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異世界転生したら、ヒロインが全員ボケだった件  作者: 関澤諭


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15/17

自分が二人いた件について、なぜか翌朝みんな普通だった

 翌朝。


---


「おはようございます♡」


---


 アリスの声で目が覚めた。


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 鳥の声。

 朝日。

 焚き火の匂い。


---


 普通の朝。


---


「……」


---


 だが。


---


 悠斗の頭の中は、まったく普通じゃなかった。


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 昨夜。


---


 もう一人の自分が現れた。


---


 顔も声も全部同じ。


 意味不明なことを言って、消えた。


---


「……夢じゃないよな」


---


「何がですか♡」


---


「いや、お前見てただろ!」


---


「見てました♡」


---


「だよな!?」


---


 安心した。


 やっぱり現実だ。


---


「でも」


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「なんだ」


---


「ちょっと増えただけですよね♡」


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「感覚がおかしい!!」


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 ミナが笑いながら近づいてくる。


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「いやーびっくりしたね!」


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「だろ!?」


---


「悠斗って増えるんだ!」


---


「増えねぇよ!!」


---


 ユイがぽつりと言う。


---


「可能性」


---


「それ昨日も聞いた!!」


---


 エリナは真剣だった。


---


「危険かもしれません」


---


「やっとまともな反応!!」


---


「悠斗が二人になると、ツッコミが倍になります」


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「そこなの!?」


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 ミルフィーナが目を輝かせる。


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「じゃあ三人目も出るかな!?」


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「出ない!!」


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 シオンだけは静かだった。


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「……」


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「おい」


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「なんで黙ってる」


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「説明できるんだろ?」


---


 シオンは少し考えてから言った。


---


「“揃いきれなかった”」


---


「分からん!!」


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「普通なら、全部同じになる」


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「でも悠斗はズレてる」


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「だから、分裂する」


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「怖ぇよ!!」


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 全然安心できない。


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 その時だった。


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「おーい!」


---


 街の方から声がした。


---


 昨日の八百屋の店主だった。


---


「野菜安いよー!」


---


「普通に来るな!!」


---


 店主は笑いながら近づいてくる。


---


「昨日はありがとね!」


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「何が!?」


---


「武器買ってくれて!」


---


「戻ってる!!」


---


 全員が固まる。


---


「……」


---


「……」


---


「……」


---


 沈黙。


---


「武器屋だった記憶、戻ってる……?」


---


 悠斗が呟く。


---


 店主は首を傾げる。


---


「何言ってんの?」


---


「俺は八百屋兼武器屋だよ?」


---


「増えた!!」


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「欲張るな!!」


---


 店主は胸を張る。


---


「最近はパン屋も始めた!」


---


「さらに増えた!!」


---


 ミナが爆笑する。


---


「なんでも屋じゃん!」


---


「世界観が雑!!」


---


 ユイが小さく言う。


---


「揃いきれてない」


---


「またそれか!」


---


「この街、崩れ始めてる」


---


 空気が少し変わる。


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「……崩れてる?」


---


 悠斗が聞き返す。


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 シオンが静かに頷いた。


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「今までは、“同じにする力”が強かった」


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「でも今は違う」


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「ズレが増えてる」


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「理由は?」


---


 シオンは悠斗を見る。


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「多分、悠斗」


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「なんでだよ!!」


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「異物だから」


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「その呼び方やめろ!!」


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 だが。


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 少しだけ、思い当たる。


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 自分が来てから。


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 敵は増殖し。

 記憶はズレ。

 街まで不安定になった。


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「……俺のせい?」


---


「多分」


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「重いな!!」


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 その時だった。


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 ゴゴゴゴ……。


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 地面が揺れた。


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「え?」


---


 街の方を見る。


---


 建物が。


---


 増えていた。


---


「は?」


---


 さっきまでなかった建物が並んでいる。


---


 しかも。


---


 全部、同じ形。


---


「また来た!!」


---


 街の人々が同時に振り向く。


---


「今日はいい天気ですね」


---


 全員同じ声。


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「うわぁぁぁぁ!!」


---


 ミルフィーナが叫ぶ。


---


 空気が揃い始める。


---


 世界が、同じ形になろうとしている。


---


 だが。


---


「……違う」


---


 悠斗は一歩前に出る。


---


「また揃えようとしてる」


---


 その瞬間。


---


 街の景色が、一瞬だけ歪んだ。


---


 建物が揺れる。


---


 人々の動きが止まる。


---


「効いてる……?」


---


 悠斗は息を飲む。


---


 シオンが小さく呟いた。


---


「認識したから」


---


「は?」


---


「悠斗が“異常”を異常だと認識すると、ズレる」


---


「主人公能力みたいに言うな!!」


---


 だが。


---


 確かに。


---


 街は、少しだけ崩れ始めていた。


---


 ――この世界は、まだ固定されていない。

第15話を読んでいただきありがとうございます。

今回は「揃おうとする世界」と「ズレ始める世界」の両方を強めた回でした。

悠斗の存在が、少しずつ世界そのものに影響を与え始めています。

ただ振り回されるだけだった主人公が、少しずつ中心へ近づいてきました。

とはいえ、次回からもコメディとカオスは全力で続きます。

ここからさらに物語は大きく動いていきます。

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