魔術師と魔術師が相対する件
「巨大兵器は無人兵器だと」
寮の自室で個人メールに送られた情報に目を通して思わず声を上げた。
俺は先の関西帝国の進軍に対して違和感を覚えていた。
突然現れた巨大兵器は特に援軍もなく。大学生の研究演習所を狙ったかと思いきや、特にその拠点を攻撃する様子も見られなかった。
トーマがアフタヌーンティーを入れながら俺の声を聞いていたが、特に驚く様子も見せずに準備を続ける。
「僕たちにはどうしようもない話だからね」
「軍が俺達に情報を隠す必要があるのだろうか?」
「検討はつかないね」
続いて個人の連絡端末にアオイから連絡があった。
どうやらオルクライト教官からSクラスに招集がかかった様だ。
リーダーを介しての連絡である事から緊急では無さそうだが。
俺達は紅茶を飲み干すと指定された大学の研究室を尋ねた。
6人が揃うとオルクライト教官が口を開く。
巨大兵器の残骸のブラックボックスの解析が進む中で、奇妙なメッセージを確認したそうだ。
それは…巨兵を倒せし者を出せ。との事だった。
敵が倒される事を前提とした物を組み込んでいるかは謎であるが、その対象は俺達となるのだろうか。
俺がブラックボックスに近づくと魔力を検知した。
中々高度な隠蔽魔法が掛けられているが俺にはハッキリと分かるレベルの魔法だ。意図的にかけられた隠蔽という事はこの世界でも魔法を使える者が居ることを表した。
探知をかけようとした所で、ブラックボックスと繋がった端末に1つの部屋が映し出された。
「何処の部屋だ?」
「ここは恐らく関西帝国の部屋ですね」
元関西帝国軍所属のオルクライト教官が言うので信憑性はある。
少しすると少年の様な声が聞こえる。
「やっと繋がりましたか」
いや、それは待たされたこっちのセリフである。
映された部屋の椅子に俺達と同年代の少年あるいは少女とも取れる中性的な姿が映し出された。
「初めまして、僕はレンツ・EC・ウェイン。一応関西帝国軍の技術士官です」
躊躇なく正体を証す少年。
だが彼が魔法を使っている可能性を考えると俺と同じく中身は中年かもしれない。見た目で判断する事は軽率であろう。
「さて、まずは量産型エクセリオンの撃破おめでとうございます…あ…言い忘れましたがこれは録画ではなくライブ配信なので悪しからず」
つまり、今俺達は彼と通話をしているという事だ。
しかし、聞き捨てならないのはあの巨大兵器が量産型という事だ。あんな強大な機体が既に量産されているとなると次の侵攻時には対処法を考えておかなくては軽く潰される恐れがある。
更に量産型では無い機体の存在も示唆している。量産型では無いワンオフ機がどの程度の性能があるのか…
「僕の開発したエクセリオンを撃破した翼の機体のパイロットとお話がしたくて…」
翼の機体とは恐らくセルドラルの事であろう。
周囲メンバーが一瞬俺の事を見た。こちらの端末はカメラ等には接続されて居ない為、姿までバレる事は無さそうだ。ここでおいそれと正体を証すのは適切では無いだろう。
だがレンツと名乗る少年は続ける。
「真ん中の黒髪の彼ですか?あぁこちらからも皆様がお繋ぎ頂いているブラックボックスから映像が入って来ますので誤魔化し等は不要ですよ」
どうやら本当にこちらの様子を把握している様だ。それを分からせる為に、ワザと丁寧な説明をしている。
ブラックボックスがどの様に置かれるかなど想定できるはずもない。この感知された魔力が視覚を補って居るのであろう。
恐らくは【フィールド・トレース】をこのブラックボックスを中継にして使っているのだろう。
「あぁ俺だ」
「なんと、若いパイロットさんですね」
「君程じゃない」
「しかし、不思議な人だ。僕は大抵の人の考えている事は読み取る力があるのですが、あなたからは何も見えない」
どうやら彼も【マインド・トレース】を使える様だ。だが魔法の強度は、距離の為か俺の感情を読み取るには至らないレベルであり、レンツはそれに抵抗を感じている様だ。
「何故あの様な侵攻を?量産型と言う事はエクセリオンとやらを大量に送り付ければ瞬く間にこちらを壊滅出来たと思うが」
「あれは無人遠隔操作の試験とご挨拶なので気になさらず」
「読めないな、試験運転を敵陣で?」
「是非ともプレゼントを使って貰いたかったので」
「プレゼントだと?」
「グラビィティドライブですよ。気に入って貰えましたか?」
我が軍の最新技術の提供先は敵軍だった。だとすると関西帝国の技術はこちらの2年は先に行っている事になる。
「大変ありがたい提供だった。だが、参考程度に技術提供の理由も教えて貰いたい」
「軍の上層部がもっと強い機体を作れと言うもので、グラビィティドライブが奪われた事も想定して…とか言い出したのでエンジン1個渡したぐらいでエクセリオンを倒せるのか検証したかったのですよ」
意味が分からないが、技術者の性というものだろうか?
