ヒロインは魔法少女で、年齢の概念が壊れている
その日の夜。
佐藤悠斗は、焚き火の前で静かに座っていた。
ヒロインは四人。
これ以上増えないことを、心の底から祈っていた。
アリスは鍋をかき混ぜている。
ユイは無言でそれを観察している。
ミナはその横で勝手に味見している。
エリナは静かに座り、どこか落ち着いた顔をしていた。
異様にまとまっている。
いや、まとまっているように見えるだけで、全員おかしいのは変わらない。
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「悠斗♡」
「なんだ」
「家族会議しましょう♡」
「何のだ」
「結婚式の♡」
「まだ続いてたのかその話!」
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「悠斗」
「なんだ」
「このままだとまた増える」
「もうやめろ」
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「悠斗ー」
「なんだ」
「明日街行こうよ!」
「それは賛成だ!」
「ドレス見たい!」
「そっちか!!」
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話が終わらない。
終わる気配がない。
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その時だった。
空に、星とは違う光が浮かんだ。
ひとつ。
いや、動いている。
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「なんだあれ」
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光はどんどん近づいてくる。
そして――
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ドンッ!!
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派手に弾けた。
キラキラとした光が周囲に降り注ぐ。
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「演出が派手すぎるだろ!!」
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光の中心から、少女が現れた。
ふわふわの衣装。
リボン。
ステッキ。
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「魔法少女……?」
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「ふふん!」
少女はポーズを決めた。
「正義と愛の魔法少女! ミルフィーナちゃん参上です!」
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「テンションが高い!!」
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「お兄さん!」
「誰だよ!」
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「助けてください!」
「展開が早い!」
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「悪い魔王に追われてるんです!」
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全員の視線が後ろへ向く。
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コーヒーを飲んでいる魔王。
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「俺か?」
「お前しかいないだろ!!」
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「違います!」
ミルフィーナが慌てて言う。
「もっと悪そうな魔王です!」
「もっと悪そうってなんだよ!!」
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魔王が腕を組む。
「心外だな」
「お前は悪い側で合ってるだろ!!」
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ミルフィーナは悠斗を見上げる。
「お願いします!」
「何を」
「一緒に戦ってください!」
「なんで俺!?」
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「だって強そうなので!」
「どこが!!」
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ユイが呟く。
「第五ヒロイン」
「確定させるな!!」
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アリスが笑う。
「かわいいですね♡」
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ミナが笑う。
「いいじゃん!」
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エリナが真顔で言う。
「彼女は危険かもしれません」
「やっとまともな意見!」
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「年齢が分かりません」
「そこ!?」
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「えへへ」
ミルフィーナが笑う。
「見た目は13歳!」
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「でも実年齢は……」
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「分かりません!」
「終わってる!!」
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魔王が頷く。
「面白い」
「楽しむな!!」
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賢者が言う。
「不老不死の可能性があります」
「さらっとヤバいこと言うな!!」
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「とにかく!」
ミルフィーナが叫ぶ。
「一緒に来てください!」
「もう限界なんだけど!!」
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その時だった。
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「ククク……見つけたぞ」
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低い声が響いた。
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空気が変わる。
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「来た!」
ミルフィーナが叫ぶ。
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森の奥から影が現れる。
黒いローブ。
明らかに敵。
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「本物の魔王か?」
「知らん」
「知らんのかよ!!」
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「逃げましょう!」
「戦わないのか!?」
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「まだ準備できてないですし!」
「雑すぎる!!」
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結局。
全員で走ることになった。
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ヒロイン五人。
ドラゴン一匹。
ゴーレム一体。
魔王一人。
賢者一人。
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完全に大所帯だった。
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走りながら、悠斗は思う。
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この世界は確実におかしい。
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そして――
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ヒロインは、まだ増える。
第5話を読んでいただきありがとうございます。
ついにヒロインが5人になりました。
今回は“魔法少女”という、また一段ズレた方向からの参戦です。
人数が増えるほど会話のカオスも加速していきますが、その分だけ悠斗の苦労も増えていきます。
また、今回は少しだけ“敵っぽい存在”も登場しました。
今後はコメディの中に、ほんの少しずつ世界の違和感も混ぜていく予定です。
引き続き、気軽に楽しんでいただけると嬉しいです。




