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妖狐、神楽坂文のコンサル譚10 【重慶幽鬼】  作者: 非常口どん八
第四章

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20 ガリウムの飛沫・飛礫




          (3)

 


 

 まるでボスのステージのような雰囲気の、がらんとした廃屋のとした間にて、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりは、おそらく妖魔と思しき三人と対峙していた。

「不法侵入――? 警察でも、呼ぼうかしら?」

 鉄芭蕉扇の女が、ふたりに聞く。

 横から、

「何もんなんだ!! てめぇ、らぁ!!」

 と、黒豹の妖魔が、うるさくキレてみせる。

「い、いや……、その、僕らは、」

 ドン・ヨンファが、「僕らは怪しい者ではないですよ」とお決まりのセリフを言おうとした、その傍から、

「ぽよ」

 と、パク・ソユンが言った。

「「「ぽよ――!?」」」

 妖魔たち三人は、驚愕した。


 …………、…………


 沈黙が、漂う。

「う、わ……」

 ドン・ヨンファが、「また、こいつは……」と、苦虫を潰したような顔をする。

 対する相手のほうも、

「……」

 と、鉄芭蕉扇の女も、ポカン……としており、また、

「何だ、『ぽよ』って!! ちゃんと答えろよ”ぉ!! ああ”!!」

 と、黒豹がキレる。

 なお、

「シュー……」

 と、牛魔王のほうは、マスクの下の顔が見えないから分からない。

「まあ、いいわ……」

 鉄芭蕉の女が、「やれやれ」と呆れた表情を見せる。

 次の瞬間、


「――排除するわ。その、ゴーヤごと」


 と、切り変えたように表情を変えるや、

 ――ブ、ォォッ……!!

 と、先ほどより、大きく振りかぶろうとした!!

 ふたたび、強烈な、竜巻のような旋風を見まわんとする!! まさに、その刹那――!!

 すでに動いていたパク・ソユンが、

「……」

 と、ジッ――と、妖魔たちのほうを見ながら構え、


 ――パッ、シャァッ――!!


 と、懐から出した手のひらから、何か液体の飛沫を放つ!!

 金属色の、大小の液体の飛沫が、妖魔たちに襲いかかる!!

「なッ――!?」

「う、うぉぉ”ッ!?」

 女と黒豹が、驚きの声をあげる。

 同時に、彼らは防御姿勢と回避動作をとる。

 女は鉄芭蕉扇を盾にし、牛魔王風の妖魔は、半身引いて受け身の態勢をとっていた。

 だが、

 ――ジュワ、ワァァ……

 と、金属色の、“謎の飛沫”というか飛礫は、彼らの鉄器もしくは合金製の武具へと浸透していく。

 次の瞬間、

 ――ピ、キッ……

 と、それらに亀裂が入り、

 ――ボロ、ボロ……

 と、もろくなって崩れ、“形”を失っていた。

 信じがたい光景に、

「えっ……? な、何が起きてる、の……?」

 と、ドン・ヨンファも、すぐには理解が及ばなかったが、

「も、もしかして……、この、金属を、ボロボロにする液体金属、って――」

 と、“あるもの”が思い浮かんだ。

「ぽよ。その、もしかして、よ――」

 パク・ソユンが、あわせるようにして言うと、


「ガリウム、かい……?」


 と、ドン・ヨンファが、確認するように聞いた。

「ぽよ。まあ、さしずめ……、ガリウムの飛沫、飛礫(つぶて)というべきかしら?」

 と、パク・ソユンが、そのとおりだと答えた。

 ガリウムの飛沫・飛礫――

 やや温かい常温で液体になる金属のガリウムであるが、動画やショート動画などで、広く知られるようになったかもしれない。

 液体状態で他の金属と触れると、まるで浸透するようにして合金となってしまい、もとの金属をボロボロにしてしまうという、恐るべき力を持っている。

 なので、航空機で持ち込みが禁止されているなどと、よく紹介される。

 そんなガリウムを、パク・ソユンは手のひらに召還し、それを豆まきのように撒くという異能力を使ったのだ。

 それによって、女の持つ鉄芭蕉扇と、牛魔王男のアーマーが、ボロボロになってしまった。

「な、何で、ガリウムなんか召還できてんの? どうせ、『ガリウムを航空機や新幹線にぶちまけたら、どうなる――?』みたいな動画でも視たんでしょ?」

「はぁ、」

 などと、ドン・ヨンファとパク・ソユンが、話していると、

「ちょっと!! アタイの鉄芭蕉扇!!」

「うぉぉん――!! お、女!! なんて破廉恥なことを!!」

 と、ガリウムの飛礫の被害を受けた当人たちが、文句を言ってきた。

 その横から、

「てぇ”めぇッ――!!」

 と、黒豹の化け物が、ついにキレてしまい、

 ――シュ、タッ――!!

 と、爆発的に急加速し、突進して襲いかかってくる!!

「ひッ――!? ひぃぃッ!!」

 案の定、ドン・ヨンファがビビる。

 すると、

「シャァァ”ッ!!」

 と、黒豹は、その牙、爪の刃を!! パク・ソユンに向けて飛びかかる!!

 だが、

 ――ザ、ザッ!!

 と、パク・ソユンは、黒豹の飛びかかる動きに合わせるようにして、背を床にして倒れるなり、

「ふん、ぬッ――!!」

 と、巴投げを、黒豹相手にキメて見せる。

「なッ――!? うぉぉ”ーんッ――!!」

 黒豹は叫びながら、自身の勢いを余らせながら、

 ――ズザァァッ!! 

 と、大きく前方へと投げ出され、

 ――ゴロン、ゴロンッ――!!

 と、勢いを殺しきれずに回転しながら床を滑り、ドゴッ――!! と、壁へと激突してしまう!!

「ぐ、ががッ!!」

 黒豹が、声をあげる。

 だが、衝突のダメージにも関わらず、ブルブルと身体を震わせながらも、

「て、てっめ、」

 と、立ち上がろうとしていた。

 そこへ、

「ちょっと!! ボサッとしてないで、何かしなさいよ!! ヨンファ!!」

「あ、ああっ、」

 と、確かに、ボーッとして眺めていたドン・ヨンファに、パク・ソユンが促した。

 そして、

 ――ゴ、バァッ――!!

 と、疑似植物の、ゴーヤのネットを黒豹に向かって放ち、

「うぉぉんッ!! く、くっそ!! な、何だこりゃ!?」

 と、黒豹を絡めて無力化させる。

 そんな光景に、

「……」

「……」

 と、鉄芭蕉扇の女と牛魔王風の男も、声を失っていた。

 パク・ソユンが、妖魔たちに言う。

「は、ぁ……、これで、観念したでしょ?」

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