19 外から差し込む光からできた影が、ぬっ――、と
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廃屋の中は、がらんとしていた。
――カ、ツーン……、カツーン……
ふたりの、進む足音が響く。
また、
「……」
と、チラッと……、建物の開口部を見た。
解放間のある大きな開口部だが、ガラスがなくなっており、そのまま、すぐ崖下の渓流へとつながっていた。
「ガラスが、無くなっているの?」
パク・ソユンが聞いて、
「まあ、廃墟だから、ガラスが無くなっていても不思議ではないからね」
と、ドン・ヨンファが答えた。
また、続けて、
「あそこから落ちれたら、大怪我するか、死んじゃうだろうね」
「……」
と、パク・ソユンが、ドン・ヨンファの言葉にジトッとした目をする。
間をおいて、
「ああ? ソユンなら、たぶん、大丈夫そうだけど」
と、ドン・ヨンファが言った。
「はぁ、どゆこと?」
パク・ソユンが、気に抜けた表情でつっこんだ。
まあ、半分は冗談だろうが、異能力と体質のせいか、異常な耐久力をもつパク・ソユンであり、たぶん半分は冗談ではなかった。
それはさておき、
「本当に、ここに、幽鬼か……、妖魔が、いるのかなぁ……?」
「さ、ぁ? あのタヌキのことだから、あんまし、アテにならないんじゃない」
と、ふたりは緊張感が薄れながら、歩みを進めていく。
このまま、何も起きないんじゃないかと思った、その時、
――ブ、ワッ――
「「――!?」」
突然、風圧とともに、宙に浮く“感じ”がふたりを襲う!!
否、“感じ”などでなく、
――ブォォン――!!
と、実際に強烈な力で宙に浮かされ!! 斜め上の方向へ、外へと落とされんとする!!
「し、しまった!?」
ドン・ヨンファが叫ぶ。
その横では、すでに、
――ジャラッ――!!
と、パク・ソユンがチェーンらしきものを何本か召還しており、それらの尖った尖端は、建物の床深くを貫通し、強固に固定される。
チェーンと自分たちふたりを固定することにより、それ以上浮き上がるのを防いだ。
さらに、ドン・ヨンファが遅ればせながら、
――シュ、バッ――!!
と、ゴーヤのような“疑似植物”を召還する。
ゴーヤらしき疑似植物はネットを形成しながら、縦横無尽に広がっていき、飛ばされるパク・ソユンとドン・ヨンファのふたりを、
――ゴ、ワン……!!
と、受け止める。
開口部から空へ、あるいは崖下へ落とされかけたのを、何とか防いだ。
ゴーヤのネットに受け止められた状態で、
「これって、重力を操る力じゃ、ないわね……」
「ああ……、かもね……」
パク・ソユンとドン・ヨンファは、互いに確認した。
重力、もしくは反重力を操って宙に浮かせたというよりも、まるで、竜巻のような、巨大な力を持つ風で吹き飛ばされたような感じのほうが強かった。
――ス、タッ……
と、ふたりは、ふたたび床に足をつけた。
すると、
――カッ、ツ……、カッツ……
と、石畳の足音が、それも数人ぶん重なって響いた。
同時に、外から差し込む光からできた影が、ぬっ――、と現れる。
「――!?」
ドン・ヨンファが、ビクッと反応し、
「ん……?」
と、パク・ソユンが、眠そうな顔で反応した。
影をつくったほうを、見てみる。
そこにいたのは、ヒト型および異形の者たちだった。
大きな、おそらく鉄製の芭蕉扇を持った、西遊記にでも出てきそうな、羅刹女みたいな妖艶な女。
そのすこし後ろには、こちらも西遊記風の、鉄製の鎧をまとった、牛魔王みたいな妖魔。
それから、黒豹の怪物と――
「あら? 不法侵入者かしら?」
鉄芭蕉扇の女が言い、
「何だぁ!! お前らは、よぅ!!」
と、黒豹がキレて見せ、
「シュー……」
と、牛魔王のマスクからは、ダースベイダーのような呼吸音がした。
「うっ……!?」
ビビるドン・ヨンファと、
「ぽよ……」
などと、あいかわらず気の抜けた顔のパク・ソユンは、謎の三人組と言うか、三体と対峙した。




