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魔法の力で飛び級の飛び級をした件

「ここは?」

「やっと目を覚ましたんだね」


 俺が意識を取り戻したのは医務室だった。側にいたアオイが誰かを呼びに行った様だ。

【フィールド・トレース】で周囲の状況を確認したが、本当に学校に戻って来た様だ。


 数分でスミト大尉が入ってきた。


「どうだい気分は」

「特に問題はありません」

「まずは改めて先日の非礼をお詫びしよう、本当にすまなかった」

「別に今更どうこう言うつもりもありませんが」

「そして、全生徒の前でも謝罪をしたが、改めて君に対しても……俺の軽率な行動で、生徒に犠牲を出してしまった事を謝罪する」


 スミト大尉の乗るスパークを庇ってバーストスレイブの生徒が犠牲になった件だ。

 パイロットの名前を聞いたが、知らない名前だった。


「謝って済む問題ではないと認識はしている」

「スミト大尉が居合わせた結果、犠牲者が1人で済んだとも考えられます」


 俺は洞窟の中で考えていた。結果として確かにスミト大尉がいながら犠牲者が出たわけだが、そもそもスミト大尉が居なくても、連中の襲撃には合っていたかも知れない……果たして、俺一人だったらあの場は凌げて居ただろうか?

 あのアヴュー・ウィンと言うパイロットと戦う迄にもう少しエネルギーがあった所で勝ち目は無かった。ましてや援軍の機体を相手にする事はまず出来なかっただろう。


「結局奴らは何者なのですか?」

「彼らはSGAと名乗るゲリラ組織だ」

「SGA?」

「詳細は分からんのだが、我が国のやり方に異を唱える団体である」

「先の戦争であなたが戦った相手ですか?」

「その通りだ、先に出てきた機体のパイロットはアヴュー・ウィン、SGAのエースだ。そして奴の父親であるバダムス・ウィンってのが奴らのボスにあたる」

「親子でこちらに喧嘩を売ってくる訳ですね」

「ただの親子なら問題ないのだが、バダムス・ウィンは天才工学者で、奴の作り出す兵器は我が軍の一世代以上は上の性能をたたき出して来る」

「確かに、可変機も全くロスのない変形でしたし、あの赤く光るシステムも脅威でしたね」

「奴の作り出した最新機動兵器はVシリーズと呼ばれ、スレイブはそのVシリーズを模して開発されたのだが…この前の機体は既に以前のVシリーズとは比にならない性能だった」


 話から推測するに、アヴュー・ウィンの機体がアサルトスレイブなら、可変機は開発中の新型、その他にスパークとバーストの様な機体があるということか?

 だとするとアサルト相当の機体のライフルにスレイブの中でも最大火力を搭載しているスパークのライフルが劣っているのは技術的な溝は大きいと考えられる。


「我が軍は人員も少なく、開発技術でも大きく溝を空けられている」

「SGAと戦う前に我々の本来の敵は関西帝国では?」


 俺達、関東帝国は関西帝国と国境を巡って戦争中である。


 先の戦争では関東と関西で連合軍を作り、SGAと名乗るゲリラ組織を退けたが、共通の敵が居なくなった所で隣国同士で統治権を争った戦争が起こっている。


 関西帝国はその名の通り、関東帝国の西に位置し更に西側に同盟国との交易がある為、資源に優れた国である。一方関東帝国はその東側には海が広がるばかりの極東に位置になり、鎖国気味の風習がある。その為か資源は不足し、技術的な進歩も早くはない。


