表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

魔法の力を科学する件

 衝撃の親睦会から数日後の事だ。俺は軍の附属大学に呼ばれていた。エンジュニアコースの研究チームと新たなシステムの打ち合わせをしていた。


「つまりは、エネルギーを加速させる事で同等のエネルギーでも貫通力を増す事ができるのです」

「通常の出力の差は?」

「機体のジェネレーターの差かも知れませんね、回収した敵機のレーザーソードの優れた点はレーザーソードの刀身固定粒子の加速性だけですね」


 俺はSGAの機体の秘密に迫るべく、唯一回収できたレーザーソードの解析を試みたが、そこには機体性能差を解析できる要素は無かった。

 おそらくは本体以外の武装は汎用型であり、機密に関わる部分は渡らないようにされていると思われる。


 敵機の解析が不可能であった事を確認した後に俺は1つの理論を提案した。

 俺が提案したのは熱エネルギーを音に変換し、音の振動波形をもって、電力エネルギーに再変換する事である。理論上は可能であるが、エネルギーのロスが大きい為、基本的には無駄の多いシステムである。


しかし、俺の魔法を以てすれば空間の振動を意図的に起こす事は可能である。


つまり、一定の兵器を使う時だけ【コンプレッション】を二重に発生させて空間を振動させれば、意図的にエネルギーを引きだせる。また、反重力システムを使えば、それを無限に引き起こす可能性もあり、将来性のあるシステムと考えたのだ。


 熱を音に変えるのは一時的なアイディアに過ぎないが、機体の排熱効率を上げ、実質的な稼働時間の延長と、高出力兵器の使用による機体のダメージを緩和が出来る可能性もあった。


「問題は最大出力を扱えるのが一定の熱量を帯びてからという事かですね」

「これが出来れば1つの半永久機関とも言えるエネルギーができる…かも知れない……と言うレベルの話ですが……」


 一先ずアイディアは固まった。ミーティングを終えると俺は研究室を後にしたが、そこに1人の女性が声を掛けてきた。


「こんにちは、少し時間頂けるかしら?」

「はい。どういったご要件ですか?」

「私は工学部2年の多村ミナト。あなたの理論を聞いて興味を持ってね。私の開発しているエネルギー保存方法について意見をもらえないかしら?」

「自分は天城ユーゴです。附属高校1年の自分が、先輩方にご意見できる立場とは思いませんが……」

「君の理論は実現しても居ないのに何処か現実味があるもののように感じた私の直感よ。だからあなたも率直に答えてもらっていいわ」


 どうやら大半の人間は俺の理論は指定強化生徒が持ってきたからしょうが無しに聞いてるといった姿勢だったが、この先輩だけは熱心に聞いて居てくれた様だ。


「私達の研究室にきて貰えないかしら」

「了解です」


 向かう途中で、不審な気配を捉えたが大学の事は全く分かっていない為、少し泳がせて様子を見る事にした。


 多村先輩達の研究室に案内され入室した。すると、とても女性メンバーの研究室とは思えない程に散らかった部屋がお目見えした。しかし、見方を変えれば研究の真っ最中と言う感じもする。


「あなたの考える熱変換型の半永久機関はとても魅力的な理論だけど何故音をベースにしたの?」

「厳密には熱エネルギーの変換に振動を利用したいと考えています。先輩のお考えも察する事はできます、エネルギーを中心に考えれば、無駄は大きいとお考えになるかと思います。しかし、実戦の継戦能力において、熱の問題は重要なファクターでして、出力の高い兵器を用いるのにも放熱の問題は外せません」

「あえてロスになる物をエネルギーに変えようと言う発想はとても素晴らしいと思うの……私達の理論はその半永久機関の方に期待しているの」


 多村先輩の研究は人間のエネルギー理論を模したものだ。人間が扱うエネルギーには糖が存在する。摂取された糖はグルコースと言うエネルギー物質になるのだが

必要量以上の摂取をした際にはグリコーゲンと貯蔵物質に姿を変え必要な際には再びグルコースに戻して使う働きがある。


 それだけではただエネルギーを蓄えるだけに過ぎないのだが、人間はグリコーゲンを筋肉にも蓄える性質がある事に着眼し、機体のフレームや装甲部分にエネルギーを蓄えるシステムを用いてエネルギーの貯蔵量の拡大を目指すと言うものである。そこに永久及び半永久的エネルギー生成の理論が成立すれば、消費エネルギーの少ないタイミングで蓄電し、更なる稼働時間を誇る機体を開発できるのだ。時間もさる事ながら、扱える出力向上が期待できる。


