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ギリギリの戦いを魔法の力で生き抜く件

「リクト、近接戦闘はリスクがある。間合いを取りながら行け」

「了解、でもメインは離脱だよ。敵の援軍も来そうだ」

「分かっている」


 可変機もレーザーライフルとシールドを装備した万能機寄りカスタムの様だ。

 その動きは非常に細かく、ハイスピードで移動する飛行機形態と違い。スピードの緩急を巧みに使いながら俺のレーザーマシンガンを掻い潜ってくる。


「確かに上手い撃ち方だね。けど、その出力のマシンガンでは、ソニックは落とせない」


 回避行動の中にレーザーライフルの反撃が来る。出力はアヴュー機と比較してそこまで高く無さそうだが、俺のアサルトスレイブは自壊寸前。下手に掠っただけでもやられるレベルだ。


「こいつも速いな」

「ユーゴくん、右だよ」


 敵の動きは動きは見えていたが普通に回避しては間に合わない、【コンプレッション】を用いて空中に足場を作り、空中を蹴りながら回避しようとしたが、軸足にしようとした右足が膝関節部から損傷し、バランスを崩した。


 可変機のレーザーライフルに対してシールドを構えたがエネルギー不足でレーザー部分が展開されずに、シールドを支えていた右腕は肩部から吹き飛ばされた。


「くぅ…」


 【ディストーション】で衝撃を緩和こそしているが、俺とアオイは歯を食いしばって耐えるのが精いっぱいだった。


「ユーゴくん」

「余所見をしている場合か青島スミト!」


 スミト大尉はアヴュー・ウィンに張り付かれ俺を助ける事は出来ない。

 

 追撃をリクト機がかけようとする所で、ブルーブレイバーの飛行ユニットから翼が分離して射出される。


「ウィングビット起動」


 スミト大尉はアヴュー・ウィンを抑えつつ、4つに別れた翼を操作してリクト機を狙う。スミト大尉が得意とする思念誘導兵器の簡略版である。翼を飛ばして、直接切り裂くレーザーナイフとして扱う。後方に推進システムこそあるが、空中に浮かんでいるのは何か特殊な技術か魔法なのか、今の俺には確認するゆとりはなかった。


「やるね、蒼い雷」


 リクトは深追いをせずに間合いをとるが、不規則に動き周りながらリクト機にウィングビットが動きを制限するように動く。


「俺達を1人で抑えられると思うなよ」

「そんな事言われても、抑える他ないだろ」

「いつまでそのゆとりが保てるかな…EXIシステム機動」


 アヴュー・ウィンがシステムを機動すると機体のフレーム部が赤く発光した。


「なんだ…これは?」

「これは、お前達ミラージュを倒す為の切り札だ」


 するとアヴュー機の運動性は格段に上がり、スミト大尉の攻撃は全く当たらなくなった。


「動きが格段に速い…ブルーをもってしても追いつけないとは」


 スミト大尉は2機を相手に善戦しては居るが、とても決めきれる状況ではない。


「システムオールレッド…動く事も出来ないか」

「そんな。このままじゃスミト大尉も」

「せめて訓練用スレイブにも自爆装置でもあれば足掻く事くらいは出来るのだが」

「サラッと怖いこと言わないで」

「残念だが…本当にそれぐらいまずい状況だ」


「定石通り、まずは弱っている方を仕留める」

「…一瞬スミト大尉の負担を減らすことができたか…すまない…アオイ」


 動けない所にアヴュー機が迫ってきた。

 もう、俺のアサルトスレイブに何もできる事はない。衝撃からアオイを守るべく彼女を抱きしめた。


「出過ぎた真似とは分かっているが、もしかしたら君だけでも助かるかもしれない」

「ダメだよ二人で生き残らなきゃ」


 アヴュー機のレーザーソードが振るわれる瞬間にレーザーライフルの横槍が入り、見事にアヴュー機のレーザーソードが破壊された。


「ユーゴ!大丈夫」

「小川くん…それにみんなが来てくれた」


 俺にもトーマの声が聞こえた。スパークのロングレーザーライフルが俺たちを守ってくれた様だ。【ミラージュ・トレース】で知覚できる範囲だが、それはかなりの距離の狙撃で彼の腕の素晴らしさを物語っていた。

 スミトさんの後を追って来た軍の部隊と共にトーマ、アサヒ、ゴウ、マイが駆けつけてくれた様だ。

 たが、俺の【ミラージュ・トレース】は自機の撃墜を予知していた。


 武器を失ったアヴュー機だが、即座に格闘戦に移行し、俺のスレイブを蹴り上げ、回し蹴りで突き飛ばし、追撃に両腕部のグレネードランチャーを打ち込んだ。全てのグレネードランチャーを受けた俺のアサルトスレイブは爆散した。


