8月15日
イベント開始から2週間が経過した。
自分の順位は32位ってところだった。
どうやら領地内での対戦プレイヤーのデスペナルティにより獲得したスキルポイントの合計がスコアとしてランキングされるようだ。
モンスターや影武者による取得量と自分で勝利したときの取得量の差が5倍とあるため、ログイン時間の長い人たちにはなかなか追いつけずにいた。
現在魔王の1位はなんとガロンさんで、2位とスコアが一桁以上離れているため独走状態だ。
一度ガロンさんの領地に行ってみたのだが、笑い声と怒号が響き渡るクレーターの中で獰猛な笑みを浮かべながら大きな声で笑うガロンさんが多数のプレイヤーを相手に一人戦っていた。
尋常ではない速度で動くガロンさんは、さながら黒い暴風といったところか。
プレイヤーの間を通り過ぎると、後には風に巻き上げられたように空中を舞うプレイヤーが光になって消えていくという景色が広がっていた。
まさに魔王と言ったところだろうか?
自分はというと、ログイン中の戦闘が7勝4敗と勝ち越してはいるものの、さすがに≪魔王≫以外が生産スキルのままではキツイということで、少しでも攻撃力を底上げするために何かないかと取得できるスキルの一覧を確認した結果、
≪属性付加≫
自身およびパーティーメンバーの武器・防具に所持属性魔法スキルに依存した属性効果を付加する。
ATK上昇率:0.5%×使用属性魔法スキルのレベル
DEF上昇率:0.5%×使用属性魔法スキルのレベル
効果時間:300秒+10秒×スキルレベル
≪孤軍奮闘≫
敵対パーティとの人数差により全能力に補正がかかる。
一度上がった能力はその戦闘が終了するまで継続する。
一人につきHP・MP以外の各能力 1段階上昇(最大上昇値2ランク)
の2つを新たに取得した。
ファンタジーライフスタイルオンラインでは、武器などに属性を付加するには3種類の方法がある。
1つ目は、モンスターからのドロップ品や生産による素材の属性を活かした属性付きの武器や防具だ。
メリットは武器さえ手に入れることができれば、特定のスキルがなくても属性攻撃ができること。
デメリットは、属性が固定のため相手に合わせて複数の属性付きを持ち歩く必要があること。
ドロップ品はかなりレアで、なかなか手に入らない上に販売価格も高いため手を出しづらい。
かといってプレイヤーメイドでは現状そこまで強力なものがないといったところだろう。
2つ目は、武器スキルと属性魔法スキルを一定レベルまで上げることで、スキル統合による属性武器スキルというものがある。
メリットは、スキル枠が統合により1つ空くことと、スキルに対応した武器なら何でもいいということ、そして専用アーツがあるということだ。
デメリットは、スキルレベルを上げる必要があるということと武器の種類が固定されるということだろう。
そして3つ目が≪属性付加≫だ。
メリットは、武器を選ばずパーティーメンバーにも付加できることだ。
デメリットは、このスキル単体では機能せず属性魔法スキルを必要とするため、スキル枠が圧迫されることやスキルレベル依存の効果時間の存在だ。
ちなみに、スキルにはSPさえ支払えば誰でも覚えられる一般スキルと、一定の条件を満たすことで取得できる特殊スキルなどがある。
≪孤軍奮闘≫は、特殊スキルのようでいつの間にか条件を満たしていたようだった。
取得SPに今まで貯めていたポイントを使い切ってしまったが、ぼっちなプレイヤーにはぴったりなスキルを用意してくれた運営に感謝だ。
最大上昇値の条件も6人差とプレイヤー相手での人数差は致命的だが、モンスター相手なら何とかなるだろう。
現状、魔王の間(仮)でのパーティー戦闘では、Bランクモンスターが一体までしか呼ぶことができないので、ハイカイゴブリンなどを補助として入れていたが、人数差をあえて作ることでかなりの能力アップが見込めるようになった。
とりあえずスキルレベルを上げとスキル能力の確認のため、今日は影武者たちにプレイヤーの相手を任せてフィールドにてモンスターを狩っている。
まずは≪属性付加≫で武器と防具に闇属性を付加してみる。
すると全身に黒色の薄い膜のようなものが広がっていき、刀の色も青色からダークブルーになった。
群れでいるモンスターを狩ってスキル経験値を稼ぐため、ハイゴブリンの群れに突っ込む。
力が湧き上がる感覚があり、走る速度も明らかに上がっている。
各能力が上がっているとはいえ群れに単身乗り込んでの戦いはなれない上に、人数差ごとに違う自分の力に思うような動きが取れなかったりと、四苦八苦しながらもスキル上げと慣れるのために1時間ほどモンスターを狩っていく。
≪孤軍奮闘≫は、戦闘時間や敵の強さより人数差が多い時の方が経験値効率がいいようで、より大きな群れを狩ってスキルレベルも5まで上がり、≪属性付加≫も一回五分の効果時間がある為、武器と防具に合わせて20回程度使いスキルレベルは2上がった。
スキルを確認していると領地内にプレイヤーが入ったとのメッセージが届いた。
スキル上げもある程度終わったので、迎撃にためクリスタルを使い領地へ飛んだ。
魔王の間から迷路入口を眺めるとプレイヤーが、1名に立っていた。
迷路は一度来たプレイヤーには道がばれてしまうため、週一回のペースでビルドベアにコースの変更のため改築をさせているので、今は城を中心に左回りに一周してゴールと言う片道迷わず通過して30分程度かかるようになっている。
実は迷路部分が、良い感じのふるいの役割を果たしているようでここまでたどり着くまでにかかる時間などで大体の強さがわかるようになってきた。
今回来たプレイヤーは、なんと10分でここまでたどり着いた。
道中の戦闘などから過去最高レベルの相手だと思うが、まさかの壁越えをしながら一直線にここまでやってくるとは思いもしなかった。
ガチャっとドアが開かれたのでまずは挨拶だ!
