14 それなら、江ノ電じゃなくない?
そのように話しながら、
「それで……、これから、どうするか?」
と、キム・テヤンと、
「どうする、ぽよ?」
と、パク・ソユンが、肝心の問いを投げかけた。
「四人で、“こいつら”を探すのも、ちょっと手持ちぶさたじゃねえかな? まあ、手分けすりゃ、いいかもしれないが」
キム・テヤンが、補足して言うと、
「うむ、そうだな……?」
と、カン・ロウンは、少し考えて、
「タヌ――、キツネさんに、ちょっと聞いてみようか」
と、妖狐の神楽坂文に、電話をすることにした。
電話をかけると、意外とすんなりつながった。
そのまま、テレビ電話にすると、向こうは人だかりの鎌倉、江ノ電の駅が映った。
妖狐は、江ノ電に乗ろうとしていたところで、
『ちっ、』
と、舌打ちしつつ、露骨に嫌そうな顔をしてきた。
「「おいおい、めちゃくちゃ嫌そうな顔するなぁ」」
キム・テヤンとドン・ヨンファが、声を合わせる。
「ぽよ」
と、パク・ソユンの、『ぽよ』も添えて。
『ふむ。嫌に、決まっておるだろ。人様が江ノ電に乗ろうとしてるというのに、何か? 嫌がらせで、このタイミングを狙ったのだろ? ゴミ芥ども』
「いえ、たまたま、ですよ」
「てか? アンタも、それでも出てくれるのね」
と、カン・ロウンとパク・ソユンが言うと、
『それで? 要件は、何だ? ゴミ芥ども』
と、妖狐が、改めて聞いた。
「ええ、見てのとおり、重慶の、現地に着きましたので……、これから調べようと思うのですが。神楽坂さんに、相談をしたくて」
カン・ロウンが答えると、
「てか? お前の妖力一発で、その、デオとかザオとかいうガキどもを、探し当てれねぇのかよ?」
と、横から、キム・テヤンが逆に聞いてきた。
『何だ? 超能力捜査官みたいなのを、求めておるのか? それは、無理だぞ。いま、限界ギリギリに消耗した妖力を、パワースポットで回復させていてな』
「ああ”? パワースポットだと?」
「それが、鎌倉にあるのかい?」
と、キム・テヤンとドン・ヨンファ。
『うん。日本だと、だいたい、寺とか神社とか。とくに、ギャンブル運を上げたくてな、銭洗弁財天に行こうと思ってな』
「は? それなら、江ノ電じゃなくない?」
と、パク・ソユンが、言うと、
『あ? 弁天窟でも、可』
「ああ、それなら」
と、ドン・ヨンファが納得した。
「けっ、まったく、何がパワースポットだ。チャージス〇ットみてぇに、持って来れねぇのかよ」
キム・テヤンが舌打ちし、
『フハハ』
と、妖狐は嗤う。
「てか、わざわざ、鎌倉に戻るなってんだよ、まったく」
『まあ、妖力の充電ができたら、気が向いたら来てやろう。とりあえずは、“葛葉”を使って、適当に調べておくのだ』
と、妖狐が答えると、
「分かりました。あとは、その、幽鬼ってのを、どう探るか……? まあ、それも、デオとザオに会ってからが、良いんでしょうが」
と、カン・ロウンが、まだ質問しようとする。
それを見て、
『ふむ』
と、妖狐は、
――ブ、ォンッ……
と、カン・ロウンたちのほうへ、“ナニカ”を召還してみせた。
「「「――!?」」」
パク・ソユン以外の三人が、反応する。
それは、何か、重慶市内のマップのようなホログラフィであり、
『“そいつ”は、妖気、あるいは瘴気の、マッピングでな――』
「「瘴気、ですか?」とな――?」
カン・ロウンとキム・テヤンが声をそろえて聞く。
『ああ……。たぶん、相手は、ワンチャン、人外の可能性もあるからな』
「まあ、幽鬼というと、人外だろうな」
「それは、このマップを見れば、分かるのかい?」
と、ドン・ヨンファが聞き、
『ああ、だいたい。あとは、これと、人外の情報屋をツテに調べればいいのでないか? 知らんけど』
「何だよ、知らんけどって」
と、つっこんだ。
とりあえず、この流れで、
「じゃあ、デオとザオに関しては、私とテヤンがやる。妖魔や幽鬼に関して調べるのは、ヨンファと、ソユンでいいか?」
と、カン・ロウンが提案したところ、
「へ――? 僕ら、が?」
「は? 何で、私たちが」
と、ドン・ヨンファとパク・ソユンが、いちどゴネると、
「いや、俺たちの異能力で、どうすんだってんだ? そういうのこそ、てめぇらの役だろうが」
と、キム・テヤンがつっこんだ。
確かに、そうなのだ。
カン・ロウンの異能力は、踊ることで周囲の敵や人間を巻き込むという、その昔、マイケルジャクソンのテレビゲームであったような異能力であり、キム・テヤンは、情報部時代に培った格闘能力に打撃系の異能力が加わったていどの異能力ぐらいしか使えない。
より変化系、具現化系で、防御や攻撃にも自在に使える、魔法にちかい異能力はというと、このドン・ヨンファとパク・ソユンの十八番だった。
なので、キム・テヤンがつっこむのも無理はなかった。
本題に戻って、
「まあ、いいけど」
と、パク・ソユンが、しぶしぶ承諾し、
「え? いいのかい? ソユン」
「いや、確かに、このふたりの異能力じゃないでしょ。タヌキが、何か妖具を貸してあげるなら別だけど」
「ま、まあ、」
と、ドン・ヨンファにも「うん」と言わせる。
そのようにしていると、
『おい、そろそろいいか? ゴミ芥ども。電車が、出るじゃないか、ゴミ芥ども』
と、妖狐が言ってきた。
「ちっ、二回もゴミ呼ばわりしやがって」
「何だよ、人様に調べさせておいて」
と、キム・テヤンとドン・ヨンファが、顔をしかめ
「はぁ、いいけど。お土産、買ってきてよね」
と、パク・ソユンが言うと、
『うん。やだ、ぽよ』
と、妖狐が、まさかの『ぽよ』と言った。
「は? 何? 『ぽよ』って? ふざけてるの」
パク・ソユンが、不機嫌そうにいうと、
「「『は? おまいう――?』」」
と、妖狐と、人間ふたりがつっこんだ。




