世界、壊す」
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小さく呟いた。
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冗談じゃない。
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勢いでもない。
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ただ。
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このままだと。
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全部、同じになる。
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それだけは、絶対に嫌だった。
第11話を読んでいただきありがとうございます。
今回はこの世界の仕組みについて、少し踏み込んだ説明回になりました。
「揃えようとする力」と「その結果として生まれるズレ」という、この作品の軸が少し見えてきたと思います。
同時に、悠斗自身にも少しずつ変化が出始めています。
ただ振り回されるだけではなく、どう向き合うかを考え始めた段階です。
とはいえ、基本はこれまで通りコメディなので、気軽に楽しんでいただければ大丈夫です。
ここからさらに物語は加速していきます。




