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初デートは硝煙の香り

「これはどう言う事だ?」


 休み当日に待ち合わせ先にやって来たのはアオイ1人であった。俺はてっきりSクラスの面々で出かけるものだと思い込んでいた。このまま親衛隊に目撃されたら俺は間違いなく処刑対象となる。


「これが、デートと言うものです。今日は私の先導で動きますのでちゃんと着いてきて下さい」

「了解したが……アオイさん……もう少しだけ目立たない格好は出来ないのか」

「私だって休みはオシャレ位します」

「そう言う意味ではない……君は学園でもアイドル的存在だ、君が男子と二人で歩いているだけで周囲は混乱と混沌に包まれるだろう……帽子を被るとか、伊達メガネをするとか……」

「そんな大袈裟な」


 休みに出歩けると行っても学校が指定した範囲内である。学生の活動範囲として、テーマパークなども範囲に含まれているのだが、行く先々は附属高校、附属大学の学生ばかりになる。


「大丈夫だよ、さぁ行きましょう」


 アオイに先導されるがままに、テーマパークに向かった。アオイ親衛隊の襲撃に備え、俺は【フィールド・トレース】だけは発動し、周囲の情報を取得しながらのお出かけとなった。


「まずは、この観覧車に乗ります」


 観覧車……もっと高機動なスレイブを操縦している我々がこれに乗った所で何になると言うのだろうか?

 順番が回って来ると二人で個室入り数分間監禁された状態となる。


 いかん.....


 これは先日の古代より伝わるフィールド魔法と同じだ……密閉された空間に異性と二人、それもこの様な高所でとなると何か間違った感情が芽生えそうだ。フィールド魔法……【吊橋】恐るべき魔法である。


「何でそんなに震えてるの?」

「言うなれば高い所があまり得意ではないというか……」

「嘘だ、スレイブであんな無茶苦茶な動きをしてるくせに?」

「自分に制御があるのと無い事の差というか……」


 早くも動揺が見破られた……流石はセンスティブ……。


 すると俺達は対面して座っていたのだが、アオイがこちら側に座りなおす。

 2人が同じく方に座ったため、カゴは傾いた。


「こうなるとバランスが悪くないか?」

「こっちの方がムードが出るでしょ」


 ムードだと?既に俺の心臓の鼓動は最大級となっている。俺の心臓を破壊するつもりか? もしやアオイはSGAのスパイなのか?俺が軍の機密に関わる様になった為、古の暗殺拳の様に内臓から破裂させて亡きものにしようとしているのでは無かろうか


「これだけ機動兵器のバランサーが発展した世界でたった2人の体重で傾き過ぎだと思うのだが」

「これはすごく昔からある乗り物で、あえてバランサーを積んでないみたい。こうやってカップルの親密度を高めようとする乗り物なんだって」

「成程……後学の為に覚えておこう……待てよ、そうか敢えてバランサーを切れば良いのか」

「はい?」


 反重力負荷軽減システムにおいて、フォーススレイブ等の機体で、飛行中にフレームのバランサーが稼働する必要は無い。ブレインフィードバックが作動した時のみ作動するタイプのシステム……


「こらーー」

「どうした?」

「折角の休みでに女の子と出かけてるのに機動兵器の事を考えてましたね」


 正解である。だが、俺にも言い分がある。この際だからしっかりと伝えておこう。


「担当直入に言う」

「言い訳なんて聞きたくないです」

「本音を言うと、君が側に居るだけで心拍数が上昇し、軽い動悸が起こる。原因は不明だが、結果として理性を保つ事が困難となる瞬間がある。その為、敢えて他事を考えて自分を保っている節がある」

「すごく難しい言い回しなんだけど」

「簡単に言えば、アオイと二人っきりになると……」

「なると……」


 その時、俺の【フィールド・トレース】が不審な人物を捉えた。

 俺は即座に【イーグルアイ】に切り替えて周囲を探る。瞬時に魔法を切り替えたため、一瞬俺の瞳が発光する。それをみたアオイは俺が何かを察知した事に気づいたようだ。


「どうしたの?」

「馬鹿な、何故奴らがここに……」


 俺が捉えたのは恐らくSGAのメンバーだ。確証はないが、【イーグルアイ】の捉えた感覚からすれば先日対峙したアヴュー・ウィンである。SGAのエースパイロットが何故このテーマパークに……


