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妖狐、神楽坂文のコンサル譚10 【重慶幽鬼】  作者: 非常口どん八
第三章

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11 マジモンの二足歩行するパンダ人間




          (1)




 翌朝のこと。


 ――ゴゴゴ、ゴゴ……


 と、巨大な山城のように佇む、重慶の都市。

 なお、“山城”とは重慶に別称で、高低差が大きく、三次元の複雑な立体迷路のような都市を形成する。

 また、長江と嘉陵江のふたつの大河が合流する渝中半島(ゆちゅうはんとう)の超高層ビル群の聳(そび)えるようすが、ニューヨークを彷彿とさせるのが、中国のビックアップルなどと呼ばれたりする所以(ゆえん)だ。

 そんな重慶の刑事コンビ、パンとハンのふたりは、昨夜、デオとザオが例の配信をしていた廃墟地区にいた。

「ちっ……、まったく、あんのガキども」

 パンが、舌打ちして言った。

 なお、このパンであるが、マジモンの二足歩行するパンダ人間の中年刑事である。

 そんな、ゆるキャラのような相方を、

「まあまあ、パンちゃん、」

 と、こちらは高身長の、四川美人の女刑事こと、ハンが宥めた。

 昨夜から、デオとザオのDZコンビの配信した動画によって、重慶は騒ぎになっていた。

 まさかの、噂されていた幽鬼が現れ、まさに、“人を空に落とす”瞬間が、彼らの動画に映ってしまったのだ。

 その、衝撃的な内容と緊迫した逃走劇ゆえに、SNSは、いっきに億単位のインプレッションを叩きだし、重慶の警察署も、このことで持ちきりになっていた。

 そして、幽鬼に関して調査しているパンとハンのコンビは、現地を調べることになったのだ。

 朝の、ホンヤートンを眺めながら、

「――で? “あいつら”は、どうなったんだ?」

 パンが、缶コーヒーを飲みながら聞く。

「あれから、更新がないのだ」

 と、ハンが答える。

「更新が、ない? つまりは、“空に落とされた”のか? いや……、あるいは、下に落ちたのか?」

 パンが、動画の最後のあたりを思い出しながら自問自答する。

 なお、いま、動画で彼らが“落ちた”廃墟や周辺では、ほかの警察たちが捜索していた。

 現場には、“落ちた”痕跡があり、もしかすると、彼らは怪我をしたまま廃屋内で動けなくなっている可能性もある。

 ゆえに、周辺を捜索する必要があった。

「う~ん……? 空じゃなくて、下に落ちた可能性もあるのかな?」

 ハンが、動画を再生しながら、

「動画を見る限り、逃げ込んだ廃墟には、ボロボロだけど天井があるし……、どこか、床を踏み抜いちゃったんじゃ、ないのか?」

 と、言った。

「そう、すると……? あいつらは、生きているの、か……?」

 パンが、考える表情をしながら問いを投げかける。

「だけど、そこから、幽鬼が後追いして……、ふたりを始末しちゃった可能性も、考えられるかな? 自分の姿を、見ちゃったかもしれないし」

 ハンが、そう言うと、

「そうだとすると……、ワンチャン、運良く助かったかもしれねぇってのに、かわいそうなこった。まあ、あいつらの、普段していることからすりゃ、自業自得かもしれねぇけどよ」

 と、パンは、「やれやれ」と言った。

 いったん、デオとザオのふたりがどうなっているのかということは、置いておき、

「しかし……、本当に、幽鬼ってのの力によって、“人が空に落とされている”――てっので、捜査を進めていいのか?」

 と、パンが、改めて問いを投げかけた。

 まあ、いままでは都市伝説のようなものとして見ていたが、例の動画を見ると、否定できなくなってきた。

「分析班が、動画を分析したところ、AIだったり、加工したものではなさそうなのだ」

 ハンが、補足した。

「そうすると……、まあ、もし、幽鬼に殺されてなければ、探したほうがよさそうだな」

 と、「やれやれ」と、動きだすパンに、

「いや、殺されてないという前提で、探そうなのだ」

 と、ハンが言った。

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