9 鎌倉と聞いてピンと反応
(3)
開幕一番、
「あぁ”ん――?」
キム・テヤンと、
「は――?」
と、パク・ソユンが、ほぼ同時に顔をしかめながら、
「「何で? お前がここにいんだよ?」アンタがここにいるわけ?」
と、タイミングを重ねて、つっこんだ。
目の前にいるツッコミを入れた相手こそ、妖狐の神楽坂文だった。
なお、SPY探偵団は調査において、この妖狐を、まるで“ドラえもんのようなナニカ”みたいな感覚で利用してたり、いろいろと協力してもらっている関係だという。
妖狐が、
「ふむ。わが世界から――、まあ、貴様たちから見たら異界、異世界というべきか? お忍びで、こちらの世界の、日本の、鎌倉に来ていたらな……、何やら、面白そうな事件の気配がしてな」
「ああ、鎌倉に」
と、ドン・ヨンファが、鎌倉と聞いてピンと反応し、
「はぁ、けっこう、いいとこに行ったじゃない」
と、パク・ソユンも続いた。
「まあ、降り立った都内から、一時間ほどの手軽な場所だ。なので、都会の喧騒を抜けるためにな」
妖狐が答えると、
「いや、あそこはあそこで、喧騒的な場所でしょ」
と、パク・ソユンがつっこんだ。
確かに、基本的に人が常に多い場所なので、そのつっこみは妥当だが。
それはさておき、
「てか? アンタが、序盤から出てくるって、さ? 珍しいじゃない」
と、パク・ソユンが、妖狐に言った。
「序盤、いうなよ」
キム・テヤンが、軽くつっこむと、
「まあ、ときには、変則的なパターンもあってよかろう」
と、妖狐が、軽いドヤ顔して言った。
その手には、“何か”を持っており、
「何だい? その、リンゴは?」
と、ドン・ヨンファが、気がついた。
「ああ、“これ”が、反応してな」
妖狐が、
――スッ……
と、“リンゴ”を、四人によく見せる。
まるで、最新の半導体集積回路のようにして作られたような、超微細な、構造色の混じったリンゴ。
妖狐が
――フッ……
と、手を放すなり、
――ヒュー……
と、まずは、そのまま屋台街の“上空へ”と“落下”していき、
「――?」
と、反応のにぶいパク・ソユン以外、
「「ッ――!?」」
「なッ――!?」
と、三人の男たちが驚いた。
すると、妖狐の手が、
――ボワァッ……
と、何かオーラを帯びるや、百メートルほど上に落下していったリンゴが、
――ヒュー……
と、こんどはちゃんと重力どおりに下へ落ちてきて、
――ス、トンッ……
と、妖狐の手におさまった。
「結論から言えば……、その、幽鬼とやらで騒がれている、“空に落とす力”というのは、本当だろう」
妖狐が、リンゴを見せて言う。
「それを、感知したのが……、その“リンゴ”――、というわけですか?」
カン・ロウンが、聞いた。
「ああ……」
うなづく妖狐に、ドン・ヨンファが、
「でも? 何で、リンゴなんだい? 重力を、万有引力を発見した、アイザック・ニュートンにちなんで、かい?」
「うん。そんな感じ」
「「そんな感じって、軽いな」」
ドン・ヨンファとキム・テヤンが、つっこんだ。
また、妖狐が、
「まあ、重力の、万有引力じたい、“弱い力”であるが……、このリンゴを以って、“何か重力の異常に関する事象”があるということ――を、検知してな」
「それが、いま重慶を騒がしている、幽鬼の力によって人が空に落ちているって噂に、関係するわけか」
キム・テヤンが、そう聞くと、
「ああ、そのとおりだ」
と、妖狐は、うなづきながら、
「そして、“この投稿”に関して、だ――。気配を、生気を感じることから、このDZコンビとかいう、何かうざい二人組は、生きているようだ」
と、話しながら、動画を再生してみせる。
すると、
『『うぃ~、っすぅ~』』
と、ホン・ヤートンをバックにした開幕場面が流れ、
『『俺たちは、名探偵――』』
と、何かクソダサいポーズをつくりながら、
『ザオと、』
『ディオ、だっ――!!』
と、言い終えるなり、
――ジャッ、キーンッ――!!
と、アクション仮面まがいのポーズをキメて見せた。
それを見て、
「あっ、うざ……」
と、パク・ソユンが言い、
「うん。確かに、ちょっとウザいなぁ」
と、ドン・ヨンファも同調し、
「ん、だよ? こいつらは、よぅ?」
と、キム・テヤンが、苦虫を嚙み潰したような顔をした。
そのキム・テヤンが、
「――で? “これ”を教えて、どうしろってんだ? まさか? 調べに、重慶にでも行けと?」
と、「まさか」の顔して聞くと、
「ああ……。その、“まさか”だ」
と、妖狐が、ドヤ顔で答えた。
そんな、「これから重慶に行け」との、突拍子もない返答に、
「あぁ”!?」
「な、何だって――!?」
と、キム・テヤンとドン・ヨンファが、同時に驚いてみせた。




