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妖狐、神楽坂文のコンサル譚10 【重慶幽鬼】  作者: 非常口どん八
第四章

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18/19

18 すーる、ぽよー




          (2)




 場面は変わって、重慶の中心街とは、すこし外れた場所にて。

 渓谷のようになりながら、楼閣の廃墟のような、大きな建物が佇んでいた。

 どこか、肝試しや心霊スポットのような雰囲気もある。

 ここに、パク・ソユンとドン・ヨンファのふたりは、足を踏み入れていき、建物へと近づいていく。

「ぶ、不気味な感じが、するね……」

 と、すこしビビるドン・ヨンファに対し、

「ぽよ」

 と、何も感じてない様子で、パク・ソユンが答える。

「……」

 ドン・ヨンファが、チーン……としながら、

「いや、『ぽよ』じゃ、なくてさぁ……」

 と、つっこみたくなるも、どうしようもなく呆れる。

 それはさておき、

「ていうか、何で? 僕たちが、妖魔を調べなきゃいけないんだい?」

「ほんと、何なの? あのタヌキ」

 と、ふたりは、自分たちに指示した妖狐の神楽坂文の愚痴を言う。

「戦わなきゃな可能性もあるし、そういうのこそ、タヌ、キツネさんが、するべきじゃないか」

「そうよ。てか、アンタ? 逆に訂正してない? タヌキから、キツネに」

「へ――? そう、だったけ……? いや、どっちか、もう、分かんなくなってきたよ」

 などと、ふたりは話す。

 まあ、妖狐だから、“キツネ”しかないのだが。

「まあ、どうでもいいじゃん。あいつが、キツネだろうが、タヌキだろうが。てか、私たちに、こんなことさせるから、さ」

「まあ、そうだね」

 と、ここまで喋って、入り口まできて。

「――ってことで、入っていくわよ」

 パク・ソユンが言うと、

「入っていくは、いいけど……、何か? 対策は、あるのかい?」

 と、ドン・ヨンファが、いったんストップをかけた。

「ん? 対策――?」 

「だって、空に、落とされちゃうかもしれないんだぜ? 何らか、対策したほうがいいんじゃないか? 使えそうな異能力か、タヌキさんの妖具とかで」

「ああ……?」

 パク・ソユンは、天を仰気ながら、

「“ある”わよ」

 と、答えた。

 同時に、

「てか? アンタも、使いなさいよ。何か、それっぽい“疑似植物”でも、召喚してさ?」

「わ、わかったよ、」

 と、ドン・ヨンファにも、自分まかせにせず、何か異能力を使うように念を押した。

 このドン・ヨンファだが、いちおうは事業家という肩書があるものの、わりと怠けもの気質である。

 なので、こうしておかないと、何もしない可能性があった。

「まあ、天井のある、建物の中だから……、もし、幽鬼がいたとしても……、さすがに、すぐに、空に落とされる可能性は、無いとは思うけどな」

「そう、なんだろうけど、さ? ほかの異能力も、使ってくるかもしれないじゃん? いざ、何か起きた時に、さっと、適当なものを使えるようにしときなさいよ」

「まあ、分かったよ」

 ドン・ヨンファは、しぶしぶうなづきながら、

「しかし、空に落とされかけた時に、かぁ……?」

「まあ、逆に考えて……、ふつうに、高いとこから落ちる時とか、想像して考えてみる、ぽよ。クライミング中の崖とか、25メートルのビルとか」

「何? その、リアルなの? また、どうせ、そういう墜落系のグロ動画とかでしょ? ソユンの言うのは?」

「ぽよ」

「いや、『ぽよ』じゃ、なくて、」

 と、つっこみたくなりながらも、

「まあ、そうだなぁ……? 安全帯のような、ものか……? ただ、それだと……、何かに引っかけたとしても、空に落とす力っていうのが、重力よりも強力な力だとすると……、引っかけたものごと、落ちちゃう可能性もあるしなぁ……」

「ぽよ」

「あとは、安全ネット的なもの、かい……?」

「その、安全ネット的なものってのを具現化するのに……、何か、具体的な植物は、思い浮かぶぽよ?」

「う~ん……? 何となくは、浮かぶんだけど……」

 と、考えようとしたところ、

「まあ、いいぽよ。とりま、中に入ってから考える、ぽよ」

 と、パク・ソユンが言った。

「とりまって、なあ……」

 ドン・ヨンファが、「おいおい」と言いながらも、

「まあ、でも、そうだねぇ……? 考えてからやるより、実際に、やってみて考えたほうが、いい場合もあるしな」

「ぽよ。アンタも、実業家やってるから、分かるでしょ」

「いや、それと、これとはねぇ……」

 そうして、ふたりは最低限のピンチをイメージし、廃屋のほうへ近づいていく。

 西遊記の、妖怪の魔王の館のような雰囲気をした、大きな入り口を前にして、

「おじゃま、しますよ……」

 ドン・ヨンファが、おそるおそると、いちおう断りの声をかけながら、足を踏み入れる。

「すーる、ぽよー」

 パク・ソユンが、それに続いた。

 ドン・ヨンファが、

「……」

 と、引きつった顔で、パク・ソユンのほうを見て思う。

(ほんと、何なの? こいつ……?)

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