10 アインシュタインが『神はサイコロなんか振らねぇよ』とキレ散らかしたように……
いっぽう、
「はぁ、」
パク・ソユンが、いちど曖昧な相づちを入れながら、
「まあ、いいんじゃない? ちょうど、『重慶に行きたい』って話になってたし。私も、今週はヒマだし」
と、意外なことを言った。
「うむ。そしたら、重慶に、調べにいこうか? みんな」
カン・ロウンも、便乗して乗り気になると、
「へ――? そんな、急に、」
と、ドン・ヨンファと、
「おいおいっ! まった、そんな適当に決めやがって、」
と、キム・テヤンのふたりは、突然の決定に困惑してみせた。
それでも、
「いや、行こうよ。テヤン、ヨンファ」
「うん。行くぽよ」
と、カン・ロウンとパク・ソユンは、もう行く気でいた。
「あぁ”?」
キム・テヤンが、顔をしかめるも、
「ふむ。この、ウザいポーズしたふたり組は、おそらく、幽鬼から逃げているのだろう。なので、なるべく急いでヤツラを探しだし、接触したほうがよかろう」
と、妖狐が言い、
「ええ……」
と、カン・ロウンが、うなづいた。
そのまま、カン・ロウンはSPY探偵団の三人のほうを見て、
「これで、重慶に行くのは、確定でいいか? みんな」
「ぽよ」
「ま、あ……」
と、パク・ソユンと、しぶしぶドン・ヨンファはうなづいた。
「けっ、」
キム・テヤンだけは、舌打ちだったが。
とりあえず、そんなこんなで、重慶行きは確定した。
火鍋は食べ終えており、冷たいスイーツに、キンキンに冷えた酒を飲みながらも、妖狐も、まだ屋台の席に腰かけていた。
「ところ、で……? こんな、事件を調べたり……、まあ、いろいろと協力してもらっているんだけど……」
と、ドン・ヨンファは、妖狐に、何かを聞こうとする。
「う、ん?」
妖狐が、スイーツを手にしたまま、反応する。
ひと呼吸おいて、
「――そのぉ……、そっちの目的っては……、何か、あるのかい?」
と、ドン・ヨンファは、質問をしてみた。
一見すると、協力してもらったこちら側はありがたいが、妖狐に対してのメリットは何なのか、気になった。
「ふ、む……?」
妖狐が、考える仕草をしながら、
「まあ、我が異世界――、何というか、“こっちの宇宙”を含めて、数多ある世界というのを、“設計”しててな――」
と、“世界の設計”などという、すこし中二病くさい言葉に、
「……」
カン・ロウンは、沈黙したまま、
「は――?」
と、ドン・ヨンファは、ポカンとし、
「あ、ぁ”……?」
と、キム・テヤンは、やはり顔をしかめた。
「ぽよ」
パク・ソユンは、相変わらず『ぽよ』で反応しながらも、
「何、それ? 何か、創造主――的な、感じ?」
「うん。そんな感じ」
と、妖狐がうなづくと、
「いや、また相変わらず、軽いノリだな」
と、ドン・ヨンファが、すこし呆気に取られた顔をした。
妖狐が続けるに、
「まあ、我々が作った世界というのは、アインシュタインが『神はサイコロなんか振らねぇよ』とキレ散らかしたように……、どれも、確率じかけで、できていてな――」
「……」
「……」
と、SPY探偵団の四人は、沈黙したまま耳を傾け、
「――それで、我々というのは……、創った世界で、賭け事をして……、遊んでいるともいえる」
「……」
「……」
と、また沈黙をはさみ、
「まあ、こっちの――、脆弱な確率じかけの世界でいえば……、貴様たちの――、人間の、世界の行く末を、な――」
と、妖狐はグラスを手にしながら、意味深な顔で言い終えた。
ドン・ヨンファも、グラスを手にして、
「それは、玩具にしてる――って、感じ、かい?」
と、聞いた。
ほかの三人が、
「……」
「……」
「……」
と、沈黙する。
その、沈黙を破って、
「――ま、あ……? そう、とも言える……」
と、妖狐は、すこし考えるようにしながらも、答えるさまは、やはり意味深そうだった。
まだ、グラスを手にしたまま、
「それで……、その、脆弱な世界の行く末に、な――。創造主である我々を、殺しうる存在というのが現れるのか――」
「……」
「……」
また沈黙をはさみ、妖狐のターンになり、
「まあ、ワンチャン……、“それ”というのが、“人間”、なのかもしれないが――」
と、言った。
「……」
「……」
「……」
カン・ロウンとキム・テヤン、ドン・ヨンファの三人が沈黙し、
「……」
と、言った本人の妖狐も、沈黙した。
両者ともに、
…………
と、対峙するように、沈黙をはさんでいたところ、
「ぽよ」
と、やはり、パク・ソユンだけは『ぽよ』と言った。
「……」
「……」
「……」
三人が沈黙したまま、パク・ソユンのほうを見て、
「……」
と、妖狐も同様に、ジッ……とした表情で、パク・ソユンを見た。
(((ああ、もう……、ほんと? 何? こいつの、『ぽよ』って、)))
と、締まりのないパク・ソユンの『ぽよ』に、皆はつっこみたかった。
こうして、SPY探偵団の四人だが、重慶に行くことになった。




