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異世界転生したら、ヒロインが全員ボケだった件  作者: 関澤諭


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4/13

ヒロインは聖女で、なぜか俺を処刑しようとしてくる

 翌朝。


 佐藤悠斗は、久しぶりに静かな朝を迎えられるかもしれないと、ほんの少しだけ期待していた。


 空気は澄んでいる。

 鳥の鳴き声も穏やかだ。

 焚き火もきれいに消えている。


 よし。今日は平和だ。


 そう思った。


「悠斗♡ 朝ですよ♡」


 右からアリス。


「起きて」


 左からユイ。


「おはよー!」


 正面からミナ。


 完全に囲まれていた。


「距離感どうなってるんだよ!!」


---


 背後では魔王がコーヒーを淹れている。


「豆は挽きたてがいい」


「どこから持ってきた」


「オフの日に準備した」


「オフ万能すぎるだろ!!」


---


 賢者は相変わらず地図を逆さにしている。


「今日は南に進みましょう」


「それ北じゃないか?」


「そうとも言います」


「言い換えじゃねぇよ!!」


---


 タケシは丸くなって寝ている。

 ゴンザレスは直立したまま見張りを続けていた。


 なぜかこの二体が一番安定している。


---


 朝食を終え、俺たちは再び歩き出した。


 ヒロイン三人に挟まれながら。


 精神的にはすでに圧迫されている。


---


「悠斗♡」


「なんだ」


「今日はどこで結婚式にします?」


「しない」


---


「悠斗」


「なんだ」


「このままだと四人目来る」


「やめろ」


---


「悠斗ー!」


「なんだ」


「次の街で服買おうよ!」


「なんでだ!」


「結婚式用!」


「増やすなその話!!」


---


 会話が収束しない。


 むしろ増殖している。


---


 その時だった。


 遠くから鐘の音が聞こえてきた。


 カン、カン、と澄んだ音。


 同時に空気が少し張り詰める。


---


「なんだ?」


「来る」


 ユイが短く言った。


---


 空から光が差す。


 一点を照らすように、まっすぐに。


 その中心に、人影が降りてくる。


---


 白い衣装。

 長い金髪。

 神々しい雰囲気。


---


「聖女か……?」


---


 ふわりと地面に降り立つ。


 空気が張り詰める。


---


「見つけました」


 静かな声だった。


---


「あなたが対象ですね」


「対象?」


---


 聖女はゆっくりと手を上げる。


 光が集まり、剣の形になる。


---


「世界の歪みを正すため、あなたを排除します」


「なんでだよ!!」


---


 いきなり処刑宣言された。


---


 アリスが首を傾げる。


「勇者様が処刑対象なんですか♡」


「そこじゃない!!」


---


 ミナが笑う。


「モテモテだね!」


「方向がおかしい!!」


---


 ユイが呟く。


「第四ヒロイン」


「違う!!」


---


「理由を説明してくれ!」


---


「あなたの存在は、この世界の法則から逸脱しています」


---


 その一言だけ、妙にまともだった。


---


「いや俺普通の人間なんだけど!?」


「それが問題です」


---


「この世界に“普通”は存在しません」


---


 一瞬、空気が変わる。


---


 だが。


---


「勇者様♡ 大丈夫ですよ♡」


 アリスが前に出る。


---


「聖女さんも疲れてるんです♡」


「やめろ」


---


「最近、無理してませんか?」


「やめろ!!」


---


 聖女の動きが止まる。


---


「あなたはちゃんと頑張ってますよ♡」


---


 剣がゆっくりと下がる。


---


「……そう、でしょうか」


「効いた!?」


---


 聖女はその場に膝をついた。


---


「……少し、休んでもいいですか」


「落ちたぁぁぁぁぁ!?」


---


 ミナが笑う。

 ユイが頷く。

 魔王が腕を組む。


「見事だ」


「違う意味でな!!」


---


「名前、教えてくれ」


---


「エリナです」


---


「ではエリナさん♡ 一緒に行きましょう♡」


「え?」


「仲間なので♡」


「早い!!」


---


 エリナは少し戸惑いながらも頷いた。


「……はい」


---


 ヒロインが四人になった。


---


 俺は空を見上げる。


 青い。


 とても青い。


---


「……もうやめてくれ」


---


「悠斗」


 ユイが言う。


「まだ増える」


「聞きたくない」


---


「楽しみだね!」


 ミナが笑う。


---


「大家族ですね♡」


 アリスが嬉しそうに言う。


---


「……にぎやかで、いいですね」


 エリナが呟く。


---


「順応早いな!!」


---


 ――この異世界は、俺を休ませる気がない。


---


 ヒロインは、まだ増える。

第4話を読んでいただきありがとうございます。

ついにヒロインが4人になりました。

しかも今回は“主人公を処刑しに来る聖女”という、また一段階ズレたタイプです。

少しだけ世界観に関わる要素(“普通が存在しない世界”)も出てきましたが、基本はこれまで通りコメディ重視で進みます。

ヒロインが増えるほどカオスは加速していくので、ここからさらに賑やかになります。

次回はもっと日常が壊れます。

よければ続きも読んでいただけると嬉しいです。

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