魔法の力でも嫉妬心は理解できない件
「すげーフルスロットルのスピードがハンパねぇ」
「空を自由に舞い、後は敵を刺せたら最高のなんだけどね」
新型のフォーススレイブをテスト中のマイとゴウ。先のSGAとの戦闘を受け、我が軍の技術では可変機は難しく、機動陸軍では防衛戦が主となるため変形機構をオミットして、スミト大尉の機体のブルーブレイバーと同様に飛行ユニットを装備した機体へ方向転換し、ロールアウトされた。
飛行できる事は大きなアドバンテージだが、もちろん墜落などの危険も隣り合わせの機体であるため、使用は一部の兵士に限られている。俺達は空軍との合同演習を経て、フォーススレイブの使用許可を得ていた。
「ゴウくん、そろそろ降りないと戻れなくなるよ」
「了解」
マイと共にゴウが戻ってきた。
「1年Sクラス、村上ゴウ帰投しました」
「同じく如月マイ帰投しました」
「お疲れ様でした。二人とも完全にフォースのコントロールが出来ていますね」
「オルクライト教官の指導の賜物であります」
「調子のいい事を言っていますが、村上くんはペーパーのテストでは散々だったので講義を聞いていたのか怪しいものでしたが」
「自分は実践派でありますから」
やれやれと言う顔つきのユリーシャ・オルクライト中尉だが、ゴウの性格にはもう慣れたようだ。オルクライト中尉は、スミト大尉の部隊の精鋭スナイパーであり、秘書も兼ねている。スミト大尉は機体の再設計で動けない間に、俺達の実地指導教官としてSクラスを担当している。
訓練は厳しいが、指導は的確であり。厳しさと優しさを兼ね備えた理想的な教官と言える。素性は知れないが、こんなパーフェクトウーマンが何故我が軍に寝返ったのかは謎である。
「次は、氷川くん、水無月さんの番ですが少し待ってて下さい」
「そう言えばユーゴはどうした?このフォーススレイブを扱うなら既に立体的な戦闘を行っている奴の方が適性が高いだろう」
「そうですね。小川くんは何か知りませんか?」
アオイはルームメイトのトーマに俺の事を訪ねた。
「ユーゴなら連日大学の研究室に通ってるよ。朝早く出ていって夜は遅く戻ってくる……余っ程大変な研究に関わってるのかな?」
「ユーゴくんは指定強化生徒だから軍の命令であれば訓練を放り出しても出ていけるのね」
「あらあら、旦那が不在でアオイも寂しいかな?」
「マイちゃんったら。そう言うつもりじゃないよ。ただユーゴくんって体験編入の時から次から次へと問題に巻き込まれて、疲れのせいでこの前だって高熱を出してたから」
ちなみに先の高熱の原因はアオイに対する緊張で心臓が爆発仕掛けただけだと言うことは誰にも伝わっていない。
だが、それも慣れない戦闘の過緊張状態が続いたストレスと医者が言えば皆がそう思うだろう。
「心配よねぇ、大学のお姉様とかと親密になってるかも知れないし」
「ユーゴ程の騎士がそんな事をする訳がないだろ」
「いや……騎士とか思ってるのはアサヒだけだぜ。そもそも新システムの話なら大学の教授とかとやるんだろ?相手はオッサンばっかじゃねーの?」
「そうかな?」
「ユーゴから場所は聞いてるよ、この後お邪魔して見る?いつかは僕達も関わるプロジェクトだから関心があったら見に来て欲しいって言ってたよ」
「いいねぇ、行ってみようぜ」
そして訓練が終わる頃……大学にSクラスの面々がやって来た。
「そろそろ入れてみて良いですか?」
「いいわよ、ただ初めてだから優しくしてね」
「了解です。ただ、自分もどの位が適切なのか良いのか分からずで」
「そうよね、お姉さんが手伝って上げるから力を抜いて」
「確かにここのはずだけど……何か取り込み中かなら」
「ユーゴくんの声はするけどなんか……」
「あっ待って天城くん、ちょっと急すぎる」
「すいません。早すぎましたか?」
「そうね。初めはゆっくり動かして」
そこで研究室の扉が開いた。
「ユーゴくん!一体何やってるの?」
アオイがノックもせずに研究室へ入ってきた。
俺は簡易シュミレーターのバイザーをかけたままだったので何が起こったのかは分からなかったが……アオイの声は聞き取れた。
「あらお友達かしら?」
「その様です、一旦中止しても宜しいですか?」
「いいわ、ゆっくりと機体を元の位置に戻したら外していいわよ」
俺は多村先輩の指導のもと、新型フレームのシュミレーション上の駆動系の負荷のデータを取っていた。実際に動かして、極わずかな負荷で起こる摩擦に対しても反重力アブソーバーが正常に動作しているかをテストしていたのだ。
「あ……そう言う事だったのね、紛らわしいやり取りしてたものだからてっきり新たなスキャンダルの予感がしてたのに残念。しかし……キレイな先輩ね」
「あぁ、紹介するよ、エンジュニアコースの工学科専攻の多村ミナト先輩だ」
「初めまして、高校生Sクラスの皆さんかな?」
「はい。以前からお話している機体のパイロット候補生達です」
自己紹介をした後に、俺は現在開発中のエネルギー保管型フレームと半永久的エネルギー変換システム、フレーム保護の為の反重力アブソーバーについて説明をした。
「……なんだかユーゴは天才科学者にでもなったのか?」
「何を言っている?俺は元々エンジュニア志望だ」
「いや、志望があってもここまでの理論をいきなり構築して再現出来ないよ……普通」