「ユーゴ!」

「アオイ!!」


 仲間達がそれぞれに悲痛の声を上げた。


 だが、それでも、2体の敵機が手を緩める事は無い。


「全員止まるんじゃない。その瞬間に撃たれるぞ」

「聞こえるか青島大尉」

「こちら青島、保護対象の保護に失敗。継続してSGA所属と思われる敵2機と交戦中、これ以上の戦闘継続は被害を拡大するのみと判断」

「了解、こちらもコアクリスタルの回収に失敗、敵軍の逃亡を許した、新型2機は捕獲もしくは破壊は可能か?」

「現状戦力では不可能です」

「了解した。無理はせず戦闘領域を離脱されたし」

「……了解した」


 何か、苦しそうな非常になりながらもスミト大尉は指示を出した。


「防衛対象がやられた、これ以上被害を出す訳には行かない、全員退くんだ」

「そりゃ無いぜスミトさん、ユーゴやアオイを助けないと」

「これ以上やり合えば、全員やられる、軍人を目指す者なら受け入れて退け」

「了解……」


 スミト大尉は敵機と交戦しながらも全員に指示を出す。

 当然の事だが、たまたまスミト大尉が居合わせたからこそここまで介入したのだろうが、たかが学生を救う為に、トップエースにそこまでの無理をさせるはずもない。

 何かしら重要なコアクリスタルと言う物を奪取され逃亡を許した様で、これ以上の戦闘は無意味なのだろう。


「アヴュー、追撃する?」

「目的は達した。こちらも離脱しなければ本隊が囲まれるリスクがある。」

「そうだね」

「言うなればあの青島スミトクラスのパイロットをこの場で撃墜出来たのは大きかった」

「悔いは無さそうだね、OK離脱しよう」


 リクトは機体を可変させ、飛行機形態とするとアヴュー機を乗せて離脱した。


 両軍が後退した事で戦闘は終了した。


 そして、どれくらいが経っただろうか……俺は意識を取り戻した。


「ユーゴくん、大丈夫?」

「どうにか助かったみたいだな」


 俺達は、エネルギー切れのスレイブがアヴュー機に蹴り飛ばさた瞬間に脱出ポッドが作動し背中から後方に弾き飛ばされたのだが、後方にあった岩場に激突していた。【ディストーション】で衝撃を緩和したのだが、目の前でスレイブが爆破された為、爆発の衝撃も【ディストーション】で防げたのだが、余波で砕けた岩場の下敷きになっている。


「良かった…」

「アオイは怪我はないか?」

「庇ってくれたおかげで打撲程度で済んでる。ユーゴくんの方がケガを」

「約束通り二人で生き残れたんだ…多少のケガくらい認めないと贅沢と言われてしまうな」


 冷静になると現在俺はアオイをシートに押し付けて押し倒したかの様な状況である。もちろん不可抗力だ、生きるか死ぬかの瀬戸際でこの状況を非難するようなタイプの子ではない。痛みをこらえながら体を起こし、一応ボッドの電子機器が動くかチェックをする。…絶望的だ、完全にやられている。と言うより、そもそもエネルギー切れだったので仮に動いてもっと言う所が正解だ。

 アオイの怪我を確認した後に【フィールド・トレース】を発動して周囲の状況を探る。幸い敵機は居ないようである。俺たちが通れるだけの隙間がある。いつ完全な生き埋めになるかも分からないので、脱出を試みる。

 周囲は夜になっている。戦闘エリアだっただけに、何もないが夜に動くのは危険と判断して近くの洞窟に避難する事にした。脱出ポッドには非常食と飲水があった為、それを持ち出して行く。


【フィールド・トレース】で確認したが、内部はそこまで深くなく、有りがちな野生の動物などは居ないようである。

 周囲を肉眼で確認する為に【フラッシュトーチ】を使った。魔法力で松明を作る魔法である。


「凄い……どんな原理なの」

「体内にある力を光に変換しているだけだが、君達からすれば凄い事になるのか?」

「凄いに決まってるよね……それにしてもやっぱりあの時のユーゴくんだね」

「俺は過去にも君と会っていたのか?」

「そうだよ、あの時も光る目をした男の子に助けられたの」


 それは俺がこちらの世界で目覚めて間もない頃に起こった機動兵器の襲撃があった時の話だった。

 避難中の俺は偶然、機動兵器の流れ弾からひとつの家族を救った。自動車に降り注ぐ瓦礫を【ディストーション】で防いだのだが、当時の俺は魔法の力がコントロール出来ずに力を使い果たしそのまま倒れてしまった。

