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妖狐、神楽坂文のコンサル譚10 【重慶幽鬼】  作者: 非常口どん八
第四章

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19/20

19 外から差し込む光からできた影が、ぬっ――、と



          ***



 廃屋の中は、がらんとしていた。

 ――カ、ツーン……、カツーン……

 ふたりの、進む足音が響く。

 また、

「……」

 と、チラッと……、建物の開口部を見た。

 解放間のある大きな開口部だが、ガラスがなくなっており、そのまま、すぐ崖下の渓流へとつながっていた。

「ガラスが、無くなっているの?」

 パク・ソユンが聞いて、

「まあ、廃墟だから、ガラスが無くなっていても不思議ではないからね」

 と、ドン・ヨンファが答えた。

 また、続けて、

「あそこから落ちれたら、大怪我するか、死んじゃうだろうね」

「……」

 と、パク・ソユンが、ドン・ヨンファの言葉にジトッとした目をする。

 間をおいて、

「ああ? ソユンなら、たぶん、大丈夫そうだけど」

 と、ドン・ヨンファが言った。

「はぁ、どゆこと?」

 パク・ソユンが、気に抜けた表情でつっこんだ。

 まあ、半分は冗談だろうが、異能力と体質のせいか、異常な耐久力をもつパク・ソユンであり、たぶん半分は冗談ではなかった。

 それはさておき、

「本当に、ここに、幽鬼か……、妖魔が、いるのかなぁ……?」

「さ、ぁ? あのタヌキのことだから、あんまし、アテにならないんじゃない」

 と、ふたりは緊張感が薄れながら、歩みを進めていく。

 このまま、何も起きないんじゃないかと思った、その時、


 ――ブ、ワッ――


「「――!?」」

 突然、風圧とともに、宙に浮く“感じ”がふたりを襲う!!

 否、“感じ”などでなく、

 ――ブォォン――!!

 と、実際に強烈な力で宙に浮かされ!! 斜め上の方向へ、外へと落とされんとする!!

「し、しまった!?」

 ドン・ヨンファが叫ぶ。

 その横では、すでに、

 ――ジャラッ――!!

 と、パク・ソユンがチェーンらしきものを何本か召還しており、それらの尖った尖端は、建物の床深くを貫通し、強固に固定される。

 チェーンと自分たちふたりを固定することにより、それ以上浮き上がるのを防いだ。

 さらに、ドン・ヨンファが遅ればせながら、

 ――シュ、バッ――!!

 と、ゴーヤのような“疑似植物”を召還する。

 ゴーヤらしき疑似植物はネットを形成しながら、縦横無尽に広がっていき、飛ばされるパク・ソユンとドン・ヨンファのふたりを、

 ――ゴ、ワン……!!

 と、受け止める。

 開口部から空へ、あるいは崖下へ落とされかけたのを、何とか防いだ。

 ゴーヤのネットに受け止められた状態で、

「これって、重力を操る力じゃ、ないわね……」

「ああ……、かもね……」

 パク・ソユンとドン・ヨンファは、互いに確認した。

 重力、もしくは反重力を操って宙に浮かせたというよりも、まるで、竜巻のような、巨大な力を持つ風で吹き飛ばされたような感じのほうが強かった。

 ――ス、タッ……

 と、ふたりは、ふたたび床に足をつけた。

 すると、


 ――カッ、ツ……、カッツ……


 と、石畳の足音が、それも数人ぶん重なって響いた。

 同時に、外から差し込む光からできた影が、ぬっ――、と現れる。

「――!?」

 ドン・ヨンファが、ビクッと反応し、

「ん……?」

 と、パク・ソユンが、眠そうな顔で反応した。

 影をつくったほうを、見てみる。

 そこにいたのは、ヒト型および異形の者たちだった。

 大きな、おそらく鉄製の芭蕉扇を持った、西遊記にでも出てきそうな、羅刹女みたいな妖艶な女。

 そのすこし後ろには、こちらも西遊記風の、鉄製の鎧をまとった、牛魔王みたいな妖魔。

 それから、黒豹の怪物と――

「あら? 不法侵入者かしら?」

 鉄芭蕉扇の女が言い、

「何だぁ!! お前らは、よぅ!!」

 と、黒豹がキレて見せ、

「シュー……」

 と、牛魔王のマスクからは、ダースベイダーのような呼吸音がした。

「うっ……!?」

 ビビるドン・ヨンファと、

「ぽよ……」

 などと、あいかわらず気の抜けた顔のパク・ソユンは、謎の三人組と言うか、三体と対峙した。

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