「だとしたら不味くない?」

「確証はない上に、目的が分からない……何故この様な場所に」

「もしかして……観光?」

「敵視されている領土のテーマパークで観光はしないだろ」


 俺の顔が割れている訳でもないから大袈裟な動きをしなければ狙われる事は無いだろ。少し近寄って様子を見るか。


「これからアヴュー・ウィンと思われる人物に接近する……危険だからアオイは帰るんだ」

「でもここはテーマパークだよ、怪しまれずに接近するにはユーゴくんが1人で歩いているより、私と一緒の方が自然だよ」

「一理あるがリスクが……」

「大丈夫、彼に私達が何者なのかは彼には分からないから自然にしていれば大丈夫です」

「了解した」


 俺はアオイが自然を装える様にアヴュー・ウィンらしき人物は教えずに接近する。するとすっと手を握られた。


「アオイさん……いったい何をされているのかな?」

「こっちの方がここでは自然だよ」


 いかん……敵軍のエースがいる緊張感よりもこっちの方が緊張する。いい加減しっかりしろ俺。国防の運命を握るかも知れない瞬間に目の前の女子に心を奪われているなど、あってはならん事だ。


 ある程度接近したが、彼らは席に着いて動かない。俺達も席に着くがこちらを気にかけている様にも見える。誰かと待ち合わせでもしているのだろうか? あまり長時間になると怪しまれるかも知れないな


「そうだ、丁度良いからお弁当にしましょう」

「何?そんな用意が」

「はい。朝から頑張って作って見ました」


 そこに展開されたのは、おにぎりに始まるお弁当であった。だが、ここでランチをしていれば、座り続けている事に大きな矛盾は生じない。


「ユーゴくんって何時もご飯を食べてて、パンや麺類って食べないよね」

「昔から米食が中心で、要するに好きだと言う事だ」


 監視でもされていたのだろうか? おかずも俺の好みのもので構成されている。その手の話は誰にもした事はない。トーマが俺の食の好みを理解している程度……そうか……奴か……。俺はお弁当に対して、トーマから教わった通りにコメントをする。


「美味しいな」

「ホント、嬉しい」


 このまま行くと普通にカップルにでもなった錯覚をえる。だが今は、最大の敵と僅か数メートルの距離にいる。油断は出来ない。


 そこでアヴュー・ウィンに数名の男と女の子とも言える子供が接近した。

 やり取りの情報を得るつもりだったが、頭の中は上手な卵焼きに知覚領域を持っていかれている。

 そこに俺以外のものが展開した【フィールド・トレース】が見えた。


 それは、俺以外に魔法が使える者の存在を意味する。唐揚げを頬張りながら俺はそちらに注意を向けた。

 次の瞬間である。パークの乗り物で爆発が起こる。直前に察知した俺はアオイ連れて物陰に伏せ爆発をやり過ごした。

 ハンドガンを構え周囲に注意を払う。アオイは大丈夫そうだが、周りの状況までは分からない。

 アヴュー・ウィンを探すが見つからない……と思ったら同じ場所に身を潜めていた。


「学生か……大丈夫か?」

「どうにか」

「君の動きをみて爆破を察知できた……感謝する……」

「自分は何も……咄嗟に反応できただけで……」

  「咄嗟にしては、反応が速かった……いや速すぎだな」


 不味いバレたかもしれん。殺られる前に仕掛けるか。


「完結に言うと、俺は君の国外の者だ、訳あって今はここに居る……撃ちたければこの場で俺を撃てばいいが少しばかり猶予が欲しい」

「敵国って認識で良いですか?」


 俺はアヴュー・ウィンに対してハンドガンを向けながら問う。


「差し支えはない。だがこの子は違う……難民であるこの子を逃がすまでは猶予が欲しい」


 銃声が鳴り響き、複数の兵士が流れ込んで来る。【イーグルアイ】の索敵範囲に幾つも謎の武装集団の存在が確認できる。


「この子は私と同じ力がある」

「なんだと」


 アヴュー・ウィンが連れている。難民と言われた少女が言う。

 同じ力……魔法の事か?この言葉から推測すると先程の【フィールド・トレース】の使い手は彼女である可能性が高い。【マインド・トレース】までは使われた形跡はない為、流石に俺ほどの使い手では無さそうだが……


「この子達は貴方と逢った事がある。戦闘をしている」

「だとすると……この前の演習機のパイロットだな」

「あまり身に覚えがありませんが……」

「誤魔化しは無意味だ、彼女の力で大凡の事は分かる。そして、彼女はその力故に世界から付け狙われている」


 これは俺も気にかけて居た事である。特質たる能力は時として無駄な争いに巻き込まれる要因ともなり得る。この世界において魔法も例外ではない。彼女がどの様に魔法の力を得たのか気になる所ではあるが……余分な詮索は今は控えよう。


「俺達は軍人ではない……民間の捕虜解放を目的に活動している者だ……もし君が彼女の言う能力者であれば保護対象である」

「保護対象?」

「理由は同じだ、軍の人間は使える人間と判断すると軍属に無いものや、子供さえも利用する」


 そこの点に関しては は否定は出来ないであろう。俺達の学校とて同じカテゴリーだ。そして当たり前の様に学校で軍事教育を受けるのだから、国が主導で子供を利用しようとしていると言って過言ではない。