「ようこそ、魔王やってるヨウで〜す。
そして、あの攻略方法は無しでしょう!!」
ビシッと指を指しながらそう言い放つと
「いきなりだな、まぁあれだ迷路は苦手なんでスルーさせてもらった。
おれは、ヘイヴってんだ。」
「あれ?
ヘイヴってもしかしてランキング5位の人ですか?」
「おう、俺も有名になったもんだ。」
プレイヤーランキングは、討伐ポイントでランキングされているがポイントの横に魔王討伐数という100名中何名倒したかというものが表示される。
ポイントだけ見ると5位なのだが魔王討伐数で見るとヘイヴさんは72名と表示さていて、ほかの上位陣より10人くらい多いということで、気になっているプレイヤーの1人だった。
自己紹介をおえて戦闘準備を整えながら相手を観察していく、ヘイヴさんは武器を持たず空手のような構えを取っている。
その構えは、様になっており多分現実でも何らかの格闘技術を持っていることを伺わせるに十分な雰囲気をまとっていた。
ゾクっと凍るような殺気を当てられながらも、刀をいつものように構えて睨みあうこと数分。
こう着状態の末、ヘイヴさんの体がぶれたように見えた瞬間、一瞬で懐に入られて繰り出される拳を慌てて後ろに飛びのきながら躱すが、それが失策とすぐに気付く。
彼は、その勢いのまま踏み込み追撃を容赦なく繰り出してくる。
一撃一撃を辛うじて防ぎながら反撃のチャンスを探すが、中々見つからないそうこうしている内にHPも半分を切ってしまったので、何とか打開策を展開しなければこのままやられてしまう。
少し体制を崩し大振りを誘う、止めとばかりに来た一撃を喰らう瞬間、自ら大きく後ろに跳び、一回転して着地と同時に相手目掛けて全力で間合いを詰めて刀を鞘から抜き放つ。
「あまい!」
当たったと思った瞬間、背後に回り込まれたヘイヴさんからの手刀を首筋に受けてあっさりと決着がついてしまった。
魔王の間(仮)にホームポイントを変更していたのでその場に復帰する。
「いやぁ強いですね全然歯が立たなかったですわ」
「おう、ありがとな。
君もなかなか手ごたえがあったが、≪魔王≫持ち全般に言えることだが、ステータスに依存した戦い方をしているとそれ以上、強くなれないぞ」
立ち回り方などについて多少アドバイスをもらいながら5分ほど話したのち迷路入口まで送り別れた。
その後、アドバイスをもとにモンスターと戦うために通常フィールドに出かける。
自分の領地内でモンスターを呼び出してもよかったのだが、スキル経験値があまり貰えないというペナルティがあるので、野良のモンスターを狩った方が効率が良かったりする。
それから2時間ほど新しい動きを馴染ませるために戦闘を繰り返したところで、プレイヤーも来ないようなのでログアウトをすることにした。
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ヨウ
装備スキル
≪魔王9≫≪属性付加6≫≪孤軍奮闘12≫≪幸運95≫
控えスキル
≪中級採掘22≫≪中級鍛冶15≫≪初級革加工42≫
主人公のボッチプレイが確定してしまいました。
読んでいただいてありがとうございます
誤字・感想などありましたらよろしくお願いします