全員ボケが同時に動くと世界はこうなる
走っている。
全力で。
理由は簡単だ。
後ろから“明らかにヤバいやつ”が追ってきているからだ。
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「待てぇぇぇぇ!!」
黒いローブの男が、森の中を高速で迫ってくる。
どう見ても敵。
どう見ても危険。
どう見ても関わりたくないタイプ。
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「なんで俺たち追われてるんだよ!!」
「悠斗のせい」
ユイが即答する。
「なんでだよ!!」
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「世界の歪みって言われてた」
「それ第4話のやつだろ!!」
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「つまり原因は悠斗♡」
「まとめ方雑すぎる!!」
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「まあいいじゃん!」
ミナが笑う。
「逃げれば問題ない!」
「問題しかない!!」
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「大丈夫です♡」
アリスが微笑む。
「心を開けば分かり合えます♡」
「今それやるタイミングじゃない!!」
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「むしろ今しかありません♡」
「なんでだよ!!」
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「感情が高ぶってる時ほど、本音が出ます♡」
「カウンセリング理論を戦闘に持ち込むな!!」
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その時だった。
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ミルフィーナがくるっと振り返った。
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「変身します!!」
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「今!?」
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「こういうのはタイミングが大事なんです!」
「遅いだろ!!」
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ステッキを掲げる。
光が溢れる。
音楽が鳴る。
なぜか。
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「✨キラキラ変身〜✨」
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「フル演出!?」
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後ろから敵が迫っている中で、完全に変身シーンが始まった。
回る。光る。ポーズ決める。
長い。
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「長い!!」
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「もう少しで終わります!」
「もう来てる!!」
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敵、すぐそこまで来ている。
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ようやく変身が終わった。
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「完成です!」
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「遅い!!」
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その瞬間。
ゴンザレスが立ち止まった。
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「どうした!?」
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「……敵、排除」
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「やっとまともなやつ来た!」
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ゴンザレスが拳を振り上げる。
敵に向かって――
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そのまま地面を殴った。
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「なんで地面!?」
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地面が陥没した。
全員、バランスを崩す。
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「なにしてんだぁぁぁ!!」
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「……地形、変化させました」
「ズレてる!!」
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その隙に、敵が距離を詰める。
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「捕まえたぞ」
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「やばい!!」
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その時。
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エリナが前に出た。
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「ここは私が」
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「お、やっとまともな戦闘か!?」
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聖女の力が集まる。
光が輝く。
これは強そうだ。
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「浄化します」
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「いいぞ!!」
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エリナは手をかざし――
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後ろのミナに当てた。
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「なんでだよ!!」
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「少し邪念が多かったので」
「盗賊だからな!!」
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「え!? 私!?」
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ミナがキラキラし始める。
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「ちょっと待って!? 体が軽い!」
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「成功です」
「対象違う!!」
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敵、もう目の前。
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「終わりだ」
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完全に詰んだ。
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――その瞬間。
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「やめてください♡」
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アリスだった。
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全員の動きが止まる。
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敵も止まる。
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「あなたは悪い人じゃありません♡」
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静かな声。
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「本当は、誰かに認めてほしかっただけですよね?」
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沈黙。
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敵の手が、震える。
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「……」
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「あなたは、ちゃんと頑張ってます♡」
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数秒後。
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「……そうかもしれない」
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「効いたぁぁぁぁぁ!!」
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敵がその場に膝をついた。
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「……もう、いい」
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完全に戦意喪失。
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終わった。
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戦闘が。
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カウンセリングで。
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悠斗はその場に崩れ落ちた。
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「なんなんだよこの世界……」
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ユイが隣に立つ。
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「だから言った」
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「何を」
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「普通は存在しない」
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その言葉が、少しだけ重く響いた。
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ミナが元に戻る。
「いやー助かった!」
「お前が浄化されてたけどな!!」
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ミルフィーナがキラキラしている。
「やっぱり変身は大事ですね!」
「今回何もしてないだろ!!」
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魔王が頷く。
「いい連携だった」
「どこがだ!!」
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賢者が言う。
「戦術的には不明ですが、結果は良好です」
「まとめ方雑すぎる!!」
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タケシが鳴く。
ゴンザレスが頷く。
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そして。
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悠斗は、ゆっくりと立ち上がる。
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「……もう分かった」
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全員が見る。
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「この世界、俺を壊しに来てる」
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ユイが答える。
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「最初からそう」
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遠くで風が吹く。
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空は変わらず青い。
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だが。
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悠斗の中で、何かが少しだけ変わり始めていた。
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――ヒロインは、まだ増える。
第6話を読んでいただきありがとうございます。
今回は「全員同時に動いたらどうなるか」を全力でやりました。
カオスが一気に加速してきましたが、ここからがこの作品の本番です。
少しずつですが、「この世界に普通が存在しない理由」も見え始めてきます。
ただし基本はコメディなので、気軽に楽しんでもらえれば大丈夫です。
そして――ヒロインはまだ増えます。
次は、少し間を置いてから“かなりヤバいやつ”が来る予定です。
引き続き読んでいただけると嬉しいです。




