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妖狐、神楽坂文のコンサル譚10 【重慶幽鬼】  作者: 非常口どん八
第一章 ある問題視インフルエンサーのピンチ

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2/20

2 見とけよ!! 見とけよ!! 俺の鍋捌きを!!




          (2)




 数時間前のこと、


 ――グ、ォォーン――!!


 と、エンジン音が、夜の重慶の、四川の盆地の大きく開いた穴のような空へと響いた。

 立体感ある都市を走りぬけるのは、オレンジのランボルギーニ。

 運転席でハンドルを握るのは、金髪の青年で、ふんぞり返って助手席に座るは、相方の丸顔の男と、例の若者コンビだった。

 すなわち、


『俺たちの名は、デオとザオ。略してDZコンビ――、いわゆる、インフルエンサーってヤツだ』


 と、もしも、一人称で紹介が始まるなら、こうだろう。

 丸顔の、いかつい男がデオ。

 金髪男のほうがザオで、自称なのか他称なのか、DZコンビと呼ばれ、インフルエンサー活動をしているふたり組だった。

 ただ、インフルエンサーといっても、やっていることは、そんな高尚なことではない。

 ときに、いわゆる、迷惑系ギリギリのイタズラ動画、企画をやっていたのだ。

 例えば、停車中の高級車で運転手が電話をしている横で、しゃがんで隠れながらチョークで車にラクガキし、案の定、気づいて怒ってくる運転手から、ドタバタと逃げ回ったり。

 また、ある時は、仲良くデートをしているカップルを後ろからロックオンするや否や、いきなり、男のほうを、ひょい――! と、抱える。

「う、うわぁぁん!? 何を、するだッ――!? お前らァッ!?」 

 と、驚いて騒ぐ男を、ふたりして肩にのせて担ぐ。

 当然、

「アイヤァッー!? ちょっと!! 返しなさいよ!!」

 と、彼女は奪い返そうと追っかけてくるのを、

「「えっほ♪ えっほ♪ 返して、あっげないよぉ~♪」」

 などと、逃げ回ったり――

 また、ある時は、金ぴかの銅像に扮しながら、アイスクリームなど舐めながら近づいてきた人間に対し、いきなり動きだして、「わぁッ――!?」と、驚かせ、尻餅つかせる。

 手に持っていたアイスは、ポ、ロリ――と、落ちてしまう横で、

「「いぇ~い♪ ドッキリ、大成功~♪」」

 などと、ふざけてみせたり……

 ――などと、まあ、くだらないイタズラ企画だったりを、していたわけだった。

 そんな、“しょうもない”イタズラを面白がって視るフォロワーもいるものの、どちらかというと、多くからは顰蹙を買っていた。

 それで、とても、そんなインフルエンサー活動で稼いでいるのに見合わない高級車に乗っているわけだが……、これは、まあ、彼は富二代という、つまり、親が金持ちのボンボンだからだった。


 本題に戻る。

 ふたりは、車を停めていた。

 重慶の、夜景を見下ろせる場所で、ボーッとしていた。

「はぁ、ヒマだな」

 デオが、つまらなさそうな顔で言った。

「だよな。何か、面白いこと、ないかなぁ?」

 ザオが同調する。

 夜景を見ているのか、スマホを見ているのか、なんともしまりなく、ダラダラと時を過ごす。

 そんな折、ふと、SNSでは“幽鬼”に関する話題が流れてきた。

「は――? 幽鬼、だと……?」

 デオが、顔をしかめた。

 その横で、

「ああ……、アレだよ、アレ」

 と、ザオのほうが、先にピンときた。


 幽鬼――


 ここ最近、都市伝説やUFOのように、重慶で不気味に噂になっている存在だった。

 たとえば、重慶の路地裏。

 上には中層ビルの連絡通路の空中廊下が立体的に重なる、古いレンガ造りの建物が連なる通りにて、帰宅していたOLが、忽然として、神隠しのように消失してしまったケース――

 なお、このケースでは、ヒビ割れて壊れたスマホが落ちていたのだが、そのスマホがぶつかった跡が、空地廊下の裏側にあるという奇妙な点があった。

 また、ある時は、屋上のビアガーデンにて。

 数十人ほど、賑わっていたものの、気がついてみたときには、ビアガーデンのテーブルごと、これも忽然と、姿が消えてしまったり……

 また、夜の屋台で、チャーハンを作っていた若い兄ちゃんが、高火力で、

 ――シャッ、シャッ、シャッ――!!

 と、手際よく中華鍋をふるい、

「見とけよ!! 見とけよ!! 俺の鍋捌きを!!」

 と云わんばりに、確かに、いい腕でチャーハンを炒める!!

 パフォーマンスのように、

 ――サッ――!!

 と、チャーハンが高く舞い、フィニッシュかと思いきや、次の瞬間、


 ――ス、トン――


 と、チャーハンは、鍋には落ちてこなかった……

 そして、何とあろうことか――!?


 ――ヒュー…、


 と、中華鍋とともに、重慶の、ぼっかりと大きく開いた夜の空へと消えていってしまったのだ!!

「あッ――!? お、俺の中華鍋がァッ――!!」

 屋台の若者が、思わず声をあげる。

 チャーハン待ちの客や、パフォーマンスを見ていた野次馬たちが、

「お、“落ちて”ったぜ……!?」

「あ、ああ……!」

「え――?」

「嘘だろ……?」

「ああ、なんてこった!? 信じられねぇ!! この兄ちゃんの失敗じゃない、チャーハンが、中華鍋ごと、空に落ちちまったんだぜ――!!」

 と、騒然となった。

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