すれ違い
「明日はさ、俺の行きたいところにちょっと付き合ってくれないか?」
なんて、いきなりのことすぎたかな。
俺は一人、自室で頭を悩ませていた。
時雨と別れてすぐに送ったメッセージに、時雨からの
返信がなかなか来ないからだ。
もしかして、やっぱり俺のことを信じられなかったとか……。
いや、そんな様子はなかったはずだが。
頭を悩ませていると、スマホからメッセージを知らせる通知音が鳴った。
俺は思わずスマホに飛びついた。
「……って、なんだよ」
その期待はすぐにため息へと変わった。
時雨からの返信だと思ったら、ただの公式LINEだったのだ。
全く、ブロックしてやろうか。
思わずスマホを睨みつけながらそんな悪態をついていると、画面上に今度こそ「時雨」からのメッセージが表示された。
よし、嫌われてはないみたいだ。
ガッツポーズをしたものの、肝心の内容を読むのを忘れていた。
もしかしたら「もう関わらないでくれ」なんて書かれている可能性だってあるかもしれない。
急に不安が襲ってきて、俺は恐る恐るそのメッセージを開いた。
『今日はありがとう。時也君の行きたい場所、いいじゃん楽しそうだね。どこに行きたいの?』
さて、どこにしようか。
本当は、俺にどうしても行きたい場所があったわけではない。
ただ時雨と会う口実が欲しかっただけなのかもしれない。
本当のところは俺にもよくわからない。
そんなとき、いつかネットか何かで見た「おすすめのデートスポット」という特集を思い出した。
確か、水族館か遊園地がいいんだったかな。
「デートスポット」という響きが少し気にならなくもないが、ひとまず時雨に提案してみることにした。
『今、二箇所で迷ってるんだけど。水族館か遊園地、時雨はどっちがいい?』
送信してしばらく待つと、すぐに返信が返ってきた。
『遊園地がよくない』
「……よくない?」
よくないってことは、否定でいいんだよな。
いや、でも「〜するの、よくない?」みたいに、行きたい場所に対して同意を求めるような聞き方をする人だっている。
メッセージの文字だけだと、あいつが何を考えているのかさっぱり分からねえ。
こんなとき、心が読めたらな。
時雨は今、画面の向こうで何を思っているのだろうか……。
「遊園地がよくない」
送った後にメッセージを見返してみて、私は致命的な
ミスに気がついた。
これだと、私がいかにも「遊園地は嫌だ」って言っているみたいじゃん……!
焦っていると、案の定、時也君から返信が届いた。
『そうか、じゃあ水族館にしようか』
『うん。そうだね、楽しみ』
自分が送った言葉なのだから、今さら否定なんてできない。
遊園地……か。
本当は一度も行ったことがなくて、密かにすごく楽しみにしていたんだけどな。
でも、自業自得だから仕方ないよね。
『じゃあ時雨、また明日な』
『うん、おやすみ。時也君』
明日も、大切な時也君とのお出かけのはずなのに。
私の心は少しだけ晴れないまま、ベッドに入って目を閉じた。
明日はどうか、笑えますように。