「後はエネルギー貯蔵庫にもなる装甲とフレームの強度ですが……」

「問題はそこなの……装甲は損傷する可能性もあるし、フレームは駆動負担でダメージを常に負っているから……」


 装甲は神業だが、無被弾を貫くか、圧倒的なフィールドを展開するなどの方法が無い訳では無い。フレームは先の戦いでも俺の動きを続ければ、新型のスレイブでも長時間の戦闘は難しい。……荷重負荷を軽減出来れば……


 待てよ、反重力システムで簡易足場を形成できる【コンプレッション】を再現出来るなら、反対の理屈の圧力を逃がして使っている【ディストーション】も再現できる可能性がある。

 フレームに対してブレインアシストの情報を合わせてオートで圧力分散コントロールをかければ……いや推進力が減ってしまう……だがフレームからの見直しに出力向上が期待できる可能性は大きい。


「先輩の研究に協力させて下さい。自分の求める機体に必要になります」

「どうやらビジョンを共有して貰えた様ね、助かるわ」


 詳しい事は後日データを送る約束をして連絡を先を交換し俺は多村先輩達の研究室を後にした。


 次は怪しい気配について少し調べるか……


【フィールド・トレース】を用いて視野を拡大すると、2人組の怪しい男子学生を捉えた。


「先輩方……少しよろしいですか?」


 俺は物陰に隠れている2人男子学生に声をかけた。慌てる2人を見て、何かある事を確信する。問題は敵軍のスパイならば、今のエネルギー理論などを聞かれていたのはまずい。大学には、軍の最新システムなどの研究が持ち込まれているため、スパイに狙われる可能性が非常に高い。セキュリティはしっかりとしているが、万全とは言えない。場合によっては特例を用いて補導する事も検討しなくてはならない。


「なんだ、高校生が俺達に何かようか?」

「いえ、どちらかと言うと先輩方が俺に用があるかの様だったので声をかけさせて頂きました」

「いや……俺達はお前には用はない」

「では、多村先輩に御用ですか?」


 そのやり取りが聞こえたのか多村先輩が駆けつけた。


「天城くん大丈夫?」

「いえ、こちらから声をお掛けしたので問題はありません。てっきり自分に要件があるものだと思い込んで居たのですが、どうやら先輩の方に御用だった様です」

「私に用事ですか?」


 多村先輩が声を掛けると2人の男子は固まっている。スパイにしてはレスポンスが悪いが油断はならない。


「多村ミナトさん、俺とお付き合いをして下さい」

「お引き取り下さい」


 即答だと!いやそんな事はどうでもいい、そんな事の為に……しかも2人でって。【マインド・トレース】を用いるが、告白した方の撃沈っぷりからしても本気で告白をしに来た様だ。


「私、基本男性不信なのよ」

「そんな……」

「何故、男性不信とか言っておきながら、そこの高校生は個室に入れて」

「基本って言ったでしょ。例外はあるわ」


 俺は男性と見なされていないと言うことか。確かに多村先輩も綺麗な方だ。スタイルも抜群に良い。この男子学生の気持ちも分からんでもない。


「私は工学が恋人なの、せめて私の関心が向く理論でも展開出来たら考えるけど」


 なるほど、俺が例外なのは俺の理論がお気に召したからか。


「その点、天城くんはとっても素晴らしい理論を持っているわ。理論は技術者の信念。信念のない人には興味ないの」

「この高校生が……」


 失意の最中、なんでもない高校生と比較されたの非常に可愛そうだ……多村先輩は少し機械以外の扱いを学ぶ必要があるかもしれない。このまま行くと俺にあらぬ被害が及ぶ可能性が…


「面白い…高校生よ、俺と勝負しないか?」

「勝負と言いますと?」


 まずい、予想した通り悪い方向に風が吹いている。彼は確実に俺に対して陰性感情を抱き、八つ当たりとも入れる感情を向けている。


「模擬戦だよ、高校生ならやってるだろ」

「自分は高校生ですから先輩方には勝ち目はないかと」


 逆恨みにも程がある。ひとまず俺の事は知らないらしい。この世代はSクラスを作ってもらえなかった世代…今の俺の立場など分かってもらえるわけもない。

 問題は実機なら負ける事は無いだろうがシュミレーターの場合は俺に勝ち目はない……いやそもそも勝つ必要も無いか……


「シュミレーター室に来い」

「ちょっと待てはどうせなら実機演習が見たいわ」


 男の提案に対して、多村先輩が口を挟んだ。意図が分からないがエンジュニアコースの生徒が果たしてどれほどの力を持っているだろうか。関心はあるが、無駄な目立ち方はよくない気がする。


「……良いだろう、高校生に実機の難しさを教えてやるよ」

「勝負に手を抜くのはなんのデータも取れないし興味はないわ、ただ私のお願いだから勝てたらそれなりの対応はするわ」

「なら、勝てたら俺の事を」

「一応考えてみるわ」


 まさかの実機戦に……とはいえ、【イーグルアイ】や【ミラージュ・トレース】を使わなければ普通に負けられるだろう。


「天城くん、勝ってくれないと私、あの人とお付き合いを考えないといけなくなったから絶対勝ってね」


 これはハメられたのか?恐らく、多村先輩は俺の実力を見る為に実機を選ばせたのでは無いだろうか。

 いや…データを取るには実戦という事なのだろうか?