 俺を助けてくれた同じ施設の子供が俺の名前を呼んでいた事でアオイは俺の名前を聞いた様だ。


「微かに覚えている気もする……」

「あの時は夢を見てるんだと思ったよ、だって自分と同じ年位の男の子が不思議な力で私達を守ってくれたのだもん。どうしてその素晴らしい力を隠したがるの?」

「変な力を持っている事で、世界から隔離される事を恐れて……と言った所か」

「でもユーゴくんの力があれば色んな命を救う事ができるよ」

「そうでありたいと思っているが、偏見を持つ人間も多い。味方なら喜ばれるが、敵対すれば恐怖される、そして平和になったら自分達の想像出来ない力を持った者を疎外するのが人間だ」

「何か……辛い事があったの」

「そう捉えて貰って誤りではない」

「私は、私を2回も助けてくれたユーゴくんの力に感謝してるよ」

「ありがとう。その言葉で救われる」


 おそらく今の彼女は心からそう思ってくれて居るだろう。だがそんな言葉を簡単に受け入れられる程人に心を許せなくなっているのも事実だ。所詮は今の彼女がそう言ってくれるだけだが、何かの拍子で人は直ぐに手のひらを反す。彼女とて例外ではないだろう。


それにも関わらず既に心を許しかけている自分が恐ろしい。


 岩場に隠れて、2人で座り込むと【フラッシュトーチ】の光を消し、熱源だけのエネルギー体にした。


「暖かいね……なんで光を消すの」

「光は野生の動物などを呼び寄せる可能性がある、しかし、熱源を作っておけば運が良ければ友軍にだけ発見して貰えるかもしれない」

「友軍なら良いけどね」

「最悪は敵対勢力でも構わない、捕虜となっても学生だ。命は助けて貰える可能性がある」

「そこまで考えてるんだね」

「今の俺に君を守る事は出来ない、だが、誰でも良いので発見して貰えれば君の命を守ることは出来そうだからな」


 何か気に入らなかったのか、アオイが俺の顔をのぞき込んだ。


「ユーゴくんって淡々としてるけど、私と暗い所で二人っきりでも何とも思わないの?」

「寧ろ暗い方が好都合だ」

「なっな……ユーゴくん、それってどう言う意味?」


「万が一にもだ、アオイ親衛隊にこの様な状況が知れたら益々大変な事になる、映像媒体等で詳細な情報が残らない方が安全だ」

「……そう言う事……」


 何か呆れているアオイに対して俺は話題を変えるように伝える。


「ここに熱源魔法を残しておく、俺は入口の方を見張るから今のうちに休んでおけ」

「あ、それでいてあっさりと私を置いて行くのね」

「何を言っている?どれだけの持久戦になるか分からない、折角2人居るのだから交互に周囲を警戒した方が良い。明るくなるまでは俺が周囲を見張る先に休んでおくんだ」


 そう言うと俺は洞窟の入口付近に戻った。


 アオイには平静を装ったが、身体は思春期の男子。年頃の女子と暗い所で二人っきりで理性を保つ事は困難と判断し、距離を置いたのだ。


 古のフィールド魔法で、細い吊り橋をなんでもない男女が渡り切ると恋が芽生えると言う魔法を聞いた事がある。今の状況はそれに類するものかも知れない。心を許すどころか完全に鷲掴みにされそうだ。

 万が一にも俺がアオイに恋などした場合、学園から追放される危険性すらある。


 雑念を払い除け、念の為に携帯用の小銃を準備した。【フィールド・トレース】を最低限の範囲で使っておけば、余程カバー出来るだろう。しかし、流石に強敵との連戦の為かフラフラとする感覚がある。


 すると背後を取られ、衝撃で押し倒された。


「何!」

「やっぱりね……」


 疲労感がある中で完全に虚を突かれた。後ろからアオイが抱きついてきたのだ。健全な男子に戻った俺には刺激的過ぎる状況である。と言うかいい加減気づいてくれ、君がそんな事をすると勘違いする男子は後を絶たない。違う意味で立ってしまう。