「ただ君は既に連中の手に落ちている様だな」

「間違っていないでしょうね」


 やり取りの中で明らかにテロリストと思われる連中はこちらに向かってくる。


「敵が何処の軍勢か分かるか?」

「自軍の特殊部隊の可能性はありますが、詳細は分かりません」

「ならば取引だ、俺もこの場から離脱したい。君達も知らない部隊となると無差別に狙われる可能性がある」

「でしょうね。突然の爆破ですからね」

「この場を切り抜けるまで共闘して貰えないか?」


 アオイを守って無事離脱するには単身よりも複数の方が良い事は分かるが、メインターゲットの可能性があるアヴュー・ウィン達と行動したら余計に危険を伴う可能性がある。だが、この混乱している現場さえ離れれば一緒にいた事がバレたとしても知らなかったで済むだろう。


「了解しました」

「後衛は俺がやるから君は自分の彼女とこの子を連れて安全な位置まで離脱して欲しい」


 俺は首を縦に振ると二人を連れて走り出した。


「あの人を信用していいの?」

「今は君を守る事が先決だ、仮に襲撃して来た部隊が味方だったとしても施設ごと爆破する連中だ、俺達くらいの犠牲なんとも思わないだろ……まずは離脱する事、混乱した現場さえ抜ければ味方なら撃たれる心配は無いだろう」


 1つ懸念材料はある。味方では無く、彼らの組織の自作自演の可能性だ。俺たちには何の情報もない。だが【イーグルアイ】の情報からすればアヴュー・ウィンとこの少女が嘘を言っている様には見えなかった。


 迫りくる銃弾を掻い潜りながら走るが、アヴュー・ウィンの連れの少女が息を切らす。戦闘用の訓練を受けていない様だ。本当にただの難民の可能性が高い。


「大丈夫ですか?」

「すみません。普段運動などしないもので」

「もうすぐ外に出られます。そこまで頑張って下さい」


 走りながら俺はハンドガンを数発発射して柵を破壊する。【イーグルアイ】の索敵能力を活かし、謎の部隊を無事掻い潜り外まで脱出することができた。


「やはりあなたは未来が見えるのですか」

「流石にそこまでは」

「私が見えたルートをあなたは走り抜けました。同じ能力を持っていると思います」

「詳しくは分かりませんが、だとすると相性が良いのかも知れませんね」

「私は、リリス・カシャード。もっと大きな世界では貴方の力が必要です。どうか私達に力を貸してください」

「貴方達は一体何を……」


 リリスの話を聞いていた所で、アオイが地面に抑え付けられた。相手はアヴュー・ウィンである。


「女の子にあまり手荒な真似はしたくないが」

「そう来るか……」

「アヴュー辞めてください」

「命までは取りたくない……まずは銃を捨てろ」


 なんとも人質に取られやすいアオイだが、今のアヴュー・ウィンの接近は俺にも察知出来なかった。


 諦めて銃を地面に置く。


「お前に1つの事実を伝えたい。俺達と来い」

「俺を捕虜にしても誰も取引をしませんよ」

「俺はお前に伝えたい事実があるだけだ」

「応じなかった場合は」

「少々2人には痛い目を見てもらう事になる」

「ユーゴくん1人なら逃げられます。聞いちゃダメです」

「君を人質に取られて自分だけ逃げる訳には行かない」

「交渉は成立だな」


 アヴューはアオイに対して何かを打ち込んだ。


「心配するな麻酔銃だ、一時的に動けなくなるが直ぐに回復する」

「心配しなくても俺は抵抗しませんよ」

「ユーゴくん、ダメェェ」

「アオイ、折角の日にすまない。君は無事に逃げて欲しい」


 両手を差し出すと両腕の自由を奪うようにロックをかけらた。目隠しなどは無かったが、恐らくリリスと同じ能力と思われているのであれば、目隠しは無駄だと知っているのであろう。数分後に以前戦った可変機体が迎えに現れ輸送用スペースに格納されるとそのまま連行されて行った。


 国の為に戦う決心もなくは無かったが……SGAと接触し、元の世界に戻るヒントがあるかもしれないと思うと絶望ばかりではない。後はなったなりに考えて行動しよう。


物語も新展開を迎えます。この展開は執筆した中学生当時にはない構想であり調整に手間取っております。

いくつか作った作品のキャラを登場させてますので特にユーゴとアヴューは主人公同士の組み合わなのですが、似たもの同士で若干描きづらさがあります。

仕事の都合で更新が大分遅れましたが引き続き少しずつ書いて行きたいと思いますので今後とも宜しくお願いいたします。

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