 簡単にまとめるとスミト大尉を中心とした人材の関東帝国、資源の関西帝国、技術力のSGAの3つの勢力が争っている構図となる。


「関西帝国は戦争状態にはあるが、今の所は表立って出てきてはいない」

「ならば、SGAと関西帝国が繋がっているのですか?」

「いや、厳密にはこれまで関西帝国に対してSGAは攻撃を仕掛けており、不確かな情報ではあるが、巨大ミサイル兵器を破壊されたと言う情報がある」

「兵器を狙ったテロ……だとすると今回のSGAの狙いは?」

「奴らの狙いはこちらの新技術、反重力システムだ」

「反重力システム?」

「何処からかもたらされたオーバーテクノロジーで、重力を一時的にコントロールして質量を変換できるシステムだ。未解明な所も多く、コアクリスタルと呼ばれる物質を軸に発生できるという事しか分かっていない。それは、君達が使っていたスレイブにも簡易的なモノが試験的に搭載されている。君が利用した空中姿勢制御も反重力システムの恩恵で成り立っている」


 なんということだ、そんなものは用いていない。奇跡的に【コンプレッション】も科学的に再現されていたのか、俺の得意魔法はかなり機械化されているようだ。この分だと空間跳躍も可能な気がしてきた。


「我が軍は技術的にも戦力的にも大幅な強化が必要とされている……そこで君にお願いがある」

「自分にですか?」

「少し待ってくれ」


 一旦スミト大尉が席を外したが、校長、ユリーシャ中尉と共に戻ってきた。校長の顔を拝むのは、入学式以来だろうか。早速校長が口を開く。


「容態はどうかね?」

「お陰様で特に問題のない範囲まで回復しています。して、校長先生がわざわざいらっしゃるのはどういったご要件でしょうか?」

「さて、天城ユーゴ君、君をSクラスに編入として、軍指定強化生徒としたい」

「Sクラス?」


 Sクラス及び、指定強化生徒とは、スミト大尉の発案の新クラスであり、現状でも即戦力と思われる学生に教育を施しながら、必要に応じて戦闘に招集をかける事が可能なクラスであると。過去にスミト大尉に行った措置をクラス化したものだ。そして指定強化生徒とは、軍に仮登録され、幾つかの軍人特有の権限などが与えられる。スミト大尉以来は該当者が居なかったものらしいが、それに俺を指名してきたのだ。


「今回の演習で君達、水無月班はSクラスの候補生で固めた班だった」

「俺達が適性外だったらスミト大尉からのお灸で終わった訳ですね」

「そんな言い方をするな、実戦を想定し耐えうる人材であるかを確認する為の措置であったのだ」

「ただ、自分達は実戦の様に最大の戦果ではなく、味方の命をとる行動を取りました。軍人としては不適格でしょう」

「スミト大尉を味方ながら狙撃した小川トーマも含め、軍人らしからぬ行動は目立ち、やはり学生の域を出ていない部分があるのは確かだったな」

「だが、俺が戦った感じと共闘した感じでは君の力は申し分ない、既に俺以上のパイロットだ」

「あくまで演習上の話で、スミト大尉の様にセンスティブ特有の兵器を扱う事とか出来ないので」


 訓練機による模擬戦は実戦にスキルがそのまま活きるとは限らない。俗に言うタイマンでは勝てたが、戦場ではまた違いがある。しかし心配なのはトーマである。校長の言葉通りなら完全に成績を減点されているだろう。


「私の方でも天城くんのデータを解析した結果、格闘、射撃精度、反応速度、探知範囲の項目において圧倒的なスコアを確認しております。強いていえば単独行動が目立ち、連携等の点に課題が目立つ所でしょうか」

「軍向きではないですね」

「今回の結果だけを見ればそうですが、天城くんは本来、周囲を扱う事にも長けていると見ています。周囲が貴方の個の力に頼ったから個を活かした立ち回りをしたと考えれば、評価点です」