新しいモノを作り出す為のモチベーションが欲しくて、その為には軍の勝利などは二の次だと言うのだろうか?
いや、彼の事を悪く言う資格は俺にはない。
俺自身も自分の世界に帰る為にこの戦争を利用しようとしたと言えば大きな間違いではないからだ。
「ではこちらも質問させて頂きます」
「なんだ」
「今回の検証ではグラビィティドライブ1つ奪われた程度では大した驚異ならない…で終わる筈でしたが、そうではなかった」
量産型エクセリオンは撃破されたと言えば良いものだがとても回りくどい表現をする。さては…コイツは賢い奴か?
「量産型エクセリオンは翼の機体…セルドラルというのですかね?アレにやられたのですが、セルドラル自体はまだまだ改良の余地はあると思うのです。我が軍にて更に高みを目指しませんか?あなた程のパイロットならもっと良い機体を扱えると思うのですが」
まさかのオファーである。
彼は古代で流行したサッカーと呼ばれるカゴにボールを入れ合う競技のマネージャーにでもなったつもりだろうか?
だが…元の世界に戻る技術については、関西帝国に所属した方が可能性は高そうだ。
だがその返事1つでは、ここにいる全員から銃殺されても可笑しくない状況である。
「さすがにそこでは返事をしかねますよね」
「返事も何も俺は…」
「そうだ、まずは僕の屋敷に招待しましょう」
天才技術者は少々頭がぶっ飛んでいるのか?
全く思考が読めない。
「僕は関西も関東も干渉できない所に屋敷を構えています。軍なんて言う小さい括りは放置して話をしませんか?…おっと、これ以上話を長くするとこちらの軍に嗅ぎつけられるので今回はここまでにします。後日迎えに行きますので是非遊びに来てください」
「ちょっと待て、俺は」
確信した。コイツは自分の都合ばかりを話して人の話を聞かない…否、既に聞いていない。
一方的に連絡し、一方的に話をきるとは。
だが気になったのは両軍が干渉できない地域など考えるとSGAだろうか?何か似た流れを感じる。
だがSGAの関係なら俺の事は既に把握しているだろう。だが演技の可能性もある。彼との接触には関心があるが、かなり危険を伴いそうだ。
「アマギ君、どうするつもりですか?」
オルクライト教官が口を開く。
教官に聞かれると複雑な気分になる。数少ない陣営移動の経験者に聞かれるのは何やら心外な気分ではあるがここでハッキリと伝えないと周囲に不安を与えることになる。
「俺は関東軍の高校生です」
正直陣営に興味は無いが苦楽を共にした仲間達を見捨てる事はできない。
半泣きとなっていたアオイを見てしまったら元の世界に戻る技術など、どうでも良くなった。
どうせ戻ってもこんな美少女は俺には振り向いてもくれないだろう。
って俺はなんと言うことを考えているのだ…くそ、まだフィールド魔法【ツリバシ】の効力が続いている様だ。
ブラックボックスは一連のやり取りを終えると完全に機能を停止して何も受け付けなくなった。
レンツ ・EC・ウェインは恐らく魔術師である。奴はいずれ会わなくてはならない存在であろう。
この接触が俺になんの意味をもたらすのかは今はまだ分からない状況だった。
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魔法の強敵は圧倒的科学力の伏線を貼らせて頂きました。
次のステージは学園編がメインとなりますが、今後とも「魔法の力でロボット大戦を無双する」を宜しくお願いします。