俺は確かに普通ではない。実現可能かどうかは魔法で実験行い、実現出来たものを技術で再現出来るかを検討している。フレームへの負荷軽減は魔法上可能なので、人間の魔法力で再現しているものを機械化さえできれば直ぐに実用が可能なのだ。理屈よりも先に現象が完成している為、遠回りは少ない。
「なんつーかさっきまでフォーススレイブで空を飛んで喜んでたのに、他って置いたらユーゴは瞬間移動とかしてそうだな」
「面白い事を言うな……ゴウ……だが実は不可能では無いかもしれない」
「えっ?マジ?」
「空間跳躍は理論上は不可能ではない。何らかで機体やパイロットの構成要素を分解して移動させ、移動先で再構築する事ができればの話だが」
「それを不可能と言うんだぜ」
ゴウはそう思うかも知れないが俺は事実として空間跳躍にてこの世界にやって来たはずだ……それがどの様になされたかまでは分かっていない。そこが解明できればあとは目標点の指定だけである。
「それはそうとしてユーゴ……新型のフレームが出来ると具体的にどの様な変化が起こるのだ?」
根は天然だが、アサヒは機体に関する事は興味がある様だ。俺は皆に対してこのフレームと熱エネルギー変換システムの有用なフォーススレイブのデータを引き合いに出して説明した。
フォーススレイブは飛行を可能としているが、エネルギー系統を全て飛行制御及び、高速飛翔時の空気抵抗軽減バリアに持っていかれる。その為、レーザー兵器を使う事が出来ず、実弾兵器を用いる事になる。しかし、実弾兵器もウエイトの都合上あまり装弾する事が出来ない。つまり空中戦闘は難しくあくまで、移動用のレベルである。
だが、新型のフレームを搭載する事で、フレーム内のエネルギーを武装に回せば、今は固定砲台でしか反動の都合上撃てない我が軍の現行最高の出力を誇るレーザー兵器、レーザーランチャーを撃つことが出来る。
「ならばフォーススレイブで高出力レーザーソードを構える事も可能か?」
「問題ない。別の研究室に依頼をしているが、加速式収束レーザーソードも開発中だ……それを持ってすれば、SGAの機体に十分ダメージが与えられる」
「ユーゴ……騎士として俺の機体へ配慮を頼む」
「実際にアサヒとマイがSGAと戦うには必須になるからな……今度データを取らせて貰う」
「え?ユーゴくんは機体のデザインもやるの?」
「あぁ既にスレイブを超える為の新型のコンセプトは軍に認可されている」
「なんか、あっという間に雲の上の存在だね」
「何を言っている……訓練が遅れているのは事実だ」
マシンデザイナーとしても軍から参加を承認された。実際は前の世界の色んなタイプの魔術師の動きを再現出来る機体をデザインするだけで優秀なコンセプトと評価を受けただけなのだ。機体の開発は急務であるが、訓練で他のメンバーより遅れを取っていることは気になっている。しかし、今の機体の訓練よりも、新機体を早急に仕上げる事が優先だ。
「所でちゃんと休んでる?」
「今も休んだいる様なものだが?」
「いやいや、絶賛稼働中だよ……それは……」
「また倒れたりしないでよ」
「問題ない、1人で何かをしている訳じゃないから最悪は先輩が止めてくれるだろう」
「それが心配なの」
「ユーゴくんは乙女が分かってないねぇ」
そりゃ分からんさ……俺は男だ……
「天城くん、今週は休んで、そこのガールフレンド達と遊びにでも行ってきたら?」
「遊びと言いましても自分は……」
「健全な男子があまり部屋にこもっていてもね」
「大変失礼ながら先輩も同様な生活を送られている気がしますが……」
「そうね、だったら私と出かけてみる?」
その瞬間、アオイから凄まじいプレッシャーを感じた。背筋が凍りつき……動きが止められる様だ。魔法を使っている訳でもないのに伝わってくる凍りついたプレッシャー……なんだこの力は?
「ユーゴくん、私が色々連れて行って上げますから、一緒に来てください」
「いや……特に行きたい場所などは……」
「なに?ユーゴくんはキレイな先輩の方が良いの?」
声を上げるアオイ……まだ自覚は無いのか?俺が君に関わると多くの生徒が悲しみに浸る事を……
「アオイさん……誤解されてませんか?キレイだとかそう出ない等は関係ないのだが」
「先輩の誘いは断って無いのに、私の誘いは断ってます」
「いや……その……えーっと」
魔法の力を持ってしてもここの突破方法が分からない。
そこに救世主……にはなり得ないアサヒが口を開く
「ユーゴ……騎士ならば、半端は良くない。正々堂々付き合う相手を決めるべきだ」
「俺は断じて騎士ではない。だが……」
「別にいいじゃねぇか、1日位出かけたって罰は当たんねぇよ」
「最近遅くなってばかりなんだから、たまにはゆっくりしなよ。水無月さんが誘ってくれてるのに断るなんて失礼だよ」
「そうなのか?」
「女性に誘われたら基本行くのがマナーなんだよ……覚えて置くといいよ」
トーマは意外とその手の事にも精通している様だ。
「了解した……」
よく分からないまま……アオイ達と出かける約束をしてしまった。
この間にもSGAの侵攻があるかも知れないと言うのに……。
さてさて……益々意図しない方向へ話が進んでおりますが学生だった当時と自分を重ねておりますが……今の子達とは時代が変わってますよね……
次あたりからは新展開に向けて修正して行きたいと思います。