 スミト大尉の側近とも言えるユリーシャ中尉は今回俺達の戦闘データを取っていた。スミト大尉を撃墜したデータは軍でも非常に高い評価を受けていた。


「シュミレーション上では、適正な機体さえあればSGAの新型機動兵器と戦闘してもかなりの勝率が出されるものと思います」


 問題はそこだ、幾らなんでもこの前の様な機体性能差では、正直どうにもならない。数で押しても意味をなさい程である。


「我が校としては今回のSクラスの生徒達に対して専用機を開発するプロジェクトを考案した。在学中からデータを取り、専用機の運用を前提としたチームを構築する」

「専用チーム?」

「軍の行動とは別に独立部隊として動くチームだ。つまり、今回の様に味方の生存の為に力を発揮出来る君達は完全なワンオフ機体のテスト部隊として最適であると判断したのだ」

「破格の待遇ですね……他の軍の方が怒らないか心配なレベルです」

「それを可能としたのが君の戦果だ」


 ただの学生が、最も危険視しているSGAのエースを訓練機で張り合ったと言う事実は軍を直ぐにでも動かす程であった様だ。軍の威信にも係る為、多くは伏せられている様だが…


しかし問題はそこではない。


現実には張り合えた等と言えるレベルではないのだが……


 指定強化生徒となる俺に関して言えば即、スミト大尉の部隊への入隊も思案されているらしいが、軍人としての教育が不十分な付属高校の1年生である為、教育をしながら有事の際には戦力として扱えるSクラスとなったようだ。


 専用機体、専用チーム。恐らくは対SGA部隊だと思うが……幾ら優等生が多いとは言え、今の1年生でチームを作るとは軍も思い切ったものだ。

 専用機体の開発に1年程時間がかかるのも理由なのかも知れないが果たして今回大きな動きを示したSGAが1年以上も黙って居るだろうか?