 大学ではアームズによる実機演習は直ぐに行えるらしい。サクッとスタンバイを済ませると模擬戦が開始される。

 スタートの合図で機体が射出された。

 エンジュニアコースの演習ルームは非常に狭い。施設そのものは高校の方が充実している様だ。しかし、エンジュニアコースとはいえ相手は大学生だ、油断ならない。

 しかし、今回はあえて魔法を使わずに挑んで見ることにした。


 開始時に相手はレーザーライフルを撃ちながら前進してくる。本来は連射出来ないのだが、大学生はマニュアルで連射を再現している。これはテクニックとしては参考になる。

 素晴らしい技術だが、狙いが素直すぎて魔法に頼らずとも回避出来る。

 ライフルで俺を動かしてレーザーソードで詰める。考えて見たらアームズにはこのパターンしかない。コレでSGAと張り合うのは難しい。

 こちらもレーザーソードで受け止め、反対に構えたレーザーソードで手首を切り落とす。【フィールド・トレース】に頼らずとも二刀流を制御できるレベルになった様だ。


「高校生の分際で」

「すいません、先輩と約束がありますので」

「貴様、まさか多村さんと付き合うつもりか」


 何故だ、この学園は人の話を聞かない妄想癖が多すぎる。俺はそんなことは一切言っていない。聞いていなかったのか、彼女は男に興味はない。単純に理論に関心があると言っていたではないか。


「油断するな、二刀流をそこまで使いこなすのはかなりのスキルが要求されるはずだ、そいつはそこそこできるぞ」

「俺だってエンジュニアコースでは操縦はトップだ。高校生何ぞに負けられるか!ここで負けたら多村さんが」


 もうだめだ、手加減して負けて差し上げた所で特にメリットは無さそうだ。敵の左に構えられたレーザーソードの振りかぶりに対して収束率を落としたレーサーライフルでかく乱する。


「この攻撃は…間違いない!奴は紅い閃光だ」


 馬鹿な、レーザーライフルの拡散照射で異名が通っている。本当に良いのか、このレーザーライフルの使い方だけで広がる紅い閃光と言う2つ名……


「って事はこいつが青島大尉を倒したっていう」


 その隙に接近して二刀流で切り抜けた。アサヒの必殺技、堕天真空斬である。すり抜け際に先輩の機体をバラバラにして戦闘不能に追い込んだ。


「すごい…これが紅い閃光の力…」


 俺自身も魔法に頼らずここまでやれる力がついていることに驚いた。高次元での連戦が俺を押し上げてくれたようだ。自分の力がここまで上がっていたとは、これならシュミレーションでもそこそこやれそうだ。


「本当にすごいね、紅い閃光の天城ユーゴ」

「先輩もその名をご存知でしたか」

「すごく有名よ、伝説のパイロット、蒼い雷青島スミト大尉を単身で撃破した高校生って、私もその力みてみたかった」

「訂正させて下さい。自分は1回足りとも紅い閃光などど名乗った覚えはありません」

「異名なんてものは自分で名乗るものでは無いし、周りが勝手に付けるものよ」


先輩…俺のクラスメイトには自分で2つ名を名乗っている奴がいるんですよ。

勿論この想いが彼女に届くことは無い。


 俺の事を知っていて実戦を吹っ掛け、俺の力を試したのか…人が悪い。

いやこれが研究者としての性かもしれない。だが先輩は満足させることができた様だ。


「天城くん、私…君の為に最高のシステムを作りたい」

「あ…ありがとうございます……恐らくですが近い将来、先輩の研究する技術が我が軍には必要となります。ですからお力をお借りしたいと思いますのでよろしくお願いします」


 SGAと対抗する為の機体を作るために動き出したのだが、さっそく良い方向性が見えてきた。動きに耐えられるフレームと出力の問題が一番大きいがそこがクリアできそうな展望が見えた。俺は早くシステムを構築し更なる戦いに向けて準備しなくてはならない……


あれ?本当にこの世界を救う事に使命感すら覚え初めている……大丈夫か……俺。



機械の技術的な話苦手なので人体の生理学に基づいた展開にしてみました。実際に出来るのかはよく分かっていないのですが、できる世界にいるというイメージを読者様の脳内で補って頂ければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