「何をしている、今のうちに休んでおかないと」

「ユーゴくんの方がもう限界なんでしょ」

「何を、俺は理性をちゃんと保っている」

「理性?」

「あっいや、なんでもない」


 同様のあまり、脈絡も無い妄想の事を口走ってしまった。


「ユーゴくんは最強のセンスティブのスミト大尉と戦った後に、スミト大尉のライバル、アヴュー・ウィンとも戦ったんだよ、心身共にもう限界だよ」

「問題ない、視界が悪い状況では俺が見張りに立った方が効率が良いからそうしている」

「問題ない?私が後ろから近づいても分からなかったのに?」

「敵意で無ければ探知は難しいんだ」

「成程、ユーゴくんは敵意は探知出来るけど好意は探知出来ないんだね」

「なんだって?」

「なんでもないよ」


 するとアオイは俺の横に座り込んだ。再び身体が密着し緊張のあまり体温が上昇していくのが分かる。頼む、これ以上俺を刺激しないでくれ。

 

 元の世界ではモテる事もなく、正直な所、姉を失ったショックからか女の子と触れ合うのを避けていた。その結果、35を過ぎてもロクなお付き合いをした事がない。やっと女性に関心を持った時にはどの様にお話をさせて頂いたら良いのかも分からず多少ともあった婚期を逃した。お恥ずかしい話ではあるが、天才魔術師と言われた俺だが、色恋沙汰は全くの素人である。


「1人で無理するのはやめて欲しいな」

「無理などはしていない」

「学生が世界最強と言われる2人のパイロットと戦ったんだよ、無理じゃない方が不思議だよ」

「疲れが無いと言えば嘘になるが、それでも君に万が一の事があると困る」

「本当に頑固だね、じゃぁ1人だと怖いからそばに居て」


 そう来たか、アオイは思いの外、悪女なのかも知れない。もう少し、自分の容姿の良さを自覚した上で男子と接し無くては、親衛隊メンバーを無制限に増やす事になる。


「それを言われると何も言えないな」

「はぃ、じゃぁここに座ってるね」

「了解」

「じゃあついでに怖いから手を握ってて」

「それじゃぁ、動けないのだが」

「動かないと行けない状況は探知出来るんでしょ」

「……アオイさん……あなたと言う人は……」


 流石、学年主席にして既に隊長を任されているだけのことはある。打つ手が厳しい。しぶしぶアオイの手を握る。手袋越しで良かった。それでいても心臓が破裂しそうである。素手であったら今の体力では天に召されていただろう。俺にとっては今のアオイの方がスミト大尉やアヴュー・ウィンよりも強敵だ。

 

 しかし気になる。学校のアオイとは少し様子が違うようにも感じる。もっと控えめで、他人に対してとても気を使っている様に見えていたが、こちらが本当の彼女なのだろうか?だとすると結婚した後は恐妻家になりそうだ。


 座り混んでアオイと少し何か会話をしていた気もするが、その辺で意識が飛んでしまった。


 翌朝……


「これはこれは、アオイのスキャンダルね」

「どうする?とりあえず写真に収めておくか?」

「お前らも悪趣味だな」

「何言ってんの人が心配して探しに来たら2人でラブラブしちゃってるんだから」


 不覚にも手を繋いだまま寝てしまった様だ。先にアオイが目を覚ます。


「あれ?みんな?」

「あれ?みんな?じゃないよアオイ!やっぱりユーゴくんと出来てたのね」

「え?あっこれは?」

「黙っといてあげるから正直に言いなさいよ、どっちから仕掛けたの?」

「私から」

「おお!これは、凄い事ね。難攻不落のアオイ要塞は期待の超新星によって攻略されたわ!流石紅い閃光!!」

「馬鹿な事を言っていないで直ぐに離脱するぞ。ユーゴは熱発している様だ。早く救護班に見せないと」


 俺はアサヒに担がれてアサヒの機体に収容された。どうやら疲労と緊張から熱発していたため、眠りについてしまった様だ。よくよく考えてみればこの様な危険な場所で眠気に負けたことなど初めてだった。これが安らぎ……いかん……それは恋だ……


「こちら如月マイです。保護対象の確保に成功しました」

「了解した。周囲に敵機の反応は無いが速やかに帰投せよ」

「了解」


 朦朧とする中で、微かにアサヒに励まされていた気がするが次に俺が目覚めるのは病室であった。

お読みいただきありがとうございます。今回は一連の流れの区切りです。

学校に入学して落ちこぼれに認定されていたユーゴが魔法の力を開放して一気にトップに上り詰める流れでした。

既に最強クラスのパイロットと渡り合い、最強クラスの美少女と仲良くなるというアニメ業界ではよくある展開なのですが…これを中学当時に書きたがっていた自分は余程恋に飢えていたのでしょうね。


次回は状況整理編です。その後次の展開につなげて行きたいと思っておりますのでお時間がありましたらまた読んで頂けたらと思います。


追記…ロクな恋をしていないので色恋沙汰は書けないので後は読者様の脳内補完でお願いします。

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