「とても中長期的な計画ですが大丈夫ですか?」

「焦って出来るなら、なんの苦労もないのだ」

「急ごしらえの対策と長期的に現Vシリーズを超えるプロジェクトの両方を並行するそうです」

「遺憾ではあるが、それだけ君とスミト大尉が共に戦った敵は強かった。君達以外が戦っていたら甚大な被害が出ていたであろう」


 NOと言える立場でも無ければ最新機体と関われるのであれば最新技術に触れる事もできるという事だ。ここは利害関係が一致する。


提案を受け入れた。


そして、詳しい説明は明日以降という事になった。

 校長達が病室を後にすると、アオイ達が部屋に入ってくる。


「これで正式にクラスメイトだね」

「いやーしかしすげぇよな、Cクラスから一転Sクラスだもんな」


 アオイとゴウは悲惨な事件が発生した事など忘れたかのように俺を歓迎してくれた。


「ユーゴの実力からすれば今までのCクラスがおかしいだけだ。これで何時でも再戦が挑める」

「しかもスミト大尉と敵のエースと張り合っちゃったんだもんね、1回ユーゴくんを撃墜している私は鼻が高いわ」


 アサヒとマイはただの戦闘狂かも知れない。クラスメイトを亡くした事に対する暗さは無いようだ。

だが冷静に考えれば俺達は軍人の候補生だ、そんな事で立ち止まって居る訳にも行かないか……


 少々雑談をしつつも俺は皆に送られて自室に戻る。するとトーマが心配そうに出迎えてくれた。


「良かった、元気そうで」

「トーマを助けるつもりで飛び込んだ結果、助けられたのは俺の方だった。ありがとう」

「準備整えて戻ったら……間に合わなくて、その後の探索メンバーにも入れてもらえなくて……本当に情けなかったよ」

「お前の超長距離射撃が無かったら俺もアオイも奴のレーザーソードに消し飛ばされていたよ本当に感謝している」

「1番肝心な探索メンバーに入れてもらえなかったのは僕に力が無いからだ……今回の件で益々実感したよ。力が無ければ守りたいものも守らせても貰えないんだって」

「少々大袈裟な気もするが……」

「なーに良い感じの雰囲気出してんだよ、お前ら恋人か!」


 後ろにいたゴウに盛大にどつかれ部屋に押し込まれた。

 何時準備したのか、ゴウの両手には飲み物が沢山入った袋があった。


「なんだそれは?」

「お前の快気祝いと、Sクラス親睦会をやろうってんだよ」

「何を言っている、この部屋でやらんでも良いだろ」

「俺とアサヒの部屋を汚いし、女子の部屋でやる訳にも行ねぇだろ」


 よく見ると、部屋のテーブルには既に料理が用意されている。


「トーマお前まで……」

「凄くない?これ殆どトーマ君が作ったんだよ、私とアオイも手伝おうかと思ったんだけど却って足手まといでさ」


 よく見ると匂いも見た目も素晴らしい料理が並んでいる。トーマ……お前は戦場ではなく、厨房に立つべき存在かもしれん。


「全く何を考えているのか……アサヒ、お前は止めなかったのか?」

「仲間の生還を祝い、共に戦う仲間と食を共にする事に何か躊躇う必要があるのか?」


 キザな言い回しをしながらも既に料理を手に取っているアサヒ……忘れていた……コイツは天然の神である事を……


 皆で乾杯して小さな宴が始まった。


「そう言えば、Sクラス親睦会をここでやるという事は……トーマも?」

「うん、Aクラス転落の危機から一転して、僕もSクラス……の補欠かな?」

「いーつまでそんな事言ってんだよ。お前は一流のスナイパーだってスミトさんも言っていただろ」

「アレはたまたまだよ」


 相変わらず極度の謙遜をするトーマに対して、ゴウが恒例のツッコミを入れる。この光景もだいぶ見慣れた。そこにトーマに身を寄せてマイが続ける。


「もぅ良いじゃない、実力って事で、トーマ君もあと一息自信を持てば完璧なんだけどね。ルックスも良いし、射撃の腕も良くて、周りが見えて、優しくて、掃除も出来て清潔感があって、料理も一流なんだから」

「確かにあのアヴュー・ウィンってパイロットの感知範囲外からピンポイントで狙撃したのは見事だった」

「流石にユーゴくんは分かってるよね。こっちも横で急に狙い出した時はビックリしたもんね……どう?アオイ?あなたの一命を救ったパーフェクトなトーマくんに乗り換えたら?」

「確かに小川くんには本当に感謝してますし、部屋はとってもキレイなのは魅力的ですけど……」

「あーっとしかしアオイはユーゴくんの方がタイプだったか」


 俺は思わず口からジュースを吹き出した。アサヒは俺の吹き出したジュースでビタビタになる。


「ユーゴ、飲み物を粗末にしてはいかんぞ」

「ちょっと待て、突っ込むのはそこか?」

「あれれ?ユーゴくんも満更ではない感じ?」


 この手の状況は味わったことが無い。魔術師戦とは全く異質の駆け引きが必要となる。


「俺がクラスのアイドルに手を出せる訳がないだろ」

「じゃーん」

「何!これ!どういう事マイちゃん」


 アオイも動揺したのは洞窟内で手を繋いで寝ている俺達の写真である。確かに手を握った事も記憶にはあるが……まさかこんな写真が残るとは……


「手なら出ていましたー!スキャンダルですよー!弁明会見を」


 俺は何かにハメられて居るのだろうか……このままでは穏便な学園生活は訪れない。

如月マイ、商売の交渉については、本当にやり手だ……


彼女は戦場ではなく、政治家、官僚としても活躍が期待される。


そう言えば……こっちの世界に来て、初めてこの様な時間を友人と過ごした気がする。


いや……そもそも友人と他人を認めたこと事態無かったかも知れない。少年期に最強の魔術師として覚醒し、それ以降利害関係の付き合いしかしてこなかった。


元の世界に戻る意味を無くしかけているのかも知れない。まぁ良いか、取り敢えずこっちの世界を救っておくか……


関東だの関西など出てますが、今の日本とは無縁のお話です。この手の名前を付けるのが苦手で適当に付けた名前なので後日変更するかも知れません。

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