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妖狐、神楽坂文のコンサル譚10 【重慶幽鬼】  作者: 非常口どん八
第二章

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6 唐辛子も花椒もガッツリ入れて、本場に近い辛さにしたかんな




          (1)




 同じころ、場面は変わって――

 お隣は韓国の、ソウル市の、屋台街のこと。

 夏の夜の、ムシムシする暑さの中、とあるチジミ屋台では、

 ――グツ、グツ……

 と、丸鍋が、場違いにも煮えていた。

 陰陽太極図のように半々に仕切られた鍋は、片方は地獄のように真っ赤で、もう片方は、ダシが効いているように白かった。

 つまり、火鍋だ。

 見ているだけで辛くなるような鍋を、前にして、


「う、うぉぉん――」


 などと、夏の装いのヘソ出しスタイルをしたモデル兼DJの美女、パク・ソユンが勢いよく、

 ――パ、シィッ……!!

 と、箸をとった。

 いっぽう、

「う、う”っ……!!」

 と、丸サングラスが曇りながら、カン・ロウンが悶絶しかける。

 また、のび太君がよく着ている服のような、黄色いブランドもののポロシャツ姿のドン・ヨンファも、

「かっ、らッ――!!」

 と、耐えきれず、声をあげた。

 そんな、火鍋を中心に据えたテーブルにて、


「――てか? 何で、火鍋なんかあるんだい? ああっ、かっらッ……!!」


 と、ドン・ヨンファが、まだ舌がヒリヒリと痺れるのに耐えながらも、つっこみまじりの問いを投げかけた。

 すると、カウンター越しから、

「あぁ”……? “こいつ”が、火鍋を、食いてぇって、言うからだろ」

 と、本来はチジミ屋台のオッサンこと、キム・テヤンが、顔をしかめながら指をさした。

 指をさされた先、

「ん……?」

 と、辛さにまったく動じることなく、淡々かつ平然として火鍋を食う“こいつ”こと、パク・ソユンが、


 ――ピ、タッ……


 と、箸をとめた。

 すなわち――

 暇を持て余した、いちおうは異能力者の探偵サークルことSPY探偵団の四人は、パク・ソユンのリクエストによって、火鍋を食っていたわけだった。

「ん? そんな、辛いわけ? アンタたち」

 パク・ソユンが、不思議そうな顔して聞く。

「いや、けっこう、辛えよ。俺も、辛いのは好きだけどよ」

 キム・テヤンと、

「そうだよ」

 と、ドン・ヨンファが便乗して答える。

 また、キム・テヤンが鍋を指して、

「まあ、タコとか、エビとか、海鮮系の具材を多くして、アレンジしたけどよ」

「ぽよ」

 と、パク・ソユンが、そう答えたところ、

「「いや、何の『ぽよ』だよ」」

 と、キム・テヤンとドン・ヨンファが、声をそろえてつっこんだ。

 なお、このパク・ソユンの『ぽよ』であるが、以前に日本のイベントに行った時から、その理由は分からないが、つくようになった語尾、もしくは返事である。

 ちなみに、『ぽよ』の出てくる確率は、その時どきの設定で異なるという。


 それはさておき、鍋には韓国の海鮮系料理によく出てくる、タコやエビだったり、貝などが入っており、確かに、韓国海鮮風にアレンジされているのはわかる。

「アレンジしてあるぶん、本場よりは、辛くないほうじゃない?」

 パク・ソユンが、食いつつ、酒をブイブイ飲みつつ言った。

「それでも、けっこう、辛いって……! あと、舌も、痺れるし……、ひぃ、ひぃ!」

 と、ドン・ヨンファが訴え、

「まあ……、本場の、火鍋レベルだな……、ふぅ、ふぅ」

 と、カン・ロウンも、辛さに耐えつつ、サングラスを曇らせて答えた。

「こいつのリクエストで、唐辛子も花椒もガッツリ入れて、本場に近い辛さにしたかんな」

 キム・テヤンが言うとおり、確かに、鍋に大量の“それら”が入っていた。

 また、

「まあ、俺も、これくらい辛いぐらいが好きかもな」

 と、キム・テヤンがつけ加えると、

「あっ……、珍しく、アンタと一致した、ぽよ」

「ああ、そうかよ」

「まあ、私には、すこし物足りない辛さかもしんないけど」

 と、パク・ソユンが、汗を滴らせつつ、表情を変えずに答えた。

 恐らく、現地の四川の辛いもの好きの猛者ですら、充分な辛さにもかかわらず。

「いや、おめえのは、レべチだっての」

 キム・テヤンと、

「まあ、君は、ハバネロソースだって飲むからね」

 と、ドン・ヨンファが言った。

 確かに、このパク・ソユンだが、体質なのか異能力なのか、ハバネロすらクソザコレベルのソースを、グラスで、焼酎でもキメるかのように飲んだことがあった。

 なお、デスソースだけならず、過去の事件においては、フッ酸やギンピギンピで淹れた茶を飲まされたことがあるという、どこか人間ばなれしたところがあるわけで、

「――って? お前、それ、別に食わなくていいもんだろが」

 と、キム・テヤンが、「おいおい」と反応した先、パク・ソユンが唐辛子を箸でつまみつつ、

 ――モグ、モグ――

 と、まるで、酒の肴のように食っていた。

 まあ、確かに、この火鍋に浮かぶ唐辛子や花椒というのは、食べる必要のない――、というか、むしろ、直接食べないほうがいい。

「うん。知ってるー」

 パク・ソユンは答えながらも、唐辛子を食うのをとめない。

「いや、知ってるーって……」

 キム・テヤンが、つっこんむも、言葉を失い、

「まあ、ソユンのことだから、何ともないんじゃないかい」

 と、ドン・ヨンファは、特に何とも思ってない様子で言った